UXデザインという言葉が定着して久しいですが、このUXデザインにおいて欠かすことのできない工程が**「ユーザーインタビュー」**です。

デザイナーによって表現したいものを一方的に作り上げるだけでは*「独善的」なデザインになってしまいます。UXデザインでは実際に使っているユーザーを主役として「どのような設計にしたら心地よいか」*を考えていくため、ユーザーから直接的に意見を聞き出すユーザーインタビューは非常に大切なプロセスとなります。

そこで今回は、ユーザーインタビューを行う際に気を付けたい4つのポイントを、ユーザーインタビューの概要とともに紐解いていきます。

すでに、UXデザインに興味がある方はもちろん、まだユーザーインタビューをしたことがない方、すでに実施しているけれども上手くいかないという方も、ぜひご一読ください。
  

ユーザーインタビューとは

interview.jpeg
画像引用元:pexels.com

デザイン設計について馴染みのない方にとって、UXデザインという言葉は抽象的で理解が難しいものかもしれません。しかし、当前のように聞こえるかもしれませんが、よく考えてみるとUXとは*User Experience(ユーザー体験)*を略したものであって、ユーザーがどのように感じるのかを調査して、改善し、結果的にユーザーが必要としているものを作ることが "より良いUXデザイン" につながっていきます。

それでは一体、どうすればその人が必要としているものがわかるのでしょうか。

この場合、1番重要なのはユーザーを理解することです。そのためにも、まずは実際にユーザー(ターゲット)に会って話をして、その人のことを知ることが大切になります。こうしたユーザーへの調査のことを広く*ユーザーリサーチ(User Research)*と言います。

ユーザーリサーチは、観察して定性的な調査を行う「エスノグラフィ(Ethnography)」、検証を行う「アイトラッキングテスト」「プロトタイプテスト」、決まった項目に基づいて定量的に調査する「アンケート」「データマイニング」、「ユーザーの実際のログ分析」など、様々な手法が存在します。中でも、比較的短時間で、ユーザーから共感や具体的な情報が掘り起こせる**ユーザーインタビュー(User Interview)**は、UXデザインを行う上で必須のリサーチ手法と言えます。

ユーザーインタビューは対象を設定した後、対象者のリクルーティングを行うのは難しいですが、人が集まりさえすれば、あとは直接対話を行って話を引き出していくだけです。リクルーティングは、直接機縁的に対象者を探す方法やリサーチ会社にリクルーティングをお願いする方法、またはオンラインで完結させてしまう方法などがあります。具体的な対象人数についてはサービスにもよるかもしれませんが、概ね各回5〜10人程度をリサーチ対象にするとよいでしょう。
  

ユーザーインタビューを行う際に気を付けたい4つのポイント

1. ラポールを形成する

t_copy.jpg
画像引用元:pexels.com

「ラポール」はフランス語で「橋をかける」という意味で、心理学用語で「親密な関係」「信頼関係」などと解される言葉です。

ユーザーインタビューを行う際に、具体的な質問を行う前にラポールを築くことができるかどうかが極めて重要になります。ラポールが築けていないまま本題に入ってしまうと、相手の返答が表層的になったり、本音を引き出すことができなくなったりしてしまいます。

一方、ラポールをしっかりと築くことができれば、インタビュイー(インタビューを受ける方)の肩の力も抜け、フランクで話しやすい雰囲気になるため、こちらがことさらに質問を誘導しなくとも、欲しいアイデアを自然と話してくれるようになります。

心理学のテクニックが書かれている本には、相手の仕草や姿勢を真似る*「ミラーリング」や相手の話し方やリズムを合わせる「ペーシング」*などのテクニックが掲載されていますが、こうしたテクニックを駆使する必要はありません。むしろ、重要なことは、適切なタイミングで質問し、傾聴し、共感することです。人間的な雰囲気が出て打ち解けた雰囲気になれば、ラポールがしっかりと築かれたと思っていいでしょう。
  

