この記事は株式会社デジタルシフト望月修斗様からの寄稿記事となります。

前回は、LINE公式アカウント運用において、友だち追加施策を通じてユーザーとの関係性を考えることと、そのための振り返り方法について紹介しました。

今回は、友だち追加をしてくださったユーザーとの適切な関係値を継続していくことの重要性を紹介します。

目次

  1. ユーザーが「ブロック」する要因はなにか?
  2. ブロックの要因分析
  3. 「LINE User ID 統合分析機能」を利用した、一人当たりの配信数制御施策
  4. ベルーナ様の今後の展望
  5. まとめ
  6. デジタルシフト社が提供するマーケティングツール「TSUNAGARU(ツナガル)」のご紹介

ユーザーが「ブロック」する要因はなにか?

LINEは、月間ユーザー数9,300万人(2022年9月末時点)を有する日本最大級のプラットフォームです。人々の生活に根差した媒体であることから、様々な企業がLINE公式アカウントを活用してユーザーとの接点を構築しています。

しかし、LINE公式アカウントは、多くのSNSとは異なり、友だち追加をしてくださったユーザーに対してコミュニケーションを取ることができるツールです。
各企業は、自社のサービスをもっとユーザーに知ってもらうために、アカウントへの友だち追加を促進しています。

また、コミュニケーション設計においても、ユーザー全員に同じ内容のメッセージを配信するだけではなく、配信内容のパーソナライズ化やセグメント配信などを実施することで、より自社サービスへ関心が高い友だちに対してメッセージを配信することができます

LINEは、このような使い方次第で、企業とユーザーとの関係値を構築することができるプラットフォームと考えられます。
一方で、LINEはボタン一つで簡単にブロックできることから、ユーザー自身がつながりを断ちやすい特徴もあります。

ユーザーにとって使いやすいUI(ユーザーインターフェイス)になっているからこそ、ユーザーに有益な情報を提供せずに、不満やストレスを感じられてしまった場合には、すぐにブロックされる可能性は高まります。

このようなLINEの特徴から、例えば配信の費用対効果を改善するために、反応率が高いユーザーを対象としたセグメント配信を続け、短期的に費用対効果が改善されたとしても、ユーザーに対しては有益な情報提供にならず、結果ブロックにつながってしまい、長期的には見込み顧客を失ってしまう可能性があります。

そのため、ユーザーが有益だと感じられる適切なコミュニケーション構築に向けた、行動データ(配信ログ含む)の分析とデータを用いた施策が重要となります。

LINEでは、ユーザーから許諾を得て、LINEが付与する独自のユーザーID(以下、UID)を用いて抽出した「LINE内のユーザー行動データ」を分析することができます。
次項からは、一人ひとりの行動データから見えてきた配信頻度に対する課題点と、データに基づいて行った解決施策について、事例を基に紹介します。

ブロックの要因分析

ここからは、デジタルシフト社が運用を支援している株式会社ベルーナ様(以下、ベルーナ様)のファッション通販サイト「ベルーナ」のLINE公式アカウントにおいて、アカウントへの関心が高いユーザーのブロック率低下に貢献した事例を紹介します。

1.当時の課題について

ベルーナ様では、これまで売上とROAS(※1)の最大化を目的にLINE公式アカウントを運用されており、その達成のために配信セグメントや配信コンテンツの最適化に取り組まれてきました。

しかし、長期間にわたって運用するなかで、配信の最適化が進んでいるにもかかわらず、これまでのように売上が伸びなくなってきたという課題がありました。

※1 ROAS:広告費に対して、どれだけ売上を得られたかを測る指標。

2.仮説

上記の要因として、1つの仮説を立てました。

それは、「たとえアカウントに関心が高いユーザーでも、必要以上にメッセージが届くと不便や迷惑となり、ユーザーのブロックを誘発し、結果、売上の伸び悩みに影響しているのではないか。」という仮説でした。

3.分析方法

この仮説を検証するために、UIDに紐づいたユーザー行動データを用いて、以下の分析を行いました。

①配信頻度に応じたブロック状況を分析

一人当たりの配信頻度がブロック率に影響を及ぼしているのかを分析するために、現時点(ブロック済みのユーザーはブロック当日時点)での配信頻度ごとにユーザーの数を集計。
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②購買人数と購買回数を分析

ブロックしたユーザーと新規購入したユーザーを対象に、購買人数と購買回数を一定期間で比較し、アカウント内のユーザー層の入れ替わりサイクルを分析。
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4.分析結果

①の分析の結果、一人当たりの配信頻度が多くなるほどにブロック率が高まっていく傾向が判明しました。また、一定の配信頻度からブロック率が急増しはじめる「ブロック閾値と呼ぶべき配信数が存在することもわかりました。

