日本はもちろんロッテベトナムにおいても主力商品の「キシリトールガム」。今やベトナムでシェア1位を誇るほどに成長したガムブランドですが、キシリトールガムがここまで成長するため、どんな課題を解決したのか、そしてどのようにデジタルマーケティングにシフトしたのか。

今回は株式会社ロッテの森谷氏とデジタルマーケティングを支援した株式会社サイバーエージェントの小磯氏にお話を伺いました。

キシリトールガムの販売理由は受容性の高さ

ferret_lotte_1.jpg株式会社ロッテ グローバル本部グローバル戦略部マーケティング戦略担当
森谷 祐一
2008年(株)ロッテに入社。国内営業を担当後、2011年にタイロッテに出向し、現地でエリアマネージャーとして営業に従事。2015年から現職。グローバル本部にてベトナム事業の戦略立案並びに商品開発から広告宣伝に至るまで多岐に渡るマーケティング業務に従事している。

ferret:ベトナムでキシリトールガムの展開を始められたのはいつ頃なのでしょうか。

森谷氏:キシリトールガムは2006年から現地で販売を開始させていただいております。ロッテがベトナムに進出したのは1996年で、当時は現地の方の所得がまだまだ低かったので、比較的価格を抑えた板ガムや1枚単位のガムを販売していました。

ロッテベトナムが創業から約10年経ったところで、次のステップに移行しようとしたとき、ロッテ製品の受容性のユーザー調査をしました。当時のベトナムで一番受容性が高いのがキシリトールガムということが分かり、展開することになりました

ferret:ベトナムでキシリトールガムの受容性が高かったのはどのような背景なのでしょうか?

森谷氏:調査結果を見ますと、ベトナムの方は「歯の健康」に関する設問について、反応がよかったです。さらに発売後にも調査を実施したところ、機能価値以外にも「おいしい」「味のバリエーションが多い」ということも評価が高いことが分かりました。

ベトナムでの課題は機能価値の啓発

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ferret:当時、キシリトールガムを訴求する際、味と機能価値のどちらを伝えたのでしょうか?

森谷氏:どちらかというと後者ですね。当時のベトナムの方は歯の健康に対して、ニーズはあるものの、そこまで意識は高くありませんでした

ferret:キシリトールガムの歯の健康を保つという特徴を訴求するため、どのような戦略をとられたのでしょうか?

森谷氏:メーカーが一方的にいうのではなくて、第三者の視点を交えて訴求することで、信頼度を高められないかと考えました。そこで、ベトナム人の歯の健康をサポートする、という目的の元、VOSA(ベトナム政府保健省の外郭団体にあたる口腔研究協会)と提携協力し、臨床試験の実施、成功を経て、キシリトールガムに対してVOSA認証をいただくことができました。

ferret:この取り組みはいつ頃から始められたのですか?また、始めたきっかけは何だったのでしょうか?

森谷氏:2016年頃に売上が伸び悩み、マーケティング活動を始めました。どういうことかと申しますと、まずは日本とベトナムの小売形態の違いをご説明します。

日本の場合、商品を納品すれば自動的にお店に並びます。ですが、東南アジアには、スーパーやコンビニエンスストアといった小売店の「モダントレード(MT)」と個人商店の「トラディッショナルトレード(TT)」という2つの小売形態があります

ベトナムの市場では、TTがおよそ8割をしめています。MTは、商品を納品すればお店に並ぶのですが、TTは、商品がお店に並ばない場合もあるため、まずは「お店に商品を並べる」ことに注力していた時期がありました。その後、なかなか売上が伸びなくなったため、新たにマーケティング活動をすることにしました。

そのとき市場調査をして「キシリトールガムの機能価値をお客さまが理解してくれていない」ということが分かったので、改めて、機能価値を訴求していこうと考えました

ferret:当時はどのようなマーケティングを行っていたのでしょうか?

これまで主にマスメディアでテレビCMを展開していました。内容はキシリトールガムというブランドの性質上、おかたい、真面目な内容になりがちでした。

当時デジタルマーケティングも取り組んではいましたが、主なコミュニケーションはテレビCMでした。ベトナムは若い人が多く、デジタルネイティブもどんどん増えているような国です。また、ハノイ・ホーチミンの2都市の差は、日本でいう関東・関西よりも大きな地域性がありました。そういった地域性や世代、性別ごとに、デジタルで訴求していくために土台を作る必要があるなと考えていたとき、サイバーエージェントさんにお会いしました。

「ベトナムだからこそ」の訴求を重視

ferret:デジタルの施策についてお伺いさせてください。このときは具体的にどういったことを行ったのでしょうか?

森谷氏:これまでのようにテレビCMをエディットしてデジタルの施策に流用するのではなく、地域性や世代、性別ごとに訴求できるよう、複数のデジタル用の動画素材を作りました

以前からデジタル用の素材を作る必要性を感じていましたが、予算面から、追加でコストをかけて素材を作ることが難しい状況でした。そんな中、サイバーエージェントさんはこの課題をクリアするような提案をしてくださり「ぜひ一緒にやりたいです」とお話をさせていただきました。

ferret:サイバーエージェントと取り組みを開始する当時の御社の課題は、「歯の健康を保つという訴求」と「デジタルマーケティング」の2つだったのですね。それをどのような戦略で解決したのでしょうか。

ferret_lotte_3.jpg株式会社サイバーエージェント インターネット広告事業本部
営業マネージャー 小磯 里美
2016年サイバーエージェントに入社。動画広告に特化したインターネット広告代理事業を行う子会社、CyberBullに出向し営業に従事。その後、営業マネージャーに就任。2019年より、サイバーエージェント インターネット広告事業本部にて、営業マネージャーに従事。ダイレクト・ブランドの領域問わず広告主企業の課題に応じたデジタルマーケティングの戦略立案から実行までを担当し、一気通貫したマーケティング支援を行う。

