PDCAを回して改善をすすめる」

よく言われるフレーズですが、PDCAとは何でしょうか。社会人になると必ず言われるこのフレーズですが、ちゃんと理解して実行できている人は意外と少ないようです。回せている気になっているだけだったり、PDCAの意味を誤解していたりするケースがほとんどです。

今回は実際にPDCAとは何なのか。そしてよく有りがちなミスまで解説していきます。

目次

  1. PDCAとは
  2. PDCAの回し方
  3. PDCAをを上手く回す4つのポイント
  4. PDCAが上手く回らないケース
  5. ISOにも採用されているPDCA
  6. PDCAと一緒に語られるスパイラルアップ

PDCAとは

PDCAとは「Plan(計画)」「Do(実行)」「Check(評価)」「Action(改善)」を サイクルで実施していくことで品質を改善、向上させていくためのマネジメント手法です。

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PDCAを実行するケースの例を挙げます。

例えば、ある会社で市場に新製品を投入することが決定しました。どんなターゲットに向けて、どのような製品を作るか「Plan」を決め、実際に市場に投入します(「Do」)。そこで得られた実績を解析、分析(「Check」)し、そこから得た情報をもとに改善策を考え(「Action」)、それをもとに再度、計画し直す(「Plan」)というのが一般的な PDCA サイクルの流れとなります。

この例から察する方もいるかと思いますが、 PDCA サイクルで陥りやすい失敗は、主に2つのパターンが挙げられます。

1つは「Plan」に縛られて、その後の行動が硬直的になりやすい点にあります。具体的に言えば、「Plan」したことは最後まで実行しなければならない、と誤解するケースが多いということです。

もう1つは、 PDCAを実行する際に課題となるのが、ほかと比較して「Plan」が網羅する範囲が大き過ぎるという部分が挙げられます。例を挙げても「Plan」には“現状を知る”“問題点を浮き彫りにする”“調査し、分析する”などが含まれています。

これらを要約すれば、「事実を調べ」「どうすれば良いか考える」となりますが、こうした大きな2つの工程までが含まれる「Plan」は、当然ながら確定するまでに大変な時間を要し、なかなか「Do」に進まないということが考えられます。

PDCAの成り立ち

PDCAは元々、品質管理の父とも呼ばれる「ウィリアム・エドワーズ・デミング博士」が、生産管理や品質管理の方法として1950年代に提唱したものです。デミング博士が共同研究を行っていた「ウォルター・アンドリュー・シューハート博士」の考え方を元となって展開されています。デミング博士は、戦後間もな1951年に日本での国勢調査のために来日。その際、戦後復興を進めるために日本の科学者から招聘された博士は、「品質の高い製品を作ることで、生産性とシェアを向上することが出来る」と主張し、その技法と考え方を広めました。その結果、日本の製品が世界を席巻することに繋がっていきました。

後に、デミング博士はPDCAのCheckをStudyに置き換え、PDSAと称しています。これは入念に評価するというニュアンスがあるといいます。

大手企業でも採用されているPDCA

PDCAの万能なところは、企業の規模感や職種に関係なく改善を進めることが出来る点です。また、プロジェクトの規模感も関係なく使用することが出来ます。
例えば、よく就活生に求められることの1つとして「PDCAを1人で回せるかどうか」というものが挙げられます。なぜこのようなことが求められるかというと、PDCAは前述したとおり企業の規模感、職種、プロジェクトの規模感関係なく使用されています。それだけ使用されているということは、基本スキルと言い換えても問題ないほど一般常識化しているともいえます。

DoとActionの違い

よくPDCAで混乱してしまうのが、DoとActionの存在のようです。どちらも日本語にすると「行う」とか「やる」と略されます。DoはPlanで決めたことを行うことなので、その文字通り「行う」と考えて問題ありません。Actionは、「行う」とは少し違い、Checkで評価されたものに対して、次に取るべき行動の方針を決めると考えると分かりやすいです。

PDCAの回し方

では、実際にPDCAの回し方を見ていきましょう。

Plan(計画):現状の数値や理想の数値から計画を作成

Planは、理想とする目標を立て、現時点とのギャップを埋めるために何をすべきかを仮説立てし計画に落とし込むことです。

Webサイトへの集客を現在の10倍に増やす」というような目標を立て、現時点とのギャップ(差異)を出すことで、そのギャップを埋めるための施策を仮説ベースで出し計画立てます。10倍に増やすためには、今と同じことをやっていては出来ないので、例えば検索順位で上位に表示されるようにしなければいけないでしょうし、広告を検討する必要もあるかもしれません。

他にも、1ヶ月で5kg痩せるという目標を立ててPDCAを回すことも出来ます。1ヶ月で5kg痩せるためには、お菓子は1ヶ月の間食べないだったり、帰り道は歩いて帰る、などのプランニングが考えられます。

Do(実行):計画に基づいて実行

Doは、Planで立てられた計画から実際に実行するフェーズです。
実際に、Planで立てた計画に基づいて、ひたすらにそれを「実行」します。

Check(評価):実行したものが計画通り進んでいるかを評価

Checkは、Doで行った施策や行動が達成できているのか、計画通りに進んでいるのかを評価します。計画どおり痩せていないのはなぜなのか。計画になかった飲み会の参加が余計だったのか、朝ごはんの量が多かったのか。このまま行くと3kgしか痩せられないということがわかれば、それは何が原因なのかを調査します。

このCheckをStudyに変えて、PDSAとする場合もあります。

Action(対策):計画通り進んでいない部分を調査して、次の目標を決める

Actionは、計画通りに進んでいない部分を調査・見直しを行い、今後の対策方針を決めます。
引き続き、5kg痩せる目標でいくのか、4kgに変えるのかなどの方針を決めていきます。そして、そのActionで改善修正された目標にもとづいて、Planで具体的な計画を決めていきます。

