AI(人工知能)の開発が進んでおり、スマートフォンの音声アシスタントから金融機関の景気予測、医療の現場など、様々な分野で活用されています。

それらは「特化型人工知能(Narrow AI)」という、特定の分野の知識を学習した人工知能です。人間が与えた知識を蓄積するため、他分野への応用ができないという特徴があります。

一方で、「汎用人工知能(AGI)」という、“知識を応用して自己学習できる”汎用性の高い人工知能が現在開発されています。まだ実現はしていませんが、人間の知能を超えると言われています。あらゆる分野での活用が期待される一方で「人間の仕事を奪う」など、脅威になる可能性もあるでしょう。

今回は、人間の脅威になりえる汎用人工知能の概要について解説します。

いま人工知能ができること

「汎用人工知能(AGI)」の解説を行う前に、現在人工知能ができることを確認しておきましょう。

人工知能は、すでに実務レベルで運用されています。具体的にできることは、文字や画像、音声を認識することです。また、特定の分野において、学習した情報から推測し、仮説を立てて実行することができます。

PCやスマホのようなテクノロジー業界だけでなく医療、金融、芸術といった様々な分野に人工知能が活用されています。しかし、機械学習やディープラーニング技術により「特定の分野の学習」を前提とするため、分野を横断することはできません。

自己学習できる「汎用人工知能(AGI)」とは?

「汎用人工知能(AGI)」とは、既存の人工知能ができない「自己学習」備えた人工知能です。その名の通り「汎用性」があり、あらゆる分野で横断的に知能を活用できます。

人間による学習を必要としない人工知能

人工知能は通常、「パターン認識」という学習を行います。特定の文字情報、画像、音声をパターンとして覚え込ませることで、そのパターンの中から最適な答えを出し、その領域内での学習を深めるという特徴があります。汎用人工知能は、パターン認識から一歩進み、通常の人工知能では予測不可能な事象に対しても対応できるのが特徴です。

大量の情報を学習させる必要はありますが、一定値に達すると自ら学習を行えるようになります。人間が知識を身につけて様々な職業に就くように、あらゆる分野への適用が実現するでしょう。

「特化型人工知能(Narrow AI)」と「汎用人工知能(AGI)」

人工知能は大きく2つに分類できます。それが、「特化型人工知能(Narrow AI)」と「汎用人工知能(AGI)」です。

特化型人工知能とは、既に活用されている主流の人工知能です。IBMのワトソンのような人工知能プラットフォームに対して特定の分野の知識を学習させ、その分野内で活用されます。学習させる人間が“主”、人工知能が“従”の関係になるため、主に「既存業務の効率化」と「人材不足を解消」する役割を担います。

汎用人工知能は、一定の学習こそ必要ですが、特化型人工知能に比べて汎用性が高く、自己学習によって分野を横断した知能の活用ができます。そのため人間が解決するには難しい(あるいは、時間がかかり過ぎる)「新薬開発」や「環境問題の解決」に期待できるでしょう。

2045年に人間の能力を超える?

汎用人工知能は研究途上の技術で、現在実務の活用を目標として研究が進められています。

アメリカの人工知能研究者、レイ・カーツワイル氏は「2045年に人工知能が人間の能力を超えるだろう」と予測しています。2045年は、人工知能のシンギュラリティ(技術的特異点)に達するタイミングと言われており、これにより人間の能力を超えた「汎用人工知能」が実現すると考えられています。

シンギュラリティとは技術の加速度的な進化によって、人間が予想できない技術に達する地点を指します。汎用人工知能技術が自己学習を続けることで、いずれ人間の知能を超えるでしょう。人間の力だけでは解決が難しい問題に、人工知能が活用されるようになります。

参考:
人工知能「2045年問題」 コンピューターは人間超えるか(日本経済新聞)

人工知能と人間の関わり方の変化

あらゆる問題を人工知能で解決

先にも述べたとおり、汎用人工知能が実現することで、人間だけでは解決が難しい問題に取り組むことが可能になります。また、人間のように様々な環境に適用できるため、人間の業務を代替するだけでなく、人工知能自ら働くことが可能になります。人間と協働することで経済成長にも影響を与える可能性もあるでしょう。

人間の仕事を奪う可能性は?

自ら人間と同等もしくはそれ以上の仕事に対応できるようになると聞いて懸念されるのが、「人間の仕事を奪うのではないか」というものです。

汎用人工知能が人間の能力を超えたとしても、人間同様に自律的な仕事をするためには、人間の頭脳の働きの研究と業務に適したハードウェアの開発も平行して行う必要があります。人工知能の発達に合わせてコストや期間がかかるため、あくまで「可能性がある」のが現状です。

人工知能は意思を持てる?

人工知能には「強いAI」「弱いAI」という概念があります。「弱いAI」は人間の知能を補助や代替する人工知能を指し、「強いAI」は人間と同等の知能を持つ人工知能を指します。「強いAI」と「弱いAI」は、「汎用人工知能」と「特化型人工知能」に類似しているかのようですが、「感情」や「意思」という側面が強く、それらと異なる概念として考えられています。

この「強いAI」の実現に伴い、SF映画に登場する人工知能のように「独立した意思や精神、感情」を持たせられる可能性があります。

しかし、現在研究されている人工知能にも「意思」のように感じられる事例もありますが、それは人間による意思のエミュレーションにすぎません。人間がなぜ個々に独立した意思や精神、感情を持つのかという「脳科学」的な視点から研究を行うことで、人工知能に意思を持たせられるかもしれません。

まとめ

「汎用人工知能(AGI)」の実現により、人工知能は人間の知能を超えると言われています。これを、「シンギュラリティ(技術的特異点)」と呼び、2045年に到達するのではないかと予測されています。GoogleやIBM、Appleなど大手IT企業が人工知能へ大規模な予算を使い、研究に取り組んでいることから、予測が現実になることも考えられます。

汎用性人工知能は、様々な分野を応用し、高速で自己学習をすることから、「新薬の開発」や「環境問題の改善」など人間にとっての難題を解決できる可能性があります。その反面、「仕事を奪う」「人工知能を持つ国と持たない国の経済格差」など懸念すべき可能性も挙げられます。

人工知能に対応した「倫理観」「法律」「資格」「権利」の整備や「誤作動」や「セキュリティ」への対策など、課題も多いため社会への適応はまだ未来の話ですが、人間との関係性は大きく変化すると言えるでしょう。