小磯氏:その点に関しては2つあります。1つ目は、デジタライズしたクリエイティブを複数パターン作成しました。例えばアテンションを複数パターン用意する、展開パターンも画角を変えるだけではなくて、大量に素材を撮って、それをカスタマイズして作るといった手法をとりました。

そして、2つ目は伝えるメッセージを見直しましたテレビCMは、幅広い世代の方に向けたものになるので、良くも悪くもそこまで尖れないことが多いです。本来伝えたいメッセージがありつつも、テレビCMが完成したら丸くなってしまって、伝えたいことがきちんと伝わっているのか……、となってしまいがちです。そこをデジタルで補完していくためにも、キシリトールブランドとして伝えていきたいメッセージを、その時々で尖らせて伝えていきました

作成した動画の中でも一番インパクトがあるのは「恐怖のホラー映画」篇です。こういった表現はテレビCMだと少し難しいと思いますので、デジタルだからこそできる表現なのかなと思っています

ferret:確かにキシリトールガムの広告で「恐怖のホラー映画」篇なんて少なくとも日本での放送は想像しづらいですね。

森谷氏:ご提案いただいたときは社内でもいろいろ討議しました。

しかし、ベトナムという市場で、お客さまに対して、キシリトールガムの機能的な価値をしっかりと伝えていくために何が最善なのか、デジタルだからこそできることを積極的にやっていこうと判断し、提案を採用させていただきました。

ferret:ベトナムのマーケティング戦略では尖りを重視したのですね。

森谷氏:そうですね。テレビCMではどの世代でもそれなりに受け入れられるような作りにしつつ、デジタルでは世代やエリアによってピンポイントに響く素材作りを心がけました。

エリア、年齢など、50パターン以上も作り効果検証

ferret:何クリエイティブくらい作って配信されたのでしょうか?

小磯氏:いつも30本は作りますね。

森谷氏:最初はもっと多く、50本以上はあったと思います。どういう切り口が響くのかが全く分からなかったので、そこからいろいろ検討していきました。

小磯氏:そうですね。配信するエリア、年齢、男女で分けて作っているので、少なくともそれくらいは作っていますね。

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ferret:これらの効果検証を持って、次はどのようなクリエイティブを作られたのでしょうか?

森谷氏:そもそもベトナムの方が歯の健康に対する意識が低いという課題があったので、まずは歯の健康の大切さを理解してもらうためにこのような訴求にしました。

ある程度、伝わったところで、次はキシリトールガムのブランド訴求につなげていきました。そのクリエイティブはポジティブなイメージで、情緒を感じさせるものを作りました。

ferret:シリアスなものの次にポジティブだと印象に大きな差を感じますが、ポジティブに決めた理由は何だったのでしょうか?

森谷氏:キシリトールガムは、どうしても機能重視のブランドですので、機能的な価値と情緒的な価値、ここの塩梅をどうするかというのを考えています

先に機能的な価値の訴求をしたので、1回ここで情緒に振った場合どうなるのかと考え、その仮説を検証するため行ってみました。

ferret:反響はいかがでしたか?

森谷氏:ちょっと振りすぎたかなと思いまして……(笑)2019年に関してはもう少し機能訴求に注力したクリエイティブに変更しました。

認知度はほぼ100%、全てのKPIが5%以上UP

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ferret:今回お話していただいたデジタルの施策を実施後、設定されているKPIにはどのような変化が見られましたか?

小磯氏:デジタル動画単体のKPIとしては、リーチと視聴効率で管理しており、具体的には以下の2つの点で評価しております。1点目は、リーチと視聴効率が想定数値を達成しているか、2点目は、リーチと視聴効率が過去施策を上回る結果であるか、ということです。

ただ、広告管理画面上の数値のみでの判断とならないよう、外部調査を活用して定点調査も行っています。これは「伝えたいメッセージがユーザーにどこまで伝わっているか?」という点を調査しています。

森谷氏:認知に関しては、弊社で行っている調査では、ほぼほぼ100%に近い数値を達成しています。KPIの各指標に関しても、お陰さまで年々スコアは上がってきていますね。

サイバーエージェントさんとデジタルの施策を行う前後ですと、項目によってばらつきはあるのですが、最低でも5%は上昇しています。スコアの変化はすごくいいので、これからもデジタル施策を強化していきたいと考えています。

ferret:今回、伺った施策の効果検証を持って、今後どのような施策・展開を行っていこうとお考えでしょうか?

小磯氏:今、ベトナムに行くとどんなお店でもキシリトールガムが置いてあり、認知度も高く、購入にもつながっています。その中でさらに、ベトナムの方にとって「好きなブランド」になり、キシリトールガムの売上を伸ばしていけるようにと考えると、ただ情緒を伝えるだけでも「歯の健康にはキシリトールガムだよ」と伝えるだけでもだめなんですよね。このブランドを選ぶ理由や付加価値を伝えて、ブランドを好きになってもらうことが重要ではないかなと考えています。

ベトナムの市場ではキシリトールガムは少し高いんですね。でも価格が高くても選ばれる理由、味だけでもなく歯の健康だけでもなく、何を伝えていくべきかは絶賛模索中です。

森谷氏:サイバーエージェントさんと一緒に、デジタルマーケティングを行ったことで、デジタル上での課題解決ができました。ここで得られた知見を今後他の施策でも活用していきたいと思います。

「キシリトールガム」ブランドの次のステップに関しては、従来のやり方は踏襲して強化しつつ「ブランドとしてどう愛してもらえるのか」というもう一つの切り口を、サイバーエージェントさんと一緒に強化していきたいなと思っています。

ferret:ありがとうございました!