「ユーザーの声に耳を傾け、身近にいる普通の人の問題解決をしたい」株式会社お金のデザイン 取締役兼 COO 北澤氏にインタビュー
世の中には、多数の会社が存在しており、多くのビジネスモデルプロダクトが存在しています。
しかし、ビジネスモデルとプロダクトの秀逸性だけでは、Product-market-fit(人が欲しがるものを作ること)を達成し、ビジネスをブレークスルー(現状ある障壁を壊して大きく前進すること)することはできません。
ブレークスルーを達成するには、起業家は秘伝のレシピを発見し、ビジネスに組み込んでいく必要があります。本連載では、様々な起業家が持つ秘伝レシピ(Secret Recipe)に焦点を当て解読していきます。
第5回目は、株式会社お金のデザイン(以下、お金のデザイン)の取締役兼 COOである北澤 直 氏に話をうかがいました。
読者の皆さんに、自分のビジネスをブレークスルーするためヒントを見付けていただければ幸喜です。今の業務で壁にぶつかっていると感じている方、もう一歩さらなる成長を遂げたいと考えている方に、ぜひともオススメです。
目次
1. 序文 - お金のデザインとは -
2. 秘伝レシピ1:プロダクトに対する敷居を低くして、潜在市場を一気に取り込め
3. 秘伝レシピ2:あるべき姿から逆算して、とことん議論を行え
4. 秘伝レシピ3:バリューを共有できるビジネスパートナーと補完関係を構築せよ
5. まとめ
リーンスタートアップというメソッドを知っている方も多いと思います。
リーンスタートアップとは、ミニマムな(必要最小限な機能を有する)プロダクトを作り、ローンチしてからユーザーのフィードバックを受けながら検証しプロダクトを磨きこんでいくスタートアップのマネージメントメソッドの1つです。人と人とのマッチングや、特定情報のキュレーションメディアなどのビジネスモデルならば、ユーザーの個人情報は別として、ほかの情報の取り扱いに最初から細心の注意を払う必要はないと言われています。
参考:
ホームページ運用にも活用できる!リーンスタートアップの手法を解説|ferret
FinTechのスタートアップは取り扱うメインの情報がユーザーの資産情報、クレジットカード情報、銀行情報など、非常にセンシティブで重要なものです。取り扱い要件を満たすには、システムの安定性、堅牢性が必要になります。加えて、各種のライセンスを当局より取得しなければ、サービスを開始できません。
一方で、ユーザーからの共感を得てファンになってもらうには、ユーザーのフィードバックを受けながら、UXの改善を繰り返していく必要があります(特にBtoCの場合)。
今回インタビューさせていただいたお金のデザインは、BtoC向けのロボアドバイザーサービスを提供しています。国内でも、ウェルスナビ、エイト証券をはじめ、様々なBtoC向けのロボアドバイザーを活用した資産運用サービスが出てきています。一般顧客(BtoCの対象ユーザー)はUXが悪いとすぐに離脱してしまうので、継続的にUXを改善していくことが求められます。
"安定性・堅牢性といった要件"と"スピード感のある継続的なUX改善という要件"は、トレードオフな関係にあります。お金のデザインは、両方を満たす必要があり、非常に難易度が高いビジネスになっています。国内で最大級の規模を誇っているお金のデザインの取締役兼COO 北澤 直 氏に秘伝のレシピを直撃しました。
ロボ・アドバイザーもFinTechのひとつで、投資の支援がその役割となります。
現在、日本のロボ・アドバイザーには2つの形態があり、ひとつは投資一任型、もうひとつは投資アドバイス型になります。前者は、いくつかの質問に答えるとポートフォリオ(金融資産の組み合わせのこと)が提示され、それに納得した場合は運用までを自動的に行ってくれるもので、サービスを提供しているのはベンチャー企業が多いのが特徴です。
後者は、いくつかの質問に答えるとポートフォリオや金融商品が提示されますが、購入や運用は自分で行うもので、大手の金融機関がリリースしているものがほとんどです。
北澤 直 氏 プロフィール
お金のデザイン取締役 COO
慶応義塾大学法学部卒業 ペンシルバニア大学大学院修了(LL.M)モルガン・スタンレー証券に投資銀行員として6年間在籍し、不動産部門の成長に貢献。それ以前は弁護士として6年間、日本とNYにて金融・不動産関連の法律業務を手がける。弁護士(日本法(第一東京弁護士会)NY州法)
田所 雅之 プロフィール(インタビュアー)
