人は、他人に親切にされると、何かしらのお礼をしなければいけないと感じます。
その心理作用は心理学の世界では「返報性の原理」と呼ばれています。

返報性の原理はビジネスのあらゆるシーンで活用されています。
今回は、「返報性の原理」の基本を解説します。

返報性の原理とは:与えられた好意を返したくなる心理

人間は他人から施しや好意を示された際に、自分も相手のために何かしようと思う傾向にあります。
この現象は心理学用語で「返報性の原理」と呼ばれています。

返報性の原理という用語を知らなくとも、普段の生活の中で直面した記憶があるのではないでしょうか。

友人にご飯を奢ってもらうと、次は自分が奢りたくなる
お土産をもらうと、今度は自分が渡したくなる
SNSの投稿に「いいね」をつけられると、お返しに「いいね」を押したくなる

以上の行動は全て返報性の原理が働いてる例と言えます。

そうした心理の背景にあるのは「自分だけが得するのは悪い」という罪悪感や、「相手と対等な立場でいたい」というプライドなのかもしれません。

返報性の原理は日常生活のやり取りだけでなく、ビジネスの場面で非常に多く応用されています。

返報性の原理の代表例:ドア・イン・ザ・フェイス

「ドア・イン・ザ・フェイス」と呼ばれるセールステクニックは、返報性の原理を応用しています。

小さな要求から段階的に大きな要求ををする「フェイス・イン・ザ・ドア」と並んで有名なテクニックです。
最初に断られるとわかっているようなお願いをあえて持ちかけます。法外なお願いを一度断らせておき、その後で本来通すつもりだった商談を始めます。

次の例を参考にしてください。

「5年間で契約しませんか」→5年間は長すぎる
「わかりました。せめて1年間だけでも」→しょうがないな(相手も譲歩したし、こちらも譲歩しよう)

このように一度断らせることで、「相手に断ったままなのは悪い」と後ろめたさを感じさせることができます。

後ろめたさを解消しようとして、相手に譲歩して承諾してしまうのです。
ドア・イン・ザ・フェイスを実践することで、最初から本来の条件を持ち出すよりも承諾してもらいやすくなります。

返報性の原理を利用する場合はまず「与えること」を意識する

返報性の原理を活用するためには、まずは「与えること」が必要です。

丁寧な接客をすることも返報性の原理を活用する上で良い方法です。「自分のために1人の定員がここまで丁寧に接してくれる」と思えば、「何か1つくらい買ってあげよう」と思うでしょう。

無料サンプルのプレゼントもメジャーな方法です。顧客にとって本当に有益なサンプルなら、「貰うだけなのは悪い」と感じて有料の商品を購入するきっかけになるでしょう。

無料相談という方法も考えられます。親身になって顧客の相談に乗ることで、「ここまで相談に乗ってくれたのだから」とお返しの気持ちでサービスを利用するきっかけになりえます。

以上のように消費者に対して確実なベネフィットを提供することで、返報性の原理を応用することができます。

「見返りありき」の思考を一旦捨ててみる

まず注意するべきなのは、「見返りを求めている」を狙っていると思われないようにすることです。

見返りを狙っていると感づかれてしまっては、何かを与える意味がありません。
ユーザーが好意を感じられなければ、後ろめたさを感じることはないからです。

返報性の原理は、「見返りなしで自分のためにしてくれている」と相手に感じさせるからこそ意味があります。
中途半端な施しや好意は逆効果になります。
本当の意味で「返報性の原理」を応用するのであれば、見返りを一旦頭から捨て、お客様の立場になって親身に接する姿勢をとるべきでしょう。