人工知能の技術が格段に進化した昨今、ビジネスの現場でも活用が進んでいます。
特に店頭接客ツールとしての活躍は目覚ましく、ソフトバンクが提供する「Pepper」は既に多くの店舗で導入されています。

一方で、人工知能ではなく、人工無脳(学習機能を持たない会話ボット)の可能性を模索する取り組みも行われています。

リクルートテクノロジーズとNTTデータ共同開発の人工無脳を搭載したコミュニケーションロボット「Sota」が、リクルートが運営するゼクシィの相談カウンターに設置されました。

ヴイストン株式会社開発のロボット「Sota」に、リクルートテクノロジーズとNTTデータが共同開発した人工無脳を搭載しました。このSotaは3体でセットとなり来店されたお客様と対話しながらお客様の好みに沿った結婚指輪を提案します。

今回は、なぜこのようなロボットを作ったのか、なぜ人工知能ではなく人工無脳を搭載したのかなどを株式会社リクルートテクノロジーズの櫻井一貴氏に伺いました。

今回の目的を達成するためには、高度な技術は必要なかった

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今回のサービスが生まれた背景を教えてください。

櫻井氏:背景でいうと、もともと結婚式上や指輪やドレスについてアドバイスをさせていただくというサービスなんですが、まずアドバイザーがヒアリングをして、その内容に沿って色々ピックアップしている間にどうしてもお待たせしてしまうんですね。
その10分の間に、指輪を提案するサービスがハマッたんですよね。

人工知能ではなく、人工無脳を採用した理由は?

櫻井氏:今回、最大の目的が「ロボットと人間でどのようなインタラクションが生まれるのか、どこまで受けれ入られるのか、というのも検証材料でした。高度なコミュニケーションよりも、体験するカスタマーの方からしてみれば楽しいコミュニケーションをしているうちに何かしらのコンバージョンに寄与できるんじゃないかなというところを検証するために、(人工知能のような)高度な技術は搭載していません。」

あと、弊社が開発した人工無脳でいうと、パン田一郎があります。
パン田一郎の場合はいかに気の利いた言葉を返すか、それによって、いかに体験者が長い期間、使い続けてもらえるかということを重視しました。

今回のケースだと、指輪をもっとしっかり選びたいな、と思っていただければ成功だなと考えていて、しかも長すぎても飽きてしまうので、10分ぐらいで、指輪に興味を持ってもらうところまで持っていければいいので、あまり高度な技術はいらないかなと。
しかも、来場者は「ロボットと喋るために」来ているわけではないので、高度な会話を求めるのはハードルが高いなと判断しました。

ロボットは人を傷つけてはいけない

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シナリオもかなり考えられているのでしょうか。

櫻井氏
そうですね。

3体で1つの会話をプログラミングしているので、シナリオはある程度決まっています。
注意したのは、分岐点よりも言葉遣いですね。
ロボットだからこそ敢えてギリギリの発言をさせてみたり(笑)
キャラクター性を重視しました。

ロボットの人格を形成する時に一番こだわったのはどこでしょう?

櫻井氏:ロボットって、人を傷つけてはいけないですよね。
ロボットの人格を設定する時も、「否定しない」「攻撃しない」よう気をつけていました。
パン田一郎の方も相当細かく設定していますね。

集客ではなく、コンバージョン促進できるロボットの可能性を

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他業種への横展開は?

櫻井氏:まだ考えていないですね。

今までのロボットって、やはり集客がメインの目的であると思います。
今回は集客ではなく、体験価値の向上や、パンフレットを持って行ってもらうためのコンバージョン向上を目的としています。

ただ正直、このコンテンツを使っていろんなカウンターに進出するぞというよりも、今回の検証を経て、どのように人工無脳をチューニングすればいいかを考えていくことを目的にしています。

まとめ

接客ツールとしてロボットは、明確な目的もないまま、とにかく人目を引くために導入されているケースも少なくないのではないでしょうか。
「何のために導入したのか」が明確でなければ、ロボットはただの話題作りの道具にしかなりえず、活用しきれないでしょう。

お客様の単純な質問に答えることを求めるのか、場を和ませることを求めるのか、複雑な会話にも対応できる機能を求めるのかによって、人工知能と人工無脳どちらを採用するべきか異なります。

人工無脳の場合、人工知能のような学習機能がなく、あらかじめプログラムされた言語だけを発します。
実際の接客の場では不用意な発言をする可能性のある、先が予測できない人工知能よりも、会話を完全にコントロールできる人工無脳の方が向いているのではないかという見方もあります。

ただ、櫻井氏も指摘しているとおり、従来のロボットは、集客のみを目的にした利用に終始している現状があります。
購買意欲を高めることを目的とした今回の取り組みは、、店頭での新たなロボット活用の可能性を切り開いてくれるかもしれません。