従来の「ブランド」の概念を覆す、パラダイムシフトが起こっています。

インターネットビジネスが急速に拡大し、安価でクオリティの高いものを好きな時に手に入れられるようになりました。
お店に行かなくとも、Amazonで日用品を買ったりAirclosetで好みの洋服をレンタルしたりできるのです。

今や、同レベルのクオリティのものがより安く手に入るので、ビールはバドワイザーでなくても、シャンプーはビダルサスーンでなくても構わない、という人が増えています。
「名前」よりも、「質」で選ぶ時代がやってきたのです。

Webデザインの世界でも、そうした「ブランドレス」なデザインが増えています。
今回は、「ブランドレス」なデザインがもたらす新しいWebデザインの形を解説していきます。

「ブランドレス」なデザインとは?

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ブランドを感じさせない無印良品のタオル / スクリーンショット:2017年9月

派手にパッケージデザインなどをせず、日用品にシンプルなラベルなどを貼ることで成功している小売業者が増えています。
日本で言えばさまざまな生活雑貨を販売している無印良品や、オーガニック石鹸などを販売しているMARKS&WEBなどが「ブランドレス」なデザインのプロダクトを販売しています。

しかし、こうしたノンブランドなデザインが再度注目を集めるようになったのは、2017年7月11日に、すべての商品を*「3ドル(約330円)均一」*で販売しているサンフランシスコ発のオンラインショッピングサイト「ブランドレス」(Brandless)がローンチしたからです。

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食料品からシャンプーまで品揃えが広いBrandless / スクリーンショット:2017年9月

食料品から清掃用品、化粧水など、さまざまなものを扱っており、商品に大きなロゴのついたシールを貼る代わりに、詳しい商品説明がパッケージに記載されています。

どの商品も高品質な割に3ドルで提供できるのは、いわゆるブランド税をかける必要がないからです。
コカコーラやスターバックスのように大きなロゴで飾ることなく、シンプルなゴシックで彩るデザインは、非常にミニマルで、老若男女問わず非常に人気です。

「名前」より「質」、「ブランド」よりも「コンテンツ」

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画像引用元:stock.io

消費者が「名前」よりも「質」で選ぶようになってきたところで、プライベートブランドを展開する流れは加速してきています。

Business Insiderによれば、オンラインショッピング大手のAmazonではAmazonBasicsの電池商品だけで、オンライン・バッテリー市場の約90%を占めているといいます。
電池を探しているカスタマーが検索経由で電池を購入していることもありますが、AmazonBasicブランドの商品は毎日のようにタイムセールに投入されており、*「ついで買い」*を狙っていることは明らかです。
競合ブランドよりも価格が安く設定されており、消費者目線で見ても品質の違いはなさそうなので、多くのカスタマーがAmazonBasicsの電池を選ぶのです。

大手食料品スーパーでもこうしたプライベートブランドで食料品シェアを拡大している動きが目立ちます。

Bloomberg Businessweekによると、アメリカ大手の食料品スーパーであるトレーダー・ジョーズ(Trader Joe’s)では、実に8割もの商品が自社ブランドだといいます。
日本でも、米ウォルマート傘下の西友がプライベートブランド*「みなまさのお墨付き」*を展開しており、他社ブランドとほぼ同品質の商品をより低い価格で提供し、購買につなげています。

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あえてノーブランド商法を前面に出す西友 / スクリーンショット:2017年9月

こうしたほぼ同価格・同品質の土俵において、インターネット上でもブランドよりもコンテンツ勝負で競争が加速しています。

例えば、NetflixやAmazon Primeビデオのようなオンデマンド動画配信サービスは、独自コンテンツの配信を進めています。
日本向けには、Netflixがお笑い芸人ジミー大西氏のサクセスストーリーをまとめたドキュメンタリー「JIMMY: THE TRUE STORY OF A TRUE IDIOT」(邦題:JIMMY〜アホみたいなホンマの話)を配信したり、Amazon Primeビデオが松本人志氏プロデュースの「ドキュメンタル」を配信したりと、特色のあるコンテンツを打ち出しています。
どちらの番組も吉本クリエイティブエージェンシーの制作ですが、各プロバイダーがコンテンツを独占することで、サービスの付加価値が上がっています。

「ブランドレス」によってWebデザインはどう変わるか?

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画像引用元:stock.io

これまでデザイナーに2週間以上もかけて発注していたWebデザインプロセスは、これからはそれほど時間やコストを割かなくてもよくなってくるかもしれません。

AIがホームページ作成やロゴデザイン作成までしてくれるようになったので、ブランド名やデザインよりもオリジナルコンテンツをいかに発信し続けられるか、に土俵が移ってきているのです。

参考:
AIがデザインする時代が到来!デザイナーはこれから何をデザインすればいい?

