小さな要求を受け入れた後なら、次の要求を受け入れやすくなる心理を利用した「フット・イン・ザ・ドア・テクニック」。
大きな要求を断らせた後に小さな要求を通す「ドア・イン・ザ・フェイス」と並んで非常に有名な交渉テクニックです。

今回は、交渉を有利に進める上で欠かせない「フット・イン・ザ・ドア・テクニック」を解説します。

フット・イン・ザ・ドア・テクニック

人は「小さな要求を受け入れた後だと、次の要求を受け入れやすくなる」傾向にあります。
「フット・イン・ザ・ドア・テクニック」とはそのような心理作用を利用し、本来の要求を承諾させるために小さな要求を先に受け入れさせるテクニックです。
「セールスマンが訪問先のドアに足を挟む」様子が名前の由来となっています。

人はいきなり難易度の高い要求をされてもなかなか承諾することはできません。
しかし、簡単な要求を数回行うことで本来の要求を受け入れてもらう流れを作ることができます。

要求する側に虫が良すぎるように聞こえるテクニックですが、この背景には「一貫した振る舞いを保ちたいという心理(一貫性の原理)」があります。

参考:
無意識に行動に表れている「一貫性の法則」を解説|ferret

フット・イン・ザ・ドア・テクニックに関する実験

アメリカの心理学者スティンプソンは被験者に「数マイル離れたところに苗木を植える」というお願いしました。
この要求をする前に簡単なアンケートに答えたグループは8割以上が承諾しました。一方で、アンケートを行わなかったグループは半数以上が拒否したと言います。

このように、いきなり頼むと断られてしまう依頼であっても、あらかじめ簡単な要求を受け入れてもらうことで最終的な目的を果たせることが実験で証明されています。

フット・イン・ザ・ドア・テクニックの活用例

訪問販売の場面を例に挙げてみます。

お客様と対面した時、いきなり売り込むのではなく、「せめて話だけでも聞いてもらえませんか?」「話を聞くだけで結構です」のようにまずは最小限の要求を提示します。
一見関係ないような質問でも、心理的に断りづらい雰囲気を作ります。

次に「1つだけでもいいので買ってください」と、先ほどより大きな要求を伝えます。
最初から要求を通そうとした場合に比べて、承諾してくれる可能性が高いでしょう。
そして最後に「定期契約しませんか?」と言ったように本来の要求を持ってきます。

こうして、徐々に要求を飲ませて本来の要求を飲ませる可能性をあげていきます。

フット・イン・ザ・ドア・テクニックにはまらないための注意

このテクニックは非常に有名なため交渉相手が利用してくる可能性も十分にあります。
その場の心理に惑わされず、双方にとって有益な交渉をするために対処法を知っておきましょう。

フット・イン・ザ・ドア・テクニックから逃れる上で一番大事なポイントは、最初の要求を断ることです。
どんなに些細な要求であっても、興味がない場合は断りましょう。

最初の段階で断らなければ、気づかないうちに相手のペースに飲まれて本意に沿わない結果を生むこともあるので注意しましょう。
何かを提案されている時は、「心理テクニックを利用しているのではないか」と疑う姿勢が重要です。

まとめ

フット・イン・ザ・ドア・テクニックは非常に有用で一般的な交渉テクニックです。
本来の要求を言う前に、それより軽い要求を承諾させることで交渉がスムーズにいきます。
状況に応じて利用する一方で、自分自身がテクニックの罠に陥らないように小さな要求の段階で断るなど、注意が必要です。