ビジネスにおいてどんな業界でも、今まで気づかなかったインサイトを発見し、新たな価値を創造することは成長のカギとなるものです。そういった取り組み・意思決定をアシストするために、特に昨今では「データドリブンな組織経営」に注目が集まっています。

そこで大いに役立つITツールが「BI(Business Intelligence)ツール」です。

この記事では、BIツールの一種である「Qlik Sense」という製品にフォーカスし、その特徴・メリット・日本国内での導入事例・価格面などを解説していきます。

「Qlik Sense」とは?

「Qlik Sense」とは、BIツールの一種です。

アメリカに本拠地を置く「Qlik社」が提供する製品で、同社は特に米国内において「データ分析領域でのリーディングカンパニー」として知られています。

詳しくは後述しますが、「連想技術」という独自のテクノロジーを搭載している点が最大の強みです。これは、取り込んだあらゆるデータ同士の関連付けを自動的に行なってくれて、ビジネス上の新たな課題や答えを見つけてくれるというもので、他のBIツールではできないことを可能にする技術です。

このような強みから、「ボルボ」「ペイパル」「エアバス」といった、名だたるグローバル企業で導入されています。

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引用:Qlik Sense

「Qlik Sense」の特長・メリット

それでは、「Qlik Sense」の特徴やメリットを具体的に見ていきましょう。

自分でできる

「Qlik Sense」は、マーケター、アナリストをはじめとするエンドユーザーが「自分でできる」ことを想定して設計されている製品です。

そのため、プログラミングやデータベース操作に関する知識を持たない一般のビジネスパーソンでも、自分でデータを取り込んで、加工・分析を行うことができます

また、組織内において「一人でデータ分析をする」「複数名で分担してデータ分析をする」いずれのケースにも柔軟に対応でき、どのような規模の組織でも導入しやすいBIツールだと言えます。

マウス操作だけでできる

前項で、データベース操作に関する複雑な知識を持たない人でも「自分でできる」ことを述べました。

「Qlik Sense」は、基本的にマウス操作によるドラッグ&ドロップだけでデータの取り込み・加工・分析ができるため、属人的なスキルを問わず、エンドユーザーでも容易に操作が可能になり、自分で使いこなせるようになるのです。

米特許取得「連想技術」搭載で、より多くの示唆を得られる

「Qlik Sense」は「BI(Business Intelligence)ツール」です。

単にデータを可視化するビジュアライゼーションツールとは異なり、ビジネスの意思決定を行うためのデータ探索を強力にサポートしてくれます。

まず、自社で保有しているさまざまなデータソースの取り込みをします。データを取り込んだ後については、アメリカで特許を取得した独自の「連想技術」の働きによって、互いに関連性のないデータソース間からでも「Qlik Sense」が隠れたインサイトを発見し、ビジネス上の気付きを示唆してくれます

一方、一般的なBI製品は、関連しているデータ以外は参照できません。

つまり、今までは見えてこなかった、あるいは、他のBIツールを使っていても得られなかった気づき・インサイトを得られるようになり、ユーザーが確認できるデータや情報量が他のBIツールと比べて多いことが最大のメリットです。

「Qlick Sense」の導入でビジネスにどんな効果を期待できるか?

プレゼンテーションの場が変わる

「Qlik Sense」はマーケターやアナリストなど、エンドユーザーの手元でデータ集計・分析・加工ができ、ビジネス上の意思決定を後押ししてくれるツールだということは、前章まででお伝えしてきました。

「Qlik Sense」で実現できることは、それだけに留まりません。プレゼンテーションそのものも自動で行ってくれるのです。

それは「ストーリーテリング機能」というもので、分析結果や内容を例えば「時系列」など、わかりやすいストーリーにして、組織内へ公開・共有でき、社内会議などに活用できます。

データ分析を行ったプロセスを会議の場でそのまま再現して同じ情報を共有しながら、参加者からの疑問や問いにその場で答える、といった活用法が想定できます。

プレゼンターから一方的に報告書を読み上げるのではなく、データ分析を行ったプロセスそのものに対して組織内で理解を深めながら、ビジネスの意思決定をすることにつながります。

都度の報告書を作成する必要もなくなり、プレゼンテーションの質も格段に高まります。

AIがビジネスの意思決定を後押ししてくれる

「Qlik Sense」には「洞察」という機能もあります。

これは、ユーザーが気になるデータをリクエストすると、AIがデータを解析し、最適なチャートを作成・表示してくれる、というものです。関連性の高くないデータや、利用しないチャートはQlik Senseに学習させることもできます。

データから自社ビジネスに即したさまざまな気づき・示唆を与えてくれ、データ活用の強力なパートナーへと成長してくれます。これにより組織内のデータリテラシーを強化し、意思決定のプロセス変革に寄与します。

