2015年12月から義務化された企業のストレスチェック制度を始め、「メンタルヘルス」への対策が重視されています。それに伴い、自社で従業員のメンタルケアに取り組む人事担当者もいるのではないでしょうか。

ストレスチェックの義務化は新しい試みであるため、それ以外の取り組みとして何を行えば良いのかわからないということもあるはずです。まず、「なぜ取り組むのか」という目的を明らかにすることで、実施内容を策定する上での参考になるでしょう。

産業医や第三者機関による従業員支援サービスなど企業が活用できる方法は多岐にわたります。

今回、メンタルヘルスの基礎知識を解説します。また、企業が取り組む方法についてあわせて紹介します。

そもそも「メンタルヘルス」とは

メンタルヘルスとは、心の病気という文脈で取り上げられることがあるため、ネガティブな印象を持つことがあるでしょう。しかし、本来の意味としては「心(精神面)の健康状態」を意味します。

人間関係や生活環境によるストレスがメンタルヘルスの不調を招くと言われています。メンタルヘルスの不調は、鬱病や睡眠障害、摂食障害、パニック障害など様々な心の病気を引き起こす原因になっています。

企業におけるメンタルヘルスの不調は、従業員の休職や離職、社内環境の悪化を招く可能性があります。そのため、企業によるメンタルヘルスケアへの取り組みの重要性が高まっています。

参考:
第1回 メンタルヘルスってなんだろう?:うさぎ商事の休憩室〜みんなで知りたいメンタルヘルス~|こころの耳:働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト

メンタルヘルスのケアの重要性

厚生労働省が2014年に発表した「職場におけるメンタルヘルス対策の推進について」を参照すると、平成25年の自殺者の中で原因や動機の特定が行えた20,256人の内、2,323人(11.5%)が「勤務問題」が原因です。

勤務問題を原因とした心身の不調による死は、「過労死」として認定されることがあり、社会的な問題とされています。

また、先に紹介したように2015年12月から厚生労働省による「ストレスチェックの義務化」が行われています。ストレスチェックとは、従業員人数50人以上の企業すべてが行う「ストレス状態の検査」です。

近年の勤務問題による自殺者の割合や、厚生労働省のストレスチェックの義務化からもわかるように、企業が従業員へ行うメンタルヘルスのケアは非常に重要な取り組みと言えるでしょう。

参考:
職場におけるメンタルヘルス対策の推進について|厚生労働省
ストレ スチェック制度導入マニュアル(PDF)|厚生労働省

メンタルヘルス不調の3段階の予防

メンタルヘルスの状況に応じたケアを適切に行うための枠組みとして、大きくわけて3つの予防方法があります。

一次予防「健康の維持・増進」

一次予防は、健康な人を対象としており、ストレスを生み出さない環境作りなどを行うことで、健康状態の維持や増進を図ることを目的としています。

社内のマネジメント方法や、就労環境、人間関係などストレスになり得る要因を解決していく取り組みが必要です。社内のマネージャー層向けのケア方法の研修などを行うのも良いでしょう。

二次予防「早期発見・早期治療による重症化防止」

二次予防は、鬱病など精神疾患の疑いもしくは可能性のある従業員に対して、早期発見や早期治療によって重症化を防ぐことを目的としています。

従業員向けのメンタルヘルスに関わる社内研修や、ストレスチェック制度の活用、産業医との連携などを行うことで、従業員自身が不調に気づける環境作りが必要です。

三次予防「合併症の防止・再発防止・機能低下防止」

三次予防は、精神疾患を発症している従業員に対して、合併症や再発、機能低下の防止を目的としています。

鬱病など精神疾患を発症し、休職している従業員へのケアやフォローを行うことで、合併症等の発生を防ぐことが必要です。また、復職した従業員に対して、再発を防ぐための環境作りなども三次予防に該当するでしょう。

参考:
職場のメンタルヘルス対策~段階的予防の観点から~(PDF)