2. 質問を抽象的に言い換える

meet.jpg
画像引用元:pexels.com

ユーザーインタビューの準備として、質問項目を100個も200個も並べた質問集を用意してしまうことがあります。

確かに事前準備として質問を考えておくのは非常に重要ではありますが、質問を一問一答的にしてしまうと、表面的な返答ばかりが返ってきて、かえってあまり参考にならない場合もあります。

質問が限定的になり過ぎてしまうと、相手の思考や返答内容も質問に呼応する形で限定的になってしまいます。本来であれば、そのダイレクトな回答の周りにあるはずの重要な情報が見逃され、得られる情報が断片的になってしまうのです。これを避ける方法として試してみてもらいたいのが、事前に洗い出した問いを抽象的に言い換えてみることです。

「5W」(What・When・Where・Who・Why)を意識し過ぎると回答が限定的になる恐れがあるので、もう少し自由に回答ができる枠組みを提供して、得た回答から深掘りをしていきます。

それでは、下記2つのインタビュー例をご覧ください。

「ニュースアプリを開く時に一番先にチェックするところはどこですか?」

「ニュースアプリを開く時のことを教えてください」

お気付きでしょうか。上の質問よりも下の質問内容のほうが、インタビュイーがより自由に回答することができる内容なのです。

このように、インタビュアーは回答者が答えやすいように、なるべく回答範囲を広めに取っていくことが重要です。
  

3. 意見よりも具体的経験を掘り出す

k.jpg
画像引用元:pexels.com

ユーザーインタビューでよくあるケースとして、自分たちのアイデアについて一方的に語ってしまうことがあります。

例えば、下記のような質問の仕方をしてしまう場合がよくあるものです。

「今、我々は新しいニュースアプリを開発していまして、このような機能を考えているのですが、どうお考えですか?」

こうした質問をしてしまう場合、ユーザーインタビューの目的を忘れてしまっている可能性があります。

ユーザーインタビューの本来の目的は、ユーザーを知り、理解することです。しかし、インタビュアーの方(インタビューを行う方)が多くを語ってしまうと、本来意図したユーザーの意見を聞き出す時間が少なくなってしまいます。また、ユーザー自身もまだ使っていない機能に対して主観的になってしまい、さらには自分自身の発言にバイアスがかかってしまいます。

万が一、ユーザーの意見を引き出したい場合には、なるべく言葉ではなくプロトタイプを持ち込んで、実際に触ってみてもらうようにしましょう。その場合にも、プロトタイプに触れることでインタビューで行われていた会話のキャッチボールが一旦途切れることになるので、ユーザーインタビューの後半のパートに持って来るのがオススメです。
  

4.「なぜ」を避ける

tahttps://ferret.akamaized.net/images/5a1e50ff7f58a86bb0000093/original.jpg?1511936247
画像引用元:pexels.com

「なぜ、ユーザー画像をこの画像にしたのですか?」

ユーザーインタビューでは、こうした質問がよくされます。

インタビュアーが一番知りたいのは「なぜその行動をとるのか」ということだと思いますが、この「なぜ」と聞き過ぎるのはユーザーに負担をかけることになるので、考え直したほうがいいでしょう。

インタビュー現場では、「なぜ」を5回以上聞くようなラダリング法を使って、理由を深掘りすることがあります。ところが、直接「なぜ」と尋ねてしまうと、相手に強制的な論理説明を強いることになります。実際に、人間の行動の90%以上が無意識的に行われていると言われているように、全ての行動に対して論理的に回答できるわけではありません。

また、「なぜ」と聞き過ぎると、相手を非難しているような印象を与えてしまいます。「なぜ」を繰り返し使ってしまうと、ラポール関係が崩れてしまうという心理学的研究もあります。

ユーザーインタビューでは、本質的な「なぜ」はあくまでこちら側で分析を行い、インタビューではユーザーの**「具体的状況」「行動そのもの」**を引き出すのに徹するのがよいでしょう。