2016年後半から、GoogleやAmazon、DropboxやPaypalなど、シリコンバレーに名を連ねるさまざまな企業が新しい職種の求人を出し始めているのを、ご存知でしょうか。
その新しい職種とは、UXライター」(UX Writer)です。

これまでも、これに近い職種として「UXデザイナー」と呼ばれる人々は確かに存在していました。
UXライターは、UXデザイナーと一体何が違うのでしょうか。

今回は、AmazonやGoogleなどで積極的に採用している「UXライター」とはどんな役割なのかをご紹介します。

新しい職種としての「UXライター」

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UXライター」とは、シリコンバレーのテック系企業を中心に採用が始まった新しい職種です。
もちろんUXとは
User Experience
(ユーザー体験)のことなので、UXライターとはユーザー体験を生み出すためのライティング業務を行うことになります。

従来のUXデザインは、パーツやリンクなどのUIのデザインや、なめらかな動きをすることで離脱率を防ぐマイクロインタラクション、ユーザーに使い続けてもらうためのオンボーディングなどを、総括してアイデアを実行に移す役割でした。
ところが、実際にコンバージョン率を上げるとなったときにUXデザインと同じくらい重要なのは、CTAボタンに到るまでのコピーライティングの中身です。
いくらストレスのないホームページを作り上げたところで、押しのないコピーであればユーザーは自然と足を遠のけてしまいます。

しかし、UXライティングとは、単にコピーライティングを行うことだけではありません。

私たちのリアルな生活とパソコンやモバイルを通したオンラインの体験は以前にも増してシームレスになっています。
例えば、Zozotownで服を買うときに、事前にオンラインで確認して、実店舗で実際の服を試着して、オンラインで購入して、自宅で受け取る、ということも珍しい場面ではなくなりました。
そして、UIはもはやグラフィカルなもの(GUI:Graphical User Interface)だけでなく、AppleのSiriやAmazonのAlexaのように音声でコントロールするもの(VUI:Voice User Interface)まで登場しています。

そんな中で、UXのエキスパートたちが考え始めているのは、単なる外観に関する体験ではなく、ユーザーに語りかけたり対話することでユーザーと「共有する」体験のほうを重視していったほうがいいということです。
UXライティングとは、そうしたシームレスな体験の中で、シナリオを作っていく重要な役割なのです。

UXライターの仕事とは?

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1. 調査・分析

UXライターは、UXデザイナーやプロダクトマネージャー、エンジニアなどさまざまなメンバーのいるUXチームの一員として、調査・分析を行います。
既存のWebサイトの場合は、すでにあるページ離脱率やコンバージョン率を確認し、そこに書かれているコピーやクロージングフレーズなどとの関係を分析します。
必要があれば、利害関係者に向けて、改善に関する提案をプレゼンテーションしたりします。

2. シナリオ作り

UXライターというくらいなので、当然ながらライティングを行います。
あるEコマースの求人では、UXライターの役割について、以下のように説明されています。

徹頭徹尾カスタマーのことを考え、独自のコンテンツ戦略を作り、短文または長文のコピーやヘッドラインを作成し、自社の分析ツールを使ってコンバージョンを検証していきます。また、革新的で魅力的、覚えやすくて効果的なコピーを作ることで、カスタマーのニーズを引き出し、あるいは潜在的なカスタマーを発掘することが役割です。

単なるコピーライティングではなく、UX分析に基づいたライティングを期待されています。

3. 協働

求人を見てみると、UXライターは、いわゆるフリーランスのコピーライターとは違って、チームを横断してコラボレーションすることを期待されています。
これは、UXデザイナーやプロダクトマネージャーなど、他の役割と同じように、コンバージョンや売上などに同等に責任を負っているからです。

裏を返してみれば、これまではコンバージョンや売上改善などに、ボタンの色や形を変えるようなA/Bテストを頻繁に繰り返していたけれど、コピーの内容に関してはあまり積極的に関わってこなかった、というテック業界の反省もあります。
魅力的なシナリオ作りに関しても責任を負えるメンバーシップを作ることで、ユーザーとの対話も試行錯誤しながら改善していくことができるようになります。