毎年1月に行われる、アメリカ・ラスベガスの世界最大のテクノロジーショー*「CES」*では、さまざまな分野での最先端テクノロジーが展示されます。

その中でも一際視線を集めるのが、妊娠から育成までの広範囲に渡る、赤ちゃんをテクノロジーの力で守る**「ベビーテック」*と呼ばれる分野です。2018年にはCESで3回目となる「ベビーテックアワード」*が開催され、専用エリアが設けられるところを見ると、いかに人々が「ベビーテック」に期待を寄せているかが分かります。

今回は、2018年のCESで行われたファイナリストを中心に、赤ちゃんを守る「ベビーテック」注目のテクノロジーをご紹介します。

「ベビーテック」とは?

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Stock.io

**ベビーテック(BabyTech)*とは、赤ちゃんを表す「ベビー」と技術を表す「テック」を掛け合わせた造語で、主に妊娠から子育てまでに起こる課題を解決するアプリやIoTデバイス*などを指します。

あまり大々的に広告が打たれている訳ではありませんが、実はベビーテック関連の市場規模は年々増加しています。TechCrunchによれば、TechCrunchが集めている企業情報データベースであるChrunchBaseの統計から、過去2年間の乳児および幼児を中心としたビジネスモデルを持つスタートアップは、2億6000ドル以上の資金をシードプログラムやベンチャー投資家から集めることに成功しています。

内閣府によれば、日本の出生数は、1984年には150万人を割り込み、1991年以降は増加と減少を繰り返しながらも、緩やかな減少傾向となっています。全国的に見ると労働人口の多い東京都の合計特殊出生率は全国平均の1.45を大きく下回る1.24で最低となっており、ワークライフバランスや赤ちゃんを育てる環境を整備することが重要だと言われています。

ベビーテックは、こうした問題を解決する一助になるでしょう。デジタルネイティブである若い世代に馴染みの多いテクノロジーを、出生や子育てに関わる問題解決に活用することで、赤ちゃんを産みやすい、育てやすい環境を作り出すことができると、多くの人が期待を寄せています。

それでは、ベビーテックの注目のテクノロジーを5つご紹介しましょう。

赤ちゃんをテクノロジーの力で守る注目の「ベビーテック」5選

1. 貼るだけのウェアラブル体温計「TempTraq」

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TempTraqは貼るだけで24時間赤ちゃんの体温を監視することができる、パッチ型のウェアラブル体温計です。単にリアルタイムで赤ちゃんの体温を監視できるだけでなく、体温を記録して過去の体温と比較することができます。

スイッチを入れ、脇の下にペタッと貼り付けるだけで準備が完了するという簡単さには、特に注目をすべきです。赤ちゃんのゆりかごの隣の部屋で食事を取っていても、両親の代わりにしっかりと監視をしてくれます。デバイスは薄く、軽く、柔らかく、フレキシブルなので、ほとんど着けている心地もないので、赤ちゃんが嫌がることもほとんどないでしょう。

発熱などの異常を発した時には、アラームで通知を送ることもできます。また、デバイスを2個以上用意すれば、複数の赤ちゃんの監視も可能です。かかりつけの医師に見せるためにデータをエクスポートすることもできます。iOSAndroidに対応しています。

2. 誰でも適量のミルクをあげられるスマート哺乳瓶「BlueSmart mia」

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BlueSmart miaは、トラッキング機能や分析機能などが付いているスマート哺乳瓶です。Wi-Fi機能を使ってスマートフォンと通信を行います。

ミルクを与える際にしばしば問題に上がるのは、誰がどれくらいのミルクを赤ちゃんに上げるかということです。例えば、お母さんとお父さんでミルクをあげる量や回数が変わってしまう、ということも考えられます。同様に、実家でお婆さんやお爺さんがミルクを与える際には、どれくらいミルクをあげればいいかが分からない、ということもあるでしょう。

その問題を解決してくれるのが、BlueSmart miaです。誰がボトルを持っているのかに関わらず丁度良い頃合いで、丁度良い分量でミルクを与えることが可能になります。また、ミルクの温度や与えた量などをリアルタイムでトラッキングしており、アプリを入れておけばインターネット経由で状況をシェアできるため、お母さんやお父さんが仕事に出かけている場合にも便利です。

3. IoTチャイルドシート「Cybex Sirona M」

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Cybex Sirona Mは、スマートフォンと同期することのできる取り付け型のIoTチャイルドシートデバイスです。SensorSafe 2.0と呼ばれる特別なセンサーを内蔵し、アプリと連携することで緊急時にスマートフォンで知らせてくれます。

例えば、一時的に自動車を駐車してすぐに戻ろうと思った時にも、車内の赤ちゃんが意図的ではないにせよ誤ってシートベルトを外してしまうことがあるかもしれません。あるいは、運転中に不意にシートベルトが外れることも起こり得ます。そんなときに、Sirona Mは、赤ちゃんの親のスマートフォンにすぐさま連絡をしてくれます

チャイルドシートは技術的に高性能なだけでなく、安全面も配慮されています。シートには衝撃吸収素材が採用され、柔軟な素材と構造で衝撃を吸収し、赤ちゃんに負荷がかからないよう力を分散させます。万が一事故が起こった場合には、セーフティクッションがエアバックのような働きをし、前方や上方への体の動きに対応しながら、衝突時の衝撃をクッション全体で和らげることもできます。

4. クリップ型言語学習支援デバイス「VersaMe Starling」

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VersaMe Starlingは、赤ちゃんのシャツやオムツなどにつけるクリップ型の言語学習支援デバイスです。

まだ言葉が分からない赤ちゃんに、どのようにして言葉を教えればよいのでしょうか。いくつかの研究によれば、親が赤ちゃんに話しかければ話しかけるほど、赤ちゃんの言語に対する潜在能力は引き出されるといいます。

マイクのついたクリップ型デバイスのStarlingは、録音することなく、赤ちゃんが聞き取ったであろう言葉をカウントします。アプリでは、赤ちゃんの言語に対するエンゲージメントをリアルタイムで分析して、確認することができます。

Starlingを使うことによって「今日はこの子が聞き取っている言葉が少ないな」と感じれば、赤ちゃんにまた話しかけてみてください。そうした努力が、きっと赤ちゃんの言語能力を発達させるはずです。

5. 非接触型妊活トラッカー「EarlySense Percept」

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EarlySense Perceptは、非接触型の妊活用トラッカーです。ただ置くだけで排卵日などが確認できる、というのはある種革命的でもあります。

通常、こうした妊活用のトラッカーは、体温計型をしていて、尿を採取したり、シール状のパッチを貼り付けたりする必要がありました。Perceptのすごいところは、そうした面倒な動作を行わなくとも、リアルタイムで排卵日の日を推測したり、自分の体調についてより多くのことを知ることができます。

センサーはベッドのマットレスに設置します。すると、常時静かに呼吸や心拍数などの身体から発しているシグナルを、睡眠時に読み取ることができます。こうしたシグナルを、アプリ上で出生可能性などのデータに変換し、分析することができます。分析は人工知能によってより綿密に計算され、指紋認証によるセキュリティでデータを保護することも可能です。