そうした中で、過度な着色などをせずに、テキストや写真が映える、白地にグレースケールの「ブランドレス」なWebデザインが増えてきています。

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C6 / スクリーンショット:2017年9月

例えば、デジタルノマド世代のバックパックを販売しているC6Webサイトでは、右上に小さなロゴを載せていながらも、ブランドよりもプロダクトの写真に注目が集まるようなシンプルなデザインになっています。
ブロークングリッドレイアウトを取り入れており、視線がサイト内を泳ぐようにして移動させていくのも特徴的です。

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Franklins Weekly / スクリーンショット:2017年9月

毎週金曜日に4つのHipHopソングを提案してくれるFranklins Weeklyも、ロゴが特徴的ながらも、着色をせず、テキストまわりはシンプルにして、写真に注目が集まるようなデザインになっています。

2016年はヒーローヘッダーを用いた華美でインタラクティブなデザインが多かったものですが、その対極としてのミニマルでコンテンツ訴求力のあるWebサイトが増えています。

「ブランドレス」時代にコンテンツ訴求力を高める3つのポイント

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画像引用元:stock.io

2017年下半期以降、Webデザインに極端に長い時間をかけるよりも、オリジナルコンテンツの作成に時間を割いたほうが注目度を集めることができるかもしれません。
これは、個人のブログサイトに限らず、企業のコーポレートサイトでも同じです。

インターネットでは、「ブランドレス」なフィールドでオリジナルコンテンツを生み出す場合には、次の3つの要素を押さえておくとよいでしょう。

1. ブランドやデザインよりも内容に没入できるレイアウトを採用する

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マテリアルデザインもある種のブランドレスと見て取れる / スクリーンショット:2017年9月

Webデザイントレンドとしてフラットデザインが流行していたときには、当時としてはシンプルで画期的なデザインスタイルだと誰もが思ったはずでしょう。
しかし、今振り返ってみると、デザインに凝り固まりすぎて内容のないサイトも多かったのではないでしょうか。

「ブランドレス」なデザインには、単に「ミニマル」なデザインが目的なのではなく、コンテンツに没頭できるようになっています。
デザインをシンプルにするだけ、という単純な話では、実はないのです。
画像やテキストに視線が追いかけるようにして流れていく、そのようなレイアウトが今後増えていくでしょう。

2. メディアを組み合わせて自分だけの価値を発信する

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ブランドの統一感よりオリジナルコンテンツが並ぶYouTube / スクリーンショット:2017年9月

オリジナルコンテンツが重視される時代ですが、一口にオリジナルコンテンツと言ってもさまざまです。

例えばテキストを主体としているブログメディアのようなものもあれば、Instagramのように写真のオリジナリティで売っていく場合や、YouTubeのように動画に独自性を求める場合もあります。
自分のホームページであれば、こうしたメディアを組み合わせて構築することもできます。

「ブランドレス」なデザインでは、生のコンテンツに注目が集まります。
それぞれのメディアのよさを活かして、今考えていることや表現したいことをダイレクトに発信していきましょう。

3. オリジナリティ路線で首尾一貫性を保つ

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Instagramでは一貫したコンテンツ路線のアカウントが人気 / スクリーンショット:2017年9月

生身のコンテンツが勝負になってくるということは、単にコンテンツを量産するだけではなく、独自の切り口でコンテンツを生み出す力が試されます。

Instagramでは、一貫したオリジナリティを持ったアカウントが人気です。
猫のぷーをまとめたInstagramアカウントはすべての投稿がマンチカン猫のぷーが主人公になっていたりなど、分かりやすいコンテンツで首尾一貫性を保っています。

ユーザーは、ある程度コンテンツが見やすいデザインであれば、デザイナーが思っているほどデザインを気にしていないかもしれません。
一貫したテーマで発信を続けることが、Webマーケティングにおいても有効な手段であり、重要なことだと言えます。

まとめ

Webデザイン界はすでに成熟しきっており、同じようなWebデザインのホームページは山のようにあります。
そうした中で、あえてデザインによる主張を極端に控え、コンテンツを主役にしていくような「ブランドレス」なデザインは、今後も増えてくることが予想されます。

Web担当者の方は、ぜひこうした「ブランドレス」なトレンドを意識してみてはいかがでしょうか。
オリジナルなコンテンツが増えれば増えるほど、より多くの人に訴求することができるでしょう。