米・マルケトCEOが提唱する「エンゲージメントエコノミー」とは?

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ストーリーを伝えるといっても、情報をただ発信すれば良いわけではありません。適切な場所、適切なタイミングでユーザーに伝えることが大切なのです。ユーザーの数が数百万、数千万という規模でも、その中の個々人に対して何らかの関連性のあるストーリーを伝えることです。

例えば、何かのきっかけに登録したメールマガジンなど、すでに関心が無いにもかかわらず届き続けるメールがあります。そんな、“受け取りたくないメール”を削除したことがあるのではないでしょうか。

それはなぜか。単純に“私”にとって関連性の無い情報だからです。

アメリカの大手デジタル・エージェンシーであるワンダーマンが実施した消費者調査によると、米国の約79%の消費者が「自分のことを理解し、気にかけてくれるブランドだけを検討する」と答えたのです。

つまり、先ほどお話したように「パーソナライズ」が消費者から行動を引き出すのです。これを、私は「エンゲージメントエコノミー」と呼んでいます。

仮に、一括送信のメールマーケティングを行って1度に2,000万というインプレッションを得たとします。しかし、その中で1,300万のユーザーが購読解除をするかもしれません。もちろん、多くのユーザーにリーチすることは素晴らしいことですが、これは真実ではありません。

大切なのは、量ではなく価値です。膨大なインプレッション数よりも、エンゲージメントを発生させる価値を重視しましょう。

情報量が増えても、消費者の関心のスパンは短縮している

マーケティングツールを活用することで、消費者に対して自社の商品を無限にアピールできるようになりました。1億3,000万人の日本国民に対して一斉送信することも可能です。メールマガジンやプッシュ通知を利用すれば、誰でも一括送信できます。

しかし、この一括送信は、ブランドの価値を「支援」するのか、はたまた「毀損」するのか……消費者に向けて単純に情報を送りつけることは正しいことなのでしょうか。

消費者は無限に溢れる情報をコントロールしなければなりません。そのため、いくら関心を引こうとしても、消費者の関心のスパンは短縮しているのです。ユーザーは膨大な情報から取捨選択をするため、今関心があっても数分後には無関心になることもあるでしょう。

その人にとって価値のあるものを常に提供し、エンゲージメントしなければ顧客はいなくなってしまいます。いずれ、避けられてしまうでしょう。

マーケティングには「ファネル」という消費者の行動段階を示した図があります。認知から購入というプロセスの中でユーザーの数はどんどん絞られていき、最後に残ったユーザーが購入に至るというものです。定番のプロセスですが、効果があまりないと思っています。

ユーザーの関心は認知から購買まで直線的ではないからです。現代の人々はたくさんの情報に触れているため、購買までのプロセスが複雑化しています。

自分たちのファネルを強制するのではなく、ユーザーの関心や行動を理解することを考えましょう。

エンゲージメントエコノミーでは、バイヤージャーニー(消費者の購買プロセス)の全ての段階でユーザーとエンゲージメントしなければなりません。マーケティングを行う」のではなく「ユーザーとエンゲージメントする」ことが大切です。