部下をもつと、日々の業務や面談で話す機会が多くなります。話が合う部下もいれば、中には思ったように心を開いてくれない部下もいることでしょう。
そんなとき、「教えているのに、なぜ理解できないんだ」と、歯がゆい気持ちになる方もいらっしゃるかもしれません。

しかしその原因は相手ではなく、自分自身にある可能性もあります。良好な関係を築くためには、傾聴のスキルを身につけることが大切です。

相手の立場を尊重して話を聞き、自分の価値観の枠組みを外して受容する技法を「アクティブリスニング」といいます。心を開くコミュニケーション法として、企業内研修などで取り上げられることもあります。

今回は、アクティブリスニングについて解説します。

アクティブリスニングとは

カウンセリングから生まれた技法

アクティブリスニングは、1957年にアメリカの臨床心理学者カール・ロジャースが提唱したリスニング技法です。日本語では、「積極的傾聴」と訳します。

カールは、これまで面談者への一方的なアドバイスが中心であったカウンセリングに、面談者の話を傾聴することで、本人の自己解決を促す手法を最初に取り入れました。アクティブリスニングには、カールの人に対する肯定的な捉え方が反映されています。

自分の価値観の枠組みを外し、相手の立場で共感する

アクティブリスニングには、「自己一致」「肯定的配慮」「共感的理解」の3つの原則があります。

自己一致

話を聞く側が、自分自身の考え方や感情を把握できており、揺るがない姿勢でその場に臨んでいることです。相手と同じ1人の人間として、何かを隠したりせず、等身大で向き合える心構えをもつことが大切です。

肯定的配慮

この「肯定」は、相手の考え方や意見に全て賛成しなければならないという意味ではありません。相手も含め、一人ひとりが違う考え方や価値観をもっていることを認め、尊重する姿勢を指します。

共感的理解

相手の見方や考え方を聞き、相手の立場から見たり、考えたりしようと心がけることです。ただ、相手の感情に流されすぎないように気をつけます。あくまで「相手」として共感し、自分は「自分」として捉えます。

これら3つの原則は、アクティブリスニングの基本的な姿勢ともいえます。
社内のコミュニケーションでも同じで、「教えてやろう」「正してやろう」という態度は相手の心を閉ざしてしまいかねません。

役職や立場は関係なく、相手と同じ立場で傾聴する姿勢を心がけましょう。

バーバル・コミュニケーションとノンバーバル・コミュニケーション

アクティブリスニング実践のコツは、「バーバル・コミュニケーション(言語コミュニケーション)」と「ノンバーバル・コミュニケーション(非言語コミュニケーション)」に分けることができます。

バーバル・コミュニケーション(言語コミュニケーション)

バーバル・コミュニケーションは、会話や文字などの言語をつかったコミュニケーションのことです。

ノンバーバル・コミュニケーション(非言語コミュニケーション)

ノンバーバル・コミュニケーションは、態度や表情などの言語以外でのコミュニケーションのことです。

今回はこの2つのコミュニケーション方法に分けて、アクティブリスニングのコツをご紹介します。

バーバル・コミュニケーション(言語コミュニケーション)

相づち

相手の話を聞いているときは、うなずきや相づちをすることで、しっかり話を聞いていることを伝えます。色々なパターン(「そうなんですね」「うんうん」「なるほど」等)を使い分けるよう工夫するとよいでしょう。

繰り返し

相手の発した言葉をそのまま繰り返します。相手の言葉を確認する意図も含まれますが、同じ言葉を反復することで「ちゃんと聞いてくれている」と安心させることができます。
ただ、何度もやると逆に悪い印象を与えかねないのでバランスを取る必要があります。

確認

相手の発した言葉を自分なりに要約し、「〇〇ということですね?」など、お互いの認識がすれ違っていないか確認します。相手の曖昧な言葉を具体的に言い換えることで、問題点や重要なポイントを明確にすることもできます。

共感

「それは辛かったですね」など、相手の感情に寄り添う言葉を返します。相手と同じ気持ちを共有していると表現することで、より話を進めやすい雰囲気を醸成します。

質問

相手の話で分からないところがあった場合は、一歩踏み込んで質問します。相手が話を広げられるよう、「はい」「いいえ」で答えるクローズド・クエスチョンではなく、オープンクエスチョンで問いかけます。