今まで気づかなかった「隠れたデータ」までも示唆してくれる

前項で、「Qlik Sense」はAIを搭載していることに触れました。

AIは2つ搭載されており、*「連想技術」「拡張機能」*というものです。これら2つのAIが、人の手では見落とす可能性のあるデータの関連性を教えてくれます。

つまり、AIの力によって、今まで気づかなかった隠れたデータを次のアクションにつなげることができ、ビジネスの打ち手が変わっていく、ということです。

「Qlik Sense」日本国内での導入事例

それでは、実際に「Qlik Sense」をビジネスの現場に導入している日本国内の事例をいくつか見ていきましょう。

データ理解・洞察を深めるための道具として全社規模で展開「HONDA」

自動車メーカーのHONDAでは「Qlik Sense」を導入しています。今、自動車業界とはEVやコネクテッドカーの開発など、100年に1度の大変革の節目を迎えています。そんな中HONDAでは、自動車メーカーとして新たな価値を生み出すために、データ活用に課題を感じていました。

そこで「Qlik Sense」を、データの理解・洞察を深めるための道具として全社規模で展開。

資料作成などの負荷軽減だけでなく、分析のPDCAサイクルが高速になりました。また、全社的なデータ活用リテラシーを高めていくための環境づくりに注力しています。

Excelでの分析業務工数を1/10に削減「共立女子大」

学校法人「共立学園」でも「Qlik Sense」を導入しています。

以前から大学内の様々なデータは蓄積されていたものの、Excelによる作業で効率的な分析に課題を抱えていました。さらに、学内の意思決定や、IR(投資家向け)活動を積極的に行っていくために最適な分析・可視化ツールを求めていました。

そこで、「Qlik Sense」を採用。誰もが直感的かつ汎用的に利用できる、現場担当者にとって使い勝手の良いBIツールであること、そして、運用コスト面も決め手となり採用に至りました。

その結果、Excelでの分析業務工数を1/10に削減でき、分析作業の効率化に大きく貢献。全員が最新の同じデータを見る環境が整いました。さらに、エビデンスに基づいた意思決定が可能になり、改善活動のPDCAサイクルが加速することにつながりました。

機械の稼働データを可視化、業務効率が劇的に改善「村田機械株式会社」

繊維機械などを手掛ける機械メーカーである「村田機械株式会社」でも「Qlik Sense」を導入しました。

同社では、繊維機械から稼働データを収集し、機械納入先の顧客サービス向上や製品改善に積極的に取り組んでいます。しかし従来は、Excelでの参照や分析に時間がかかり、メンテナンスも属人化。言語が異なる海外拠点では、ExcelのVBAがうまく動かず、ファイル共有でのデータ活用が困難に。

保守担当スタッフは機械の不具合連絡を受けてから対応を開始するため、事前の対策立案が困難だという課題も抱えていました。

そこで対策として、「Qlik Sense」を導入。「Qlik Sense」で機械の操業データを可視化し、生産効率を下げている要因をいち早く特定・可視化し、製品改善のPDCAサイクルを構築しました。また、「Qlik Sense」は多言語対応のため、国内外問わずデータが活用できる環境が整備できました。

その結果、データに基づいた迅速な納入先サポートで、機械の高稼働率を維持し、保守サービス品質が向上。高度なITスキルなしにデータを分析し、データを活用する文化が拡大し、グローバルでの営業戦略や製品改善のPDCAサイクルも加速しました。

事例参考:アシスト

「Qlik Sense」の導入価格は?

それでは、「Qlik Sense」を利用するためには、実際にどれぐらいのコストがかかるものなのでしょうか?

「Qlik Sense」には、2つの提供形態があります。1つは、自社サーバーにソフトウェアをインストールして運用する「オンプレミス型」、そしてもう1つがQlik社のサーバーを利用する「クラウド型」です。

Qlik社のWebサイトで価格条件を参照すると、「オンプレミス型=要問合せ」、「クラウド型=月30USD〜」となっています。

クラウド型の「月30USD〜」というのは、1ユーザーあたりの利用価格です。ログインして操作するユーザー数が増えれば、その人数分だけ月額必要が掛かります。

参考:Qlik 価格条件

多言語対応により日本国内のビジネス現場でも、海外拠点でも活用可能

この記事では、「Qlik Sense」の製品特徴や、日本国内での導入事例を見てきました。

もともとアメリカの会社の製品ですが、多言語対応しており、日本の企業でも現場のメンバーに無理を強いずに導入できます。それに加えて、海外拠点でも同じデータ分析画面を共有できるメリットを持っていることが分かります。

また、2つのAIを搭載しており、今まででは見つけられなかったビジネス上のヒントを示唆してくれることも魅力だと言えるでしょう。

これから組織内でのデータ活用のためにBIツール導入を検討している方は、ぜひ「Qlik Sense」もひとつの選択肢として検討してみてください。

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