日本とシリコンバレーで合わせて、5社の起業実績のあるシリアルアントレプレナー。スタートアップを経営しながら、シリコンバレー本社のFenox Venture Capitalのベンチャーパートナーとして、日本及び東南アジア地域の投資を担当。現在は、数社のスタートアップのアドバイザーとボードメンバーも兼任している。起業家の教育にも熱心で"startup science”というスライドの著者でもある。
田所(インタビュアー):
本日は貴重なお時間をいただき、誠にありがとうございます。
早速ではございますが、私が非常に気になっている質問から始めさせていただきます。北澤さんは、なぜお金のデザインのビジネスに参加しようと思われたのでしょうか。
北澤氏(お金のデザイン取締役 COO):
僕自身が弁護士として6年間、証券会社で投資銀行員として6年間というキャリアをもち、その際、常にプロの方を相手に仕事をやってきました。プロの方を相手にする仕事はどれもエキサイティングなものばかりで楽しかったです。でも、身近にいる普通の人の問題解決をしたいと思っていました。
田所:
ちなみに、何かきっかけとなった原体験があったのでしょうか。
北澤氏:
弁護士試験に受かって、司法修習生で福岡にいました。その時、アルゼンチン債を購入して自己破産した70過ぎのおばあちゃんに出会いました。”息子は大阪に出てしまって、年1回くらいしか会いに来ないけれども、証券会社の営業の担当者は毎月遊びにきてくれて、アルゼンチン債を勧められた”といっていました。
田所:
金融リテラシーの低い普通の人向けに何かできないか、とその時に考えたんですね。ちなみに「身近にいる普通の人の問題解決をしたい」というのは具体的にどのようなことでしょうか。
北澤氏:
お金って人生にとって大事なものです。素直にそう思いました。そこで、プロ向けのビジネスはすごく大きいし機会もたくさんありますが、リテラシーがそこまで高くない一般人にも届けるようなサービスをやりたいと考えていました。
秘伝のレシピ1:プロダクトに対する敷居を低くして、潜在市場を一気に取り込め
田所:
2016年に10万円から投資できるロボアドバイザー(THEO)をローンチされたのは衝撃でした。
北澤氏:
前身となるETFラップというロボアドサービスをローンチした2014年当時、ユーザーは500万円以上を投入しないと購入できないモデルでした。”敷居は高い……でもやってみたい”という方も結構いました。セミナーを主催しても毎回立ち見が出るほどの参加がありました。非常に関心は高かったです。
田所:
そこで潜在的なユーザーとお話されたんですね。
北澤氏:
1番言われたのは、”始める敷居を下げてくれ”ということでした。500万円は外車一台買うくらいの予算です。そこで思い切って10万円に下げました。
田所:
結果として一気にユーザーが増えたのでしょうか。
北澤氏:
はい、ユーザー数が今年の3月末時点で1万人を超えました。その半分以上が20代、30代です。そのうちの47%が資産運用経験がゼロの人たちでした。
田所:
資産運用しているセグメントというと50代以上の人が多いと思いますが、プロダクトの敷居を下げることで潜在市場を一気に取り込んだということでしょうか。
北澤氏:
まさに、そうですね。そういう若いセグメントであったり、アーリーアダプターでない一般の人を取り込むという点については、ひたすら"ユーザーの声を聞く"ようにしています。その中で、ユーザーに聞いてみて「なんで資産運用などをやらないのか?」と聞いてみたところ、潜在的なストレスや、従来的な金融サービスへの不信感があるのがわかりました。
田所:
ユーザーの声を言語化していったんですね。
北澤氏:
潜在的なニーズに応えるために、スマホでどこでも資産運用診断をできるようにしたり、UXをひたすら改善したり、10万円から始められるようにしたり、手数料1%のみにしたり、ほかでかかるコストは我々が負担するということを伝えました。そうやって認知度が上がってきました。
田所:
ユーザーの敷居をどんどん下げていったんですね。
北澤氏:
10万円からとした時に、ビジネスとしての採算性が合うのかどうか、という議論もありました。10万円で出してみて、リーチできる層が厚いのがわかりました。そこから、もっと広い層のユーザーが受け入れられるUXやそれを支えるエンジニアリングが必要だと思いました。
秘伝のレシピ2:あるべき姿から逆算して、とことん議論を行え
田所:
スタートアップ業界では、リーンスタートアップメソッドが常識になっています。FinTechの場合は、扱うものがお金や資産というとてもセンシティブなものです。リーンスタートアップで回すスピードと、FinTechで求められる堅実性のトレードオフにどのように対応をしているのですか?
