「全体の舵取り」が編集長の役割

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ただ、編集長はコンテンツの面倒だけを見ていればいいわけではありません。さらに、「編集長」と一括りにしても、メディアによって編集長の役割や担当する業務は異なります。鈴木さんの場合は、コンテンツづくり以外にも様々な業務を担当しています。どんな業務を担当しているのかうかがってみると、下記のような内容が出てきました。

・記事の企画や執筆、編集
・ライターの採用や育成、マネジメント
・ソーシャルメディア運用やSEO対策などのチャネル構築
・WebサイトのUI/UXの改善のための企画提案と進行管理
・広告出稿やイベント協賛のための企業営業
・イベント開催等を通じた読者コミュニティづくり
・カスタマーサポートやサイトパトロール業務

鈴木さんは、コンテンツの質を追い求めることに加えて、これだけ多くの業務をどう担当されているんでしょうか。

鈴木さん「ユーザーが増えてきたり、機能を拡充したり、発達ナビというサービスが成長するにつれて、新たな課題やそれに対応するための施策が増えていきます。こうなると、自分1人ではとても全てを見切れないので、各業務ラインごとにリーダーが立っていくことが必要です。サービスができて半年から1年ほどが経つ頃に、次第に自分のマネジメントスタイルも変わっていったように思います。1人ひとりに手取り足取り基準や「答え」を教えていくのではなく、「問い」を投げかけていく。スタッフそれぞれが、サービスの成長に向けて何をすべきか、どう進めていくかを考えて提案して、自ら推進してくれるようなチーム作りを意識しました。細かな実務はその業務ラインを担当する編集者がリードしていき、僕は全体を把握しながら必要な時だけ相談やサポートに入る。そのための会議体やレポートラインも整理していきました」。

様々な業務を担当している鈴木さんですが、その中でも編集長としての大切な役割を次のように語ります。

鈴木さん「『LITALICO発達ナビ』のユーザーに対して、メディアがどのような価値を提供できるのかを考え抜くことが、編集長が担うべき役割です。編集長として「どのようなメディア、どのようなコミュニティをつくっていくのか」の方針を定め、その舵取りをすることが大切な役割だと考えています」。
  

編集長として、人を惹きつけるビジョンを語る力を身に付けたい

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試行錯誤を重ねながら、媒体を成長させてきた鈴木さんは2017年2月に個人として『編集長ことはじめ』という活動を立ち上げます。

「編集長ことはじめ」では、様々なメディアの編集長経験者の寄稿や、メディアづくりのケースやノウハウを学ぶ記事を発信しています。

鈴木さん「手探りの状態で、『LITALICO発達ナビ』の編集長を務めてきました。日々、新たな課題に向き合いながら、こう思ったんです。『ライティングや編集の技術を教える書籍や講座はあるのに、編集長の職能について教えてくれる場所がない』。自身の編集長としての知見を共有することで、これから編集長になる人をサポートしたい。すでに編集長として活躍している人に寄稿してもらうことで、自分自身も編集長として成長したい。そんな想いから『編集長ことはじめ』を立ち上げました」。

メディアによって編集長の役割や仕事が異なるからこそ、編集長同士が知見を共有し、スキルの体系化を目指すことで、新しく編集長になる人の悩みを解消できる。鈴木悠平さんはそんなコミュニティを目指して、情報発信やイベント運営に取り組んでいます。

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「編集長ことはじめ」イベントの様子

鈴木さん「自分1人ではできることに限界があります。掲げたビジョンを実現するためには、仲間を集め、組織をつくることが必要です。そのためには、多くの人に『このメディアに関わりたい』と思ってもらえるような、ビジョンを語る力を身に付けるべきだ、と考えています」。