メディアは継続することで、価値が蓄積されていきます。1つひとつのコンテンツの質が良いことも大事なことですが、継続して運営可能な体制を構築していくことも重要です。

コンテンツ作成の負担を下げる、作業効率を上げる、コンテンツの質を保つ、作成可能なコンテンツの量をコントロールする、全体の改善を重ねる。

メディアを継続していくためには、こういったことが必要になってきます。こうした点については、実は日本にとっても馴染みのある業種からヒントをもらえたりするんです。

Web担当者やメディア運営をされている方、記事コンテンツを制作されている立場の方などにオススメです。ぜひ普段の業務に役立てください。
  

メディア運営は「工場」に似ている?

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メディア運営では、目標の設定や工数の管理、ワークフローの構築と改善などを、粘り強く継続して実施していく必要があります。こうした考え方が昔から磨かれてきたのが、工場生産などの領域。メディアと工場は一見離れているテーマに見えますが、実はこれがメディア運営におけるヒントがあります。

『ザ・ゴール』という、機械メーカーの工場長である主人公を中心に繰り広げられる工場の業務改善プロセスを主題にした小説があります。この小説の中では「制約条件の理論制約理論、TOC(theory of constraints)」というシステムのゴールを継続的に最大化することを狙う管理哲学が簡単に紹介されています。これは、イスラエルの物理学者エリヤフ・ゴールドラット博士が著者で、1980年代にアメリカで提唱した生産スケジューリングをベースとした経営手法です。

参考:
ザ・ゴール ― 企業の究極の目的とは何か|著者:エリヤフ・ゴールドラット
  
TOCは、ボトルネックプロセスにおける生産率を増大させることで、全体的な生産率を増大させることが可能になるという考え方。全体の最適化を目指しながらボトルネックを発見し、解消していくプロセスが描かれているのですが、このボトルネックをどう解消するかがメディア運営においても非常に重要です。

メディアを運営する際に、何が在庫になるのか、生産率はどの程度になりそうなのか、何が作業を遅らせているのかを考えることは、意外とおろそかになりがち。継続してメディアを運営していくためには、ボトルネックに向き合う必要があります。
  

「ボトルネック」を発見し、改善を重ねる

メディア運営の工程は細かくわけられます。大きくわけるだけでもコンテンツの素材集めのための取材やいくつかのフェーズにわかれます。コンテンツの本数が足りなくなってしまう際は、このどこかに必ずボトルネックが存在します。

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ボトルネックの例として考えられるのは、記事ネタの数が少ない、生産能力が足りない、確認時のリソースが足りないなど。思ったようにコンテンツが作れない時は、工程を細かく分解してみて、どこで詰まりが生じているのかを探しましょう。

また、メディア運営において、コンテンツはインタビューやイベントレポート、ニュース紹介など、いくつかのフォーマットにわかれます。こうしたコンテンツは、それぞれ必要となる素材や制作の工数、ボトルネックになりやすいポイントが異なります。

工場で作られる製品も、高品質で少量生産の製品と量産を重視した製品では、工程は変化します。量産可能なコンテンツであれば、製品の組み立て工程、作業員の配置を一連化するライン生産方式のように効率を重視して作成することもできますが、インタビューのようなコンテンツは職人作業的な部分もあるため、効率化が難しい部分もあります。こうした違いも考えながら、生産の工程をチェックしていきましょう。

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在庫、費用、工数、生産能力、予算、求める品質などをかけ合わせていくと、自ずと生産可能なコンテンツの本数が見えてきます。各コンテンツのフォーマットにおいてこの見とおしを立てることで、地に足のついたメディア運営が可能になるはずです。