こんにちは、株式会社ブレインパッドでソーシャルメディア分析を担当している福江です。

娯楽が多様化する現代においても、テレビ番組は依然として多くの人たちに親しまれ大きな影響力を持っています。

特に年末年始の特番は各テレビ局が総力をあげ制作しており、テレビを見ながら家でのんびりと年を越す人が多いのではないでしょうか。

大晦日の特番放送の中でも、特に人気を博している番組が2つあります。
1つは60年以上前から続く「NHK紅白歌合戦」です。言わずと知れた国民的番組であり毎年高視聴率を記録しています。

もう1つは日本テレビ系列の「ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!絶対に笑ってはいけないシリーズ(以下、ガキ使)」です。紅白に対抗する裏番組として10年以上前から放送され、民放では毎年トップクラスの視聴率を記録しています。

NHKの「紅白歌合戦」、日本テレビ系列の「ガキ使」を始めとした民放各局の大晦日特番の視聴率は年明けに発表され、話題となるニュースの定番となっています。テレビ離れが進んでいるとは言え、各番組にどれほど話題性があったかを測る非常に重要な指標です。

人々のライフスタイルが多様化した現代においても、テレビ番組の評価は数十年以上、“視聴率”から変わっていません。集計方法に細かな変化はあるものの、基本的には“関東地区の視聴率がどうだったか”がテレビ番組の成績を測るモノサシとなっています。

SNS力(投稿率)という新たなモノサシ

テレビ番組を視聴率以外の指標で測ることは出来ないのか?

という疑問に対して、各番組に対するSNSの投稿が回答の1つとして挙げられます。

テレビ番組を見ながらTwitterをはじめSNSでその番組の感想を投稿する、いわゆる”実況”は新たなテレビ番組の楽しみ方として数年前から定着しています。

視聴率は番組の内容の面白さにかかわらず、その番組を見たかどうかで判断されますが、SNSの投稿数は番組の内容に大きく左右されリアルタイムで実況の盛り上がり具合が変化していきます。

そこで視聴率以外の新たなモノサシとしてSNS力(投稿率)を定義して、見てみましょう。
計算方法はシンプルに以下の通りです。

SNS力(投稿率)= 該当番組に関するツイート(日本語) /  Twitter全体のツイート(日本語)

過去5年間の「紅白歌合戦」と「ガキ使」のSNS力と視聴率比較

今回はソーシャルリスニングツールを使い、NHKの「紅白歌合戦」と日テレ系の「ガキ使」関連のツイートとTwitter全体のツイート(日本語)を抽出し、両者の過去5年間の推移と視聴率を比較しました。

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テレビ視聴率とTwitter投稿率の年次推移

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※投稿率:該当番組に関するツイート(日本語) / Twitter全体のツイート(日本語)
 (各年の12月31日のツイートが対象)(筆者分析結果)
※視聴率:株式会社ビデオリサーチ調べ(関東地区)

まず、SNS力(投稿率)を見てみます。視聴率同様に、過去5年間で紅白歌合戦がガキ使を上回っていました。直近の2017年を比較してもガキ使の「1.01%」に対して紅白が「1.97%」と2倍近い数値となっています。

一方で、時系列推移で見ると、ガキ使が投稿率、視聴率ともに大きな変化がなく安定しているのに対して、紅白は年ごとに投稿率の振れ幅が大きいことが見てとれます。

興味深い点として、紅白歌合戦が過去最低の視聴率(2部制以降)を記録した2015年が、この5年で最も投稿率が高い年になっています。

この結果を見ると、*”視聴率が高い=SNSで話題性が高い”*とは一概に言えないことがわかっていただけるのではないでしょうか。

2017年紅白歌合戦とガキ使の投稿

次に、昨年2017年12月31日に絞って更に細かく見ていきます。
まずは時間帯別に区切ってどの時間にどの程度話題になったのかその推移を辿ります。

Twitter投稿率の時間帯別推移

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※投稿率:該当番組に関するツイート(日本語) / Twitter全体のツイート(日本語)
 (2017年12月31日のツイートが対象)(筆者分析結果)

時間帯別で見た場合、紅白歌合戦は19時~20時台、ガキ使は18時台と放送開始時間直後が最も投稿率が高く出ています。

紅白に関しては23時台にも再び投稿率が増加していることを鑑みると、紅白のフィナーレにツイートする人が多くなっていることが想定できます。

テレビ視聴率は放送時間帯しかとれませんが、SNS投稿率であれば番組放送時間中はもちろん、番組時間の前でも後ろでも時間帯にしばられることなく見ることが出来ます。

次は実際にどういった投稿が多かったのか、投稿のキーワードと関連性を調べてみます。

関連性分析(クラスター)

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※2017年12月31日の紅白歌合戦関連ツイートをもとに作成

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※2017年12月31日のガキ使関連のツイートをもとに作成

図の見方としては大きなバブルのキーワードは出現頻度が高く、また繋がっているキーワードは単語間の距離が近いため関連性が高いことを示しています。

興味深い点として、紅白歌合戦の分析結果にもガキ使関連のクラスタがあり、ガキ使の分析結果にも紅白歌合戦のクラスタがあります。

投稿の中身を読んでいくと、「ガキ使を見ながら、好きな歌手がでたら紅白」、「紅白を見て、ガキ使は録画」など紅白とガキ使双方を意識している投稿が並んでいます。

まとめ

今回の記事ではテレビ番組というマスメディアを測定する指標として、ソーシャルメディアの投稿率を用いて比較しました。

Twitterなどソーシャルメディアが出てきた当初は、ソーシャルメディアとマスメディアは可処分時間を奪い合うものとして対立関係にあると言われていましたが、今では相互補完的に利用されることが多くなっています。

マスメディアで紹介されたものがソーシャルメディアで広がることもあれば、逆にソーシャルメディアの話題をマスメディアが紹介することもあります。

今回の事例のようにテレビ番組などの反響を測る新しいモノサシとして、ソーシャルリスニングを活用することで新たな視点を持つことができます。