また、②の分析の結果、ベルーナアカウントでは、特に高頻度で購買されるユーザーのブロック率が高く、新たに購買されたユーザーよりも、ブロックしたユーザーの売上の方が大きいという離脱構造も判明しました。

では、この分析結果から今後の改善にどのようにつなげていけばいいのでしょうか?
次項からは、ベルーナ様が実際にどのような施策でブロック率の改善を行われたのかを紹介します。

※2 期間内に新たに購入され、期間終了時点でアカウントをフォローされているユーザーの、総購買回数
※3 期間終了時点でブロックされたユーザーの、総購買回数

「LINE User ID 統合分析機能」を利用した、一人当たりの配信数制御施策

前述の結果から、一人当たりの配信数に「ブロック閾値」が存在することが判明し、高頻度での購買されているユーザーにおけるブロックが、売上の伸び悩みに影響していたことが判明しました。

LINEでは、行動データを基にUIDを抽出することで、ユーザー一人ひとりにあわせた配信リストの作成ができます。

そこで、ベルーナ様では、1か月の間、毎日、配信リストを作成する時点で「ブロック閾値」に近づいているユーザーを除外し、一人当たりの配信数を制御する施策を実施しました。
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その結果、ベルーナ様では昨年に比べて全体の配信数は増加していたにもかかわらず、高頻度で購買されているユーザーのブロック率は低下し、メッセージが届きすぎているユーザーの割合も減少させることに成功しました。

一方で、UIDに基づく行動データ量が膨大であること、行動データの種類が豊富であることから、これらの分析や施策を手動で行うことは非常に困難です。

LINEの行動データとして取得される情報には、友だち追加、メッセージ配信、クリック、などのLINE内におけるユーザーの行動が対象になります。それぞれの行動に応じてデータが溜まっていくため、一日あたり数百万件以上のデータが記録される場合もあり、膨大なデータ量を扱う必要があります。

また、行動データは、すべてUIDに紐づけて管理されていますが、データごとに格納場所が異なっていることがほとんどです。

そのため、多くの企業では分析を行うたびに、施策内容に合わせてそれぞれの格納場所から行動データを取り出して統合する必要がありました。

デジタルシフト社は、企業とつながるLINE運用を支援するマーケティングツール「TSUNAGARU(ツナガル)」で、企業が保有する様々なデータや「LINE内のユーザー行動データ」を統合するサービス「LINE User ID統合分析」を提供しており、これによって課題を解決しました。

「LINE User ID統合分析」では「LINE内のユーザー行動データ」を統合してデータベースに記録することでユーザー別に行動データを分析することができます。
この機能を利用することで、過去の購買データと配信ログを統合した分析と、自動で「ブロック閾値」を超えるユーザーを除外する配信リストの生成が可能になり、本施策を実現しました。

ベルーナ様の今後の展望

今回の施策では、「ブロック閾値」を超えたユーザーを一律で配信リストから除外することで、高頻度で購買されているユーザーのブロック率を改善する試みを行いました。

一方で、「ブロック閾値」を超えていてもブロックせずに、より多くの配信を受け取りたいというユーザーも存在します。

ベルーナ様では、今後一律で配信数の上限を設けて除外するのではなく、ユーザーの関心や興味の度合いによって、最適な配信頻度を模索し、ユーザーと長期的な信頼関係を築いていくことを目標に施策の改善に取り組んでいく予定です。

まとめ

LINE公式アカウント運用において、ユーザーにとっては有益であり、企業からの視点では費用対効果を改善していくためには、ユーザーの関心に沿ったセグメント配信やコンテンツの配信が不可欠です。

一方で、たとえ関心が高いユーザーであっても、極端に配信が集中することで不便やストレスを感じてしまい、結果、ブロックにつながります。

LINE公式アカウント運用では、目先の効率改善だけではなく、適切な頻度でユーザーとコミュニケーションを図ることが、長期的に関係を構築するカギとなるでしょう。

デジタルシフト社が提供するマーケティングツール「TSUNAGARU(ツナガル)」のご紹介

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「TSUNAGARU」は、LINE公式アカウントを開設する企業向けに、デジタルシフト社が提供するマーケティングツールです。ASPサービスにて、Messaging API配信をより高度に活用できます。

IDシンク、メッセージ配信、BOTによる自動応答、AIチャット、バーコード表示、アンケート作成、クリックデータ収集、LINE Beacon管理、MA(マーケティングオートメーション)機能、コールセンターサポートなどの機能、UID統合分析機能などを搭載し、Messaging API配信を導入・実装する上での企業のシステム開発負荷を大幅に軽減。LINEを含めたネット広告領域の効果の最大化、ユーザーのLTV向上を実現いたします。

デジタルシフト社では、企業様へのLINEを活用した統合マーケティング施策のご提案を行っており、企業様のニーズに合わせ提案から改善まで全てサポートいたします。お気軽にお問い合わせください。