北澤氏:
そのトレードオフが1番難しいです。金融サービスなので、安定性がすごく重視されます。1回のミスがあってはならないので、堅牢性、冗長性、可用性、セキュリティー(安全性)に細心の注意を払う必要があります。一方で、Webサービスという面もあるので、マイナーなエラーを甘受しながら、プロダクトローンチして、生の声を聴きながらイテレーションを回していく必要があります。
田所:
どちらも求めているんですね。
北澤氏:
どちらの要件も正しいです。2つの融合を図っていくことが重要です。ただ、凄く難易度が高いですね。
田所:
難易度が高いプロジェクトを回していくポイントはなんですか?
北澤氏:
経営陣の仕事は、トレードオフから発生するどうしようもないストレスを請け負うようなところにあると思います。本質的にはユーザー目線の発想で行きたいのですが、手前にやらなくてはならないことが結構あります。全体プロセスをスムーズにするために環境づくりが大事だと思っています。
田所:
どういった環境づくりですか?
北澤氏:
メンバーにある程度任せつつも、きちんと説明責任を求めるようなことです。過去に人に任せ過ぎてコントロールが効かなかったことがありましたし、マイクロマネージメントすると面白い人間が来なくなってしまうリスクがあります。
田所:
ほかにどのような環境づくりを心がけるようにしていますか?
北澤氏:
人によって、物事の見方や、前提条件が異なるので、共通言語を持つことが大事だと思っています。それを醸成した後にとことん議論するような場を設けることです。
田所:
どのようなことを議論されるんですか?
北澤氏:
まず何をしたいか、何をすべきかというところを話します。全員で、ゴールを決めてから逆算します。それから、それぞれが何をできるかを持ち寄って、自分がどういうことができるかを、話し合っています。
田所:
トップダウンではなく、ボトムアップで動いている感じですね。
北澤氏:
トップダウンとボトムアップを行き来している感じです。新たな取り組みが多く前例の正解がない世界に挑んでいます。カチッとルールを決めるというより、本当にやるべきことを議論して、そのためにどうすべきかということを突き詰めます。原始的なのですが、そういうコミュニケーションフローが本当に重要です。
秘伝のレシピ3:バリューを共有できるビジネスパートナーと補完関係を構築せよ
田所:
シリコンバレーでは、スタートアップがスタートアップに投資したり、買収したりすることはよくあります。UberやAirbnbもそれぞれ10社ほど買収をしております。印象的なのが、一昨年の資金調達ラウンドで、マネーフォワードさんがお金のデザインに出資しているところです。どういった経緯だったのですか?
