マーケティングを考える上で、顧客の行動に着目することは重要です。

「好きな芸能人がTwitterで紹介していたから欲しくなった」
「週末限定で半額になっていた商品があったので思わず買ってしまった」

誰でも一度は、こうした経験があるでしょう。
この行動は、本人にとっては合理的でも、客観的にみると非合理的であることも少なくありません。なぜ人は非合理的な行動を取ってしまうのか、この原理は、「行動経済学」で説明できます。

行動経済学を理解することで、マーケティングにも活用できます。
今回は、マーケティングを考える上で知っておきたい、行動経済学用語をご紹介します。

【1】損失回避

「損失回避」とは、人は「得をしたい」という気持ちより「損をしたくない」という気持ちの方が強い傾向があることを指す言葉です。利益を得ることより、損失を生むことのほうがリスクだと考えるのです。

例えば、「必ず10,000円がもらえる」か「50%の確率で20,000円がもらえる」のどちらかを選択できるとします。この場合、期待値は同じはずですが、多くの人が前者を選択します。また、新しい店に行きたいと思いながら、いつも同じ店で食事をしてしまうこともこれに当てはまります。

【事例】
特売セールの翌日は、売上がセール前日より下がってしまう。
(価格が「もとに戻った」のではなく「セールより上がってしまった」と考えてしまう)

【2】ハロー効果

「ハロー効果」とは、ある対象を評価するときに、その評価とは全く関係のない特徴や印象に引っ張られて、評価が上下してしまう現象を指します。別名で「認知バイアス」とも呼ばれます。

「高学歴な人は頭がいい」「テレビCMで良く見る商品は質がいい」といったイメージは、必ずしもその通りであるとはいえません。ハロー効果にはポジティブなものとネガティブなものがありますが、マーケティングで活用する際はポジティブに作用するよう工夫してみましょう。もちろん、誇大表現になってしまわないように気をつけます。

参考:
ハロー効果とは〜あらゆる行動に影響のある心理効果を理解しよう|ferret[フェレット]

【事例】
女子高生をターゲットにした商品のCMに、女子高生に人気のモデルを起用する。
(人気モデルのポジティブなイメージを商品に影響させる)

【3】バンドワゴン効果

「バンドワゴン効果」とは、大勢の人から評価されている物事に、自分も好印象を抱いてしまう現象を指します。バンドワゴンとは、パレードの先頭を走る楽隊車を意味します。

「人気No.1」「定番商品」と書いてある商品が気になったり、飲食店に行列ができていると「あの店は美味しいんだろう」と評価が上がったりしたことはありませんか?「大勢の人の評価が高いものはいいものに違いない」という安心感が根底にあります。

参考:
人気商品が欲しくなるのはなぜ?「バンドワゴン効果」を理解して自社商品を上手にアピールしよう|ferret[フェレット]

【事例】
SNSマーケティングで、多くの一般消費者にサービスを拡散してもらう。
(「みんな使っているから」という安心感で商品への評価が上がる)

【4】フレーミング効果

「フレーミング効果」とは、同じ物事なのに、表現方法によって受け取り手の印象が大きく変わる効果を指します。人は表面的な表現方法に影響され、合理的な判断ができなくなる場合があります。

表現がポジティブなときとネガティブなときでは、同じことを表していても前者の方が好印象に見えます。この効果は、キャッチコピーや営業トークなどで活用されます。

【事例】
「月額6,000円」を「1日あたり200円」と表記する。
(見える金額を安く表現することでお得な印象を与える)

【5】希少性の原理

「希少性の原理」とは、数が少なかったり、期間が限定されていたりするものに高い価値を感じることを指します。「今すぐ決断しなければ失ってしまうもの」に弱く、考える時間を持たずに行動してしまう傾向があります。

その他にも、「会員限定」「初回限定盤」など、リピーターに優越感をもたせるような施策も、購入意欲を高める要素となりえます。

【事例】
期間限定で季節の果物を使った商品を販売する。
(限定品で消費者の焦燥感と購買意欲を高める)

【6】選択肢過多

「選択肢過多」とは、選択肢が多すぎて選択すること自体が困難になり、購買意欲が減少してしまうことを指します。選択肢が多いと、それだけ顧客にとって好みの選択ができるように思いがちですが、かえって逆効果にならないよう注意が必要です。

特に、選択肢の種類が似通っており、どれを選んでも大差ない場合は、顧客の判断軸が曖昧になってしまい、選択する意思が弱くなってしまいます。

【事例】
新商品のラインナップは5〜9種類に設定する。
(コロンビア大学の社会学者シーナ・アイエンガ―教授によると±7の選択肢が好ましい)

参考:
[選択の科学|シーナ・アイエンガー|2010年]

【7】アンカリング効果

「アンカリング効果」とは、最初に提示された数字や印象が「アンカー(船のいかり・ここでは基準点という意味)」となって強く残り、その後の印象や行動に影響を及ぼす効果を指します。

例えば、まだ世の中に知られていないサービスAが「10,000円」で販売されたとします。その半年後、類似したサービスが「5,000円」で販売されたら、「安い」と思う方が大半でしょう。しかしそれは、サービスAの価格が基準点となって判断しているだけで、サービスへの客観的な判断だとは限りません。

【事例】
飲食店のドリンクメニューを価格が高い順に載せる。
(最初に高い価格を目にすると、下の価格が安く見え頼みやすくなる)

まとめ

行動経済学は、人の感情と考え方に基づく行動的特徴を理解できる、面白い学問です。
マーケティング用語が難しくて途方にくれている方も、この学問から入ると楽しく学習できるかもしれません。

現在マーケティングに関わっている方は、自社の置かれている環境や展開したいサービスに当てはめてみて、戦略が机上の空論になってしまっていないか振り返ってみましょう。