「○秒に○個売れた」「○秒に○本売れた」というキャッチコピーを見かけたことは、誰でも一度はあるのではないでしょうか。

日用品や健康食品などのBtoC商品のキャッチコピーとして使われることが多い文言ですが、自社のマーケティングに携わっている方はそのまま鵜呑みにせず、キャッチコピーのカラクリを理解した方がいいでしょう。

どのように作り出されているのか、自社でも利用した方がいいのか。
今回は、「○秒に○個売れた」というキャッチコピーの仕組みについて解説します。

「○秒に○個売れた」はどのような計算式で算出されているのか?

まず、「○秒に○個売れた」というキャッチコピーはどのような計算式で算出されるのか見てみましょう。

例えば、発売から6ヵ月経過した商品が「3秒に1個売れた」とします。

まず、1ヵ月を30日として、6ヵ月分の秒数を計算してみましょう。

60秒×60分×24時間×30日×6ヵ月=15,552,000秒

6ヵ月を秒数に直すと15,552,000秒となりました。
この秒数を3で割ります。

15,552,000秒÷3=5,184,000個

6ヵ月の間に「3秒に1個売れた」商品の実売部数は、「5,184,000個」でした。

「○秒に○個売れた」キャッチコピーを検証するためには、実売部数と計測期間が必要です。
では実際に、「○秒に○個売れた」というキャッチコピーを公式で利用していて、かつ計測期間と実売部数を公表している商品を見てみましょう。

直近で「○秒に○個売れた」キャッチコピーを利用していた商品

1秒に1個売れるソフトクリーム(ミニストップ「プレミアム安納芋ソフト」)

プレミアム安納芋ソフト___ソフトクリーム___MINISTOP.png
http://www.ministop.co.jp/syohin/sweets/softcream/annouimo-soft2016.html

コンビニの「ミニストップ」が10月28日より発売した「プレミアム安納芋ソフト」が、発売から10日間で100万個を販売し、プレスリリースのタイトルに「1秒に1個売れた」と記載しています。

参考:
1秒に1個売れている!! 安納芋づくしの『プレミアム安納芋ソフト』 10日間で100万個突破 | プレスリリース | MINISTOP

10日間だと、60秒×60分×24時間×10日間=864,000秒となります。
1秒に1個売れている計算であれば「864,000個」となりますが、実際には1秒に1個を上回るペース(正確には1秒に1.15個)で売れているようです。

実際はもっと速いペースで売れているものの、「1秒に1個」というキリの良さとキャッチーさを優先してのタイトル付けだったのでしょう。

(ただ、「先行発売期間含む」と注釈が加えられているので、販売期間自体はもう少し加算されそうです。)

8分30秒に1個売れる8万円の美容クリーム(ダイアナ「プレステージクリーム」)

8万円のクリームが8分30秒に1個売れているワケ 「ダイアナ_プレステージクリーム」発売半年で1万個達成!|株式会社ダイアナのプレスリリース.png
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000012.000012046.html

株式会ダイアナが発売する美容クリーム「プレステージクリーム」は、8万円という高価格であるにも関わらず、半年間で販売数1万個を突破したと公表しています。

参考:
8万円のクリームが8分30秒に1個売れているワケ 「ダイアナ プレステージクリーム」発売半年で1万個達成!|株式会社ダイアナのプレスリリース

「8分30秒に1個」は、店舗の1日の稼働時間8時間を踏まえて算出されていると記載があるので、その点を考慮して計算します。
8時間を秒数に直すと28,800秒、8分30秒を秒数に直すと510秒なので、28,800÷510=56.47で、1日あたり約56個売れている計算となります。

半年間を6ヵ月、1ヵ月を30日として計算すると、56×30×6=10,164で、公表されている「1万個」に近い数字が出ます。

「8分30秒に1個売れている」とだけ聞くと、他の類似コピーに比べインパクトが弱いのではと感じますが、「8万円の美容クリーム」が8分30秒に1個売れているとなると印象は大きく変わります。
「なぜそんなに高価なものがそれだけのスピードで売れているのか」と、消費者の興味を引きやすくなります。

「○秒に○個売れている」というキャッチコピーは比較的安価な商品に使われる傾向がある中で、あえて高級品にこのキャッチコピーを組み合わせてインパクトを強めているのでしょう。

「○秒に○個売れた」と聞くと誇張表現なのでは?と思ってしまう方もいるかもしれませんんが、今回例に挙げた3社は、いずれも誇張どころか実際の販売数よりも少なめに見積もった上で「売れている」と印象づける効果的なキャッチコピーを打ち出しています。

「○秒に○個売れた」は心理学を利用した合理的なキャッチコピー

そもそも、なぜ「○秒に○個売れた」という形式のキャッチコピーがよく使われているのでしょうか。心理学的な側面から検証してみましょう。

この形式のキャッチコピーがよく使われるのは、その効果が高い=人々の心理に大きな影響を与えているからでしょう。

「○秒に○個売れた」キャッチコピーがなぜ大きな効果をもたらすのか、それを読み解くために知っておきたい心理効果が以下の3つです。

・バンドワゴン効果
・フレーミンング効果
・シャルパンティエ効果

バンドワゴン効果

「人気がある」「流行っている」と認識した商品に対して好感を持ち、購入に至りやすくなる心理作用を「バンドワゴン効果」と呼びます。

「○秒に○個売れている」というキャッチコピーは、「秒単位で売れている商品」だということを端的に表現しています。
シンプルに、しかも強烈に、人々に対して「とても売れている商品」だという印象を与えることができます。

アンカリング効果

人は、最初に認識した情報をもとに意思決定する傾向があります。これを「アンカリング効果」と呼びます。

商品を認識する際、一番最初に目に飛び込んでくるキャッチコピーに「○秒に○個売れた」というデータを提示することで、「これは売れている商品」だと最初に認識します。「売れている商品」と最初に認識したので、意思決定(購買行動)に反映されやすくなるという流れが生まれます。

フレーミング効果

提示する数字や情報の切り口を変えることで、人に与える印象が大きく変わることを「フレーミング効果」と呼びます。

例えば、以下の2文は全く同じ情報を提示していますが、それぞれの文章から受け取る印象は全く違うのではないでしょうか。

・この病気を患った患者の3割は死亡します
・この病気を患っても7割は生存します

このように、同じ情報でも表現次第で人に与える印象は変えることができます。
単純に販売数を提示するよりも、「○秒に○個売れた」と表現することで直感的に数値を認識させやすくなります。

どんなキャッチコピーでも、ユーザーに対する誠意は担保しよう

「○秒に○個売れた」というキャッチコピーは、インパクトが強いだけに誇張表現の手段と捉えかねられません。
この形式のキャッチコピーを利用する際は、必ずその数値の根拠になるようなデータ(計測期間や販売数)を入れるようにしましょう。

キャッチコピーは、時として商品の売り上げを左右するほどの大きな影響力を持ちます。
売り上げ拡大を優先してユーザーの信頼を損なうようなことがないように気をつけましょう。

まとめ

効果的なキャッチコピーの作成は、ほとんどの企業にとって永遠の課題なのではないでしょうか。
様々なパターンを試して自社のユーザーに響くキャッチコピーは何なのか、何を訴求すればいいのかを模索していくほかないでしょう。

「○秒に○個売れた」という形式のキャッチコピーを自社で使う際は、上記で紹介した企業の数値算出方法を参考に、信頼に足るデータもセットで提示するようにしましょう。