北澤氏:
メンバー同士が相思相愛でした(笑)ビジネスとしても大きなシナジーがあると思っています。マネーフォワードのUIでTHEOの運用を見えるようにしています。僕たちは資産運用を始めようと思った時の問題は解決できますが、その前の段階である資産の見える化の部分は解決できません。
田所:
なるほど、マネーフォワードの家計簿アプリで資産が見える化される。そこで資産運用したいという課題が顕在化されるので、そこを掬い取るということですね。
北澤氏:
マネーフォワードさんのミッション”お金を前に、人生を前に”ということに非常に共感しています。資産状況を可視化して、お金に関心を持ってもらった人の資産運用にスポットライトを当てる感じです。
まとめ
2012年に、エリックリースが Lean Startup を世の中に出してからリーンスタートアップブームが到来しました。プロダクトが未完成の状態でも、できるだけ早くローンチして、ユーザーのフィードバックを受けながら、改善していくというモデルです。
今回取材したお金のデザインのようなFinTechスタートアップが扱う商材は、お金、資産、クレジットカード情報など、非常にセンシティブなものです。1つ間違うと、ユーザーは多大な損害を被ってしまいます。一方でユーザーは、UXや使い勝手が悪いと使ってくれないので、常にユーザーのフィードバックを受けながら改善していく、いわゆるアジャイルでリーンなメソッドが求められます。
一見するとトレードオフな要素を抱えながら、事業を拡大していくのが、1番難しいところです。実現するには、組織運営やマネージメントのノウハウが必要になります。
今後は、FinTechに限らず、不動産テック、Legal(法律)テックなど、さまざまな専門領域がテクノロジーによってディスラプトされていく大きな波がきています。勝ち抜いていくには、高い専門性と、確かなテクノロジー、ユーザーをハマらせるUXが同時求められます。これらを求めながら、拡大していくには、確かな”大人のマネージメント力”が必要になると感じました。
企業プロフィール
https://www.money-design.com/
株式会社お金のデザイン
独自のアルゴリズムに基づき、1人ひとりに最適な資産運用サービスを低コストで提供する、国内最大級のロボアドバイザー* の株式会社お金のデザイン
- UX
- UXとは、ユーザーエクスペリエンス(User Experience)の略で、ユーザーが製品・サービスを通じて得られる体験を意味します。似たような言葉に、UI(ユーザーインターフェイス、User Interface)がありますが、こちらはユーザーと製品・サービスの接触面を指した言葉です。
- BtoC
- BtoCとは、Business to Consumerの略で、企業と消費者間の取引のことを言います。
- BtoC
- BtoCとは、Business to Consumerの略で、企業と消費者間の取引のことを言います。
- UX
- UXとは、ユーザーエクスペリエンス(User Experience)の略で、ユーザーが製品・サービスを通じて得られる体験を意味します。似たような言葉に、UI(ユーザーインターフェイス、User Interface)がありますが、こちらはユーザーと製品・サービスの接触面を指した言葉です。
- UX
- UXとは、ユーザーエクスペリエンス(User Experience)の略で、ユーザーが製品・サービスを通じて得られる体験を意味します。似たような言葉に、UI(ユーザーインターフェイス、User Interface)がありますが、こちらはユーザーと製品・サービスの接触面を指した言葉です。
- セミナー
- セミナーとは、少人数を対象とする講習会のことです。講師からの一方的な説明だけで終わるのではなく、質疑応答が行われるなど講師と受講者のやり取りがある場合が多いようです。
- UX
- UXとは、ユーザーエクスペリエンス(User Experience)の略で、ユーザーが製品・サービスを通じて得られる体験を意味します。似たような言葉に、UI(ユーザーインターフェイス、User Interface)がありますが、こちらはユーザーと製品・サービスの接触面を指した言葉です。
- UX
- UXとは、ユーザーエクスペリエンス(User Experience)の略で、ユーザーが製品・サービスを通じて得られる体験を意味します。似たような言葉に、UI(ユーザーインターフェイス、User Interface)がありますが、こちらはユーザーと製品・サービスの接触面を指した言葉です。
- UI
- UIとは、ユーザーインターフェイス(User Interface)の略で、ユーザー(使い手)とデバイスとのインターフェイス(接点)のことを意味します。
- アプリ
- アプリとは、アプリケーション・ソフトの略で、もとはパソコンの(エクセル・ワード等)作業に必要なソフトウェア全般を指す言葉でした。 スマートフォンの普及により、スマートフォン上に表示されているアイコン(メール・ゲーム・カレンダー等)のことをアプリと呼ぶことが主流になりました。
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