ActionをActとするケースもありますが、動詞か名詞の違いだけで意味に違いはありません。

PDCAを上手く回す4つのポイント

1.計画(Plan)は仮説を持って立てる

必ず計画は仮説を持って立てるようにしましょう。PDCAを回すときは現状に満足しておらず、目標に向けた改善を行うケースが多いです。何が勘所なのか。今の課題は何があるのか。何をすればその課題は解決できそうなのか、仮説を立てます。仮説を立てることで、後にその仮説を検証する段階で仮説の精度を高めていくことが可能です。逆に仮説を立てないで進めてしまうと、思いつきで動いてしまい再現性が無くなってしまいます。

2.評価(Check)はなるべく定量的に数値で行う

評価はなるべく定量的に数値で行いましょう。定量的というのは、数値で表すことのできるもののことです。「定量的」の反対の言葉が「定性的」です。定性的というのは、数値で表すことができないもののことです。例えば

「今月、本を20冊読む」

これは定量的な目標で、

「今月、本をたくさん読む」

これは定性的な目標です。

結果的に本を15冊読んだとして、定量的な目標があればなぜ20冊に届かなかったのか、時間の使い方を工夫すれば読めるようになるのか。など振り返ることが出来ます。しかし定性的な目標だと、たくさんの定義が曖昧で振り返りにくい面があります。PDCAは必ず目標に対しての振り返りを行い改善を進めるです。そのためにも定量的な目標を持ち、評価もそれに基づいて行わなければ意味がありません。

3.ダメだったときはなぜなのか仮説を立てる(Check)

最初にPlanを立てたとき通りにPDCAがキレイに回ることはほとんどありません。PDCAで重要なことは、ダメだったときに「なぜダメだったのか」「こうすれば良かったのではないか」の仮説を立てることです。ここでしっかりと仮説を立てておくことで、次のActionで、解決策を考えやすくなります。

4.実現可能な目標を立てる

PDCAは、なるべく早く回してどんどんと仮説検証を繰り返して改善を進めていくことが重要です。誰もが「これは無理だろう」と思ってしまうような目標を立ててしまうと、PDCAを1回回すだけでも時間が掛かってしまい、ぐるぐると回せない事態になりがちです。また、あまりに高すぎる目標の場合、実行者のモチベーションが下がってしまうという問題もあります。

PDCAが上手く回らないケース

1.あまりに壮大な目標すぎて改善が回る前にモチベーションが欠落するケース

あまりに壮大な目標をたててしまうと、改善が上手く回り出す前に実行者たちのモチベーションが欠落することがよくあります。こんな目標できるわけないと思ってしまうような目標ではなく、地に足の着いた目標を設定するようにしましょう。

2.Plan→Do→Plan→Doで検証が伴ってないケース

よく有りがちなのが、Plan→Do→Plan→Doばかりで、CheckとActionが抜けているケースです。Plan通りに結果が出れば良いですが、まずそんなことはありません。必ず壁にぶつかり、Plan通りの結果が出てこないケースがほとんどです。通常であれば、そのような場合でもCheckで検証を行い、新たな計画を立てて修正していくのですがそこが抜け落ちているため感覚での改善に終始してしまい、結果的に上手くPDCAが回らなくなります。

3.早く回そうとして、有意差が出ていないのに回してしまうケース

Doの段階で、AパターンとBパターンの2パターンで効果の良かったものを採用して改善を進めていく、いわゆる「ABテスト」を行うケースもよくあります。しかし、そのABテストで有意差(間違いなく良いという差)が生まれる前に、感覚でそのときに良かった方を選んでしまうケースも多くあります。統計的なテストであれば有意差が出る前に判断してしまうと、結果的に改悪になっていたということがあります。

4.Planの時点で定量的な数値で計画立てられていないケース

Planを立てる際、定量的な数値で計画を立てていないと検証の段階で感覚で評価をしなければいけなくなります。感覚で行ってしまうと何故問題なのかというと、評価者次第で評価が良くなったり、悪くなったりすることです。当然改善案も感覚で作ることになるため、再現性もなくPDCAは回りません。

ISOにも採用されているPDCA

ISOとは、 工業・農業産品の規格の標準化を目的とする国際機関で「世界中の国際基準」を定めています。顧客満足向上と品質マネジメントの改善を実現させるISO9001の「ISO9001:2015」でPDCAが要求事項として掲載されています。

  1. 組織が自律的に製品及びサービスを顧客に提供することで持続的に成功を目指す為のPDCA
  2. 製品及びサービスに関連するQMSの構築のためのPDCA
  3. 製品及びサービスを顧客に提供するためのPDCA

このように、国際的にも認められたであることがわかります。

PDCAと一緒に語られるスパイラルアップ

Spiral up(スパイラルアップ)とは、その名の通り螺旋階段のような形を描きながら上昇していくことです。
PDCAを回し続けて業務の質を向上させていく様子を表しています。

計画の立案から問題発見までを行うだけではなく「スパイラルアップしていく」ことを念頭におきながらPDCAを回していくことが何より重要です。

まとめ

PDCAは戦後から使われている考え方ではありますが、未だにISOでも取り入れられるなど現役で使える考え方です。また、職種・業種・規模感にかかわらず使える万能な改善の考え方なので、ぜひ覚えて普段の業務でも使ってみてください。もちろん、PDCAは普段の生活でも取り入れられます。ダイエット、勉強など、まずはすぐ出来るようなものから取り入れてみても良いでしょう。これまで意識しなかった人は、まず「小さく」回すことから始めてみましょう。どんなに些細なことでも「PDCAを回せた」という成功体験を得られればモチベーションにつながり、癖付けしやすくなります。

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