インターネットの登場により、同じ興味や関心の人で集まり、交流することも増えてきました。

こうした交流の場やユーザーの集まりは、近年「コミュニティ」と呼ばれ、企業も注目し始めています。「コミュニティ」を組成することは、企業にどのような価値をもたらすのでしょうか。

今回は、ビジネスにおけるコミュニティの役割と、有名企業の活用事例を紹介します。

企業がステークホルダーと長期的な関係を築くために

人々の行動は変化し、小さな集団が乱立するようになりました。マスマーケティングが機能するのは難しくなり、それぞれの集団に合わせたアプローチが必要になってきています。

大量生産大量消費の時代も終わり、商品開発のためにユーザーの協力が必要だったり、商品を買ってもらうためにファンになってもらう必要も出てきました。企業は様々な人の集団、コミュニティと継続的な関係を築く必要が出てきています。

こうした、コミュニティを対象として製品やサービスを販売したり、自社の事業を強めるアプローチは、大企業よりも中小企業に合っています。日本の99パーセントを占める中小企業は、大企業では事業として成立しにくいニッチなコミュニティでもビジネスが成立する可能性があります。

野外フェスの実施などファンコミュニティを作る「よなよなエール」

話をマーケティングに戻します。たとえば、「よなよなエール」を筆頭に様々なクラフトビール事業を手がけるヤッホーブルーイングでは、広報担当者が主力製品の「よなよなエール」を販売するために、「よなよなエール広め隊」と名乗り、様々な活動を行っています。

ファン向けに行う醸造所の見学ツアーや、年間契約などロイヤリティの高いファンとスタッフが集う飲み会イベント「宴」の開催など、ファンのための活動を積極的に行っています。

alt ヤッホーブルーイング「超宴」の様子
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特にユニークなのは、「超宴」という野外フェスイベントを定期的に開催している点。ヤッホーブルーイングのスタッフが運営を担当し、入場券にビール引換券をつけて販売。イベント中はライブやワークショップが行われます。このイベントには多くの人が足を運んでいるそうです。

このような形でヤッホーブルーイングが主導してコミュニティを組成し、ファンを育てたことで、同社のファンは”熱狂的なファン”と呼ばれるようになりました。

ファンを育てるために、リアルの場で思い出深い体験や常識をひっくり返すような驚きを提供していると、同社のマーケティングディレクターである稲垣 聡さんは語っています。

魅力的なプロダクトがあることはもちろんですが、そのプロダクトのファンとのつながりを強めるための機会を生み出していることが、ブランドを強くしています。

企業のビジネスを成長させる3パターンのコミュニティ

経営学者のヘンリー・ミンツバーグ教授が提唱する「コミュニティシップ」という概念では、「組織は士気の高い人たちのコミュニティになったとき、最もよく機能する」と語られています。組織変革の文脈においても、「コミュニティ」は注目なのです。

企業が取り組むコミュニティづくりは、商品のブランド以外を目的としたものもあり、3つのパターンに分類できます。

1つ目は、顧客との接点をつくり、製品やサービスをユーザーに届けるためのコミュニティです。前述のヤッホーブルーイングの事例がこれに該当します。

alt メルカリのMeetup
https://mercari.connpass.com/

2つ目は、採用等を目的としたコミュニティづくりです。たとえば、メルカリはエンジニア、マーケティング、カスタマーサポートなどをテーマとしたミートアップを定期的に開催しています。

ミートアップイベントを開催し、転職活動をすでに実施している人だけではなく、将来転職活動を行う可能性がある転職潜在層ともつながれるようにしています。

外部の人がメルカリと気軽に接点を持てる場を設けることで、後に採用につながる可能性を高めます。企業広報やコーポレートブランディングの領域でも、コミュニティづくりは活きてきます。

alt UI Crunch
http://ui-crunch.com/

3つ目は、業界向けのコミュニティづくりです。たとえば、デザインカンパニーのGoodpatchとDeNAは定期的に、UI/UXデザイナー向けのイベント「UI Crunch」を開催しています。

このイベントでは、同じ業界で働く人々が集い、学ぶコミュニティを組成し、その業界自体を盛り上げています。集まる人々は採用につながる可能性もある人々ですが、こうした場を持つメリットはそれだけではありません。

この活動を通じて、業界内でリーダー的なポジションを獲得しています。業界向けのコミュニティづくりは、コンテンツマーケティングにおける「ソートリーダーシップ」という考え方にも近いですね。特定のセグメントや分野において将来を先取りしたテーマやソリューションを示し、 オピニオンリーダーとして業界を牽引していく活動のことを指します。

参考:
企業とカスタマーの架け橋となる「ソーシャルエディター」という役割

イベントの際にはメディアも入り、後日レポートが掲載されることも珍しくはなく、広報活動としても価値を発揮します。