UXってよく聞くけど、UX改善のために一体何をすればいいの?」

Webデザイナーの方や最近Web担当者になった方の中には、このように思っている方も多いのではないでしょうか。

UXとはユーザー体験のことですが、確かにユーザー体験という言葉自体が抽象的で、何をすればいいかわからないかもしれません。
UXを考えることは、ユーザー視点でプロダクトに触れることに他なりません。

デザイナーやエンジニア、マーケターなど、それぞれに専門の仕事があるでしょうが、一旦自分の役割から離れて、1ユーザーとして自身のプロダクトに触ってみることで、UX上の問題点を発見し、さらなる改善につながる施策を打てることがあります。

今回は、ユーザー視点でUX改善を考えるための*「ヒューリスティックマークアップ」*と呼ばれる手法についてご紹介します。
この方法を行うのはUXデザイナーである必要はなく、職種を横断して身につけておきたいユーザー調査の手法です。
UXについて何をすればいいか分からなければ、まずはここから実践していきましょう。

ヒューリスティックマークアップとは?

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ヒューリスティックマークアップは、ユーザー調査のために行われる手法の一つです。
*ヒューリスティック(heuristic)*というのは、「必ず正しい答えを導けるわけではないけれど、ある程度のレベルで正解に近い解答を得ること」ができる手法のことで、主に計算機化学や心理学、論理学などで使われる帰納法的な手法です。

UXの領域においては、*「ユーザーになりきって、感じたことや発見したことを全て記録し、改善点を把握する」*手法となります。

そもそもUXに関してフィードバックする場合、定量的で測定可能なもの定性的で測定不可能なものがあります。
A/Bテストなどを通してコンバージョン率の違いなどを見る場合は、数値によってUXのよしあしを判断することになります。
これが定量的なフィードバックです。

一方、ユーザー体験を定性的なものとして捉えた場合は、どうしても複数の個人的な感想を元に帰納的にフィードバックする必要があります。

簡単に言えば*「ユーザーになりきってプロダクトを使い、感想を記録する」*というだけの手法です。
UXデザインって何をすればいいの?」という場合には手軽に始めることができる便利な方法です。

ヒューリスティックマークアップの手順

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▲ 実際にまとめたスライドのサンプル

ヒューリスティックマークアップの方法は様々ありますが、定義に沿った手順で一番簡単なのは*「ユーザーになりきって行動し、利用しているアプリやサイトのスクリーンショットを撮影し、感じたことをスライドにまとめる」*といった方法です。

具体的には、下記の手順で行なっていきます。

1. 改善フローを決める

例えばアプリを開発している場合は*「アプリをAppストアからダウンロードして起動し、実際に友達とコンタクトを取るまでの行動」であったり、コマースサイトであればトップページからユーザー登録を行い、メール承認後初めて注文するまでの手順」*など、これから改善したいフローを決めます。

注意したいのは、フローとともにどのようなユーザーがアクセスすることを想定しているのかを決めておくことです。
可能であれば、はじめて使うであろうユーザーを想定しておいたほうが、UX改善のポイントを見つけやすくなります。

2. 一連の流れのキャプチャーをすべて撮る

一連の流れの中で出会う画面のキャプチャーをすべて撮ります。
その際に、それぞれの画面で感じたことや気づいたことなどをしっかりとメモしておきます。

いくぶんか主観的になるかもしれませんが、ユーザーがそのシナリオでその画面に触ったときに、本当にそう思うかということに気をつけながら見てください。

3. スライドにまとめる

キャプチャを撮影しそれぞれの画面に関するメモが用意できたら、スライドに1画面1枚の原則でまとめておきます。
スライドごとに記述方法を変えると後になって読みにくくなってしまうので、「発生したこと」「気づいたこと」「次のアクション」「問題点」「改善案」など、ポイントのフォーマットをあらかじめ作っておくと、まとめやすくなります。

4. 資料を共有する

自分の考察を、チーム内で共有し、意見をもらいます。
Slackなどで資料を共有することもできますが、可能であれば対面でプレゼンテーションを行うと、リアルタイムな議論を行うことができるでしょう。

ヒューリスティックマークアップを行うメリット

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1. 1ユーザーとしての視点を持つことができる

デザイナーやエンジニアという自分の職業に囚われた見方ではなく、1ユーザーとしてどのように感じたかをチームで共有することができます。
もちろん1ユーザーの意見なので絶対的な解答ではありませんが、そもそもヒューリスティックな考え方というのは収集した手持ちの解答から最適解を導く方法なので、ここからでも有益な気づきが得られるでしょう。

2. チームで問題点を再認識することができる

UXデザイナーでないと気にしないような問題も、職種を横断して一人ひとりが行うことで、ユーザーに起こりうる問題として可視化され、すべてのメンバーがデザインやUXの議論に参加しやすくなります。

早い段階でデザイナーだけでは気づかなかった指摘を得ることができたり、デザイナーにはなかった視点をもらえることができるのも大きなメリットです。

3. すぐに次のアクションに移すことができる

ヒューリスティックマークアップはチーム全体に共有することを前提としており、作成する資料も具体的な1画面と問題をセットで可視化することができるので、すぐに会話してそのまま次のアクションに移すことができます。

まとめ

UXデザインといっても何からやれば分からない場合は、まずはヒューリスティックマークアップによるUX評価から行なってみましょう。
実際に1ユーザーとしてフィードバックしてみると、これまで感じなかった新たな視点を発見することができるかもしれません。