近年働き方改革の推進により、副業・兼業の解禁に取り組む企業が増えてきました。

しかし、長時間労働、人材流出など、本業への影響が懸念されて、副業・兼業を許可している企業は全体の約2割とまだまだ少ないのが現状です。

参考:株式会社リクルートキャリア「兼業・副業に対する意識調査」(PDF)

2月15日、働き方を考えるカンファレンス2018「働くを定義∞する」で「働き方・企業と人」をテーマとしたトークセッションが行われました。

イベントでは、働き方改革に関する政策立案を担当している経済産業省室長補佐の藤岡雅美氏と自身の会社を経営しつつソニー株式会社で働く正能茉優氏が「自由な働き方と企業との関係」について語っています。

副業が個人や企業に与える影響やメリットついて、これから副業をやってみたい方、副業を解禁しようと思っている経営者の方はぜひ参考にしてみてください。

登壇者紹介

藤岡 雅美氏 (経済産業省 室長補佐)

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役人/看護師・保健師。1988年、大阪府生まれ。 2010年に京都大学医学部人間健康科学科(看護学専攻)を卒業。経済産業省に入省後、同省ヘルスケア産業課、国立行政法人日本医療研究開発機構、「健康経営銘柄」、「Japan Healthcare Buisiness Contest」等を立ち上げる。現在、「働き方改革」、「子育て」や「教育」に関する政策立案を担当。  また、「Global Shapers Community(The World Economic Forumが任命する33歳以下の次世代リーダー組織)」のメンバーに選出され、国内外のグローバルリーダーとともに、ソーシャルセクターで活動中。

正能 茉優氏(株式会社ハピキラFACTORY 代表取締役社長/ソニー株式会社 商品企画担当)

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1991年東京生まれ。慶應義塾大学在学中の2012年、地方の商材をかわいくプロデュースし発信・販売する(株)ハピキラFACTORYを創業。大学卒業後は広告代理店に就職。現在は、ソニーで新規事業・新商品を開発しながら、自社の経営も行う「パラレルキャリア女子」。
その「副業・兼業」という働き方の経験を活かし、経済産業省「兼業・副業を通じた創業・新事業創出に関する研究会」の委員にも。自社の活動としては、2017年3月より日本郵便とコラボした商品群が全国24,000局の郵便局で発売。北海道天塩町政策アドバイザーや慶應義塾大学SFC研究所上席所員としても、精力的に活動中。

引用元:働き方を考えるカンファレンス2018「働くを定義∞する

誰しも「自由な働き方」が向いている訳ではない

正能氏が「株式会社ハピキラFACTORY」を立ち上げたのは大学生の時のこと。今も自身の会社を経営しつつ大手企業でも働いている理由を以下のように語ります。

「私は兼業をビュッフェキャリアと呼んでいます。ホテルのビュッフェでカレーもパスタも食べたい。だからカレー七分目、パスタ三分目で食べる。それと一緒で自分の会社を持ちながら大手企業でも働いてみたいと思って今に至ります。」(正能氏)

藤岡氏、正能氏は共に20代。いわゆるデジタル機器が普及した環境で育ったミレニアル世代です。世間からは、ミレニアル世代とひとくくりにされることが多いですが、2人とも世代で括られることには違和感を覚えると話します。

働き方に関しても同じように、働き方改革で推進されている、兼業・副業、在宅ワークなどの「自由な働き方」は、誰にでも合っている訳ではありません。兼業が向いている人もいれば、専業が向いている人もいます。

働き方改革に流されるよりも、自分に最適な働き方を模索することが重要です。

「ミレニアル世代って呼んで、別世代から見た時に自分たちとは違うよねっていうのをはっきりしてくれるのは嬉しい反面、みんなが同じようにくくれるかというとそうではないと思っています。私の場合は2つの仕事をやっているけれど、1つの仕事を一生懸命やりたい人もいるし、もっと色々な仕事をやっているようなフリーランスの人もいる。1つにくくるのは無理なんです。」(正能氏)

自由な働き方にこそ、密なコミュニケーションが必須

自由な働き方を選択するならば、今まで以上に密なコミュニケーションが必要です。自分がいつ・どこで・何をやっているのか。いつまでにこの業務を完了させるのか。細かい報告を都度行わないと、上司や同僚を不安にさせてしまうからです。

「僕はゴールを相当密に設定します。今はやりたい部署に行かせてもらって、やりたいことが山ほどあります。それを都度上司に確認していると時間がかかりますよね。でもゴールを密に設定していれば、自分に裁量権が降りてくるんです。」(藤岡氏)

「自由に働いていて、何をしているのかがわからないと上司も不安になります。私は週1回の定例に加え、自分の状況を都度報告し、不安を生み出さないように努めています。」(正能氏)

「自由に働きたい=わがまま」になってはいけない

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働き方改革により、被雇用者側が働く時間や場所を選択できる企業も増えてきています。しかし、藤岡氏は、「自由に働きたい」と主張するだけではわがままになりかねないと警鐘を鳴らします。

「若い世代は自分のやりたいことをやりたいし、自由にしたいと主張しがちです。それ自体はとてもいいことなのですが、本当に自由な働き方をしたいのか、ただのわがままなのかには壁があります。ただのわがままをやらせてくれっていうのは違う気がしていて。そういった雰囲気が出てくると間違った方向へ行ってしまいます。」(藤岡氏)

「自由な働き方」とは、個人にとって働きやすいだけではいけません。それが会社のためにもなることに意味があるのです。

「自由に働いた結果、会社や社会や自身のためになっているのかを確認しなければいけないと思っています。私は今やっているハピキラの仕事が、結果としてソニーにも役に立ていると思っていてそれが大事なことだと思っています。」(正能氏)

副業・兼業のメリットは人脈を行かせること

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副業・兼業は、個人にとって収入源アップやスキルアップというメリットがあります。

しかし、副業・兼業によって、長時間労働が生まれたり、情報漏洩や人材流出の危険性を懸念する企業も少なくありません。

それでは、兼業・副業を認めることは、企業にとってどのようなメリットがあるのでしょうか。正能氏は、副業・兼業が企業にもたらすメリットとして、人脈を活かせることがあると話します。

「ソニーの私とハピキラの私では出会える人間が違います。ソニーの私は大企業の一員としてしか見られませんが、ハピキラの私だと地方で大臣や県知事に会えることもあります。そこで知り合った人と一緒にソニーだったら何ができるかって考えるんです。」(正能氏)

人材だけではなく、副業・兼業によって得られた技術や知識を企業でも活用することで、企業側にもメリットが生まれます。「自由な働き方」を取り入れた結果、個人の成長にも企業の成長にも繋がります。

「ハピキラで出会えたウルトラCの人材をソニーで困っている人がいた時に紹介します。ハピキラの正能を使うのはソニーで困っている人がいた時だと思ってます。」(正能氏)

「自由に働きたい」はアウトプットを宣言しているようなもの

企業で働きながら副業もする。場所や時間にとらわれず働く。「自由な働き方」にも様々なかたちがあります。

このような「自由な働き方」を選択するならば、明確なアウトプットを出す責任が生じることを理解しましょう。「自由な働き方」を「自分勝手な働き方」と履き違えてはいけません。

「自分で自分を追い込んでいる感じはありますね。自由に働きたいは明確なアウトプットを出しますを宣言しているようなものだと思います。向いていない人もいるし向いていない職種もあるので。」(藤岡氏)

「だからこそビュッフェキャリアなんですよね。兼業の人もいれば専業の人もいるんです。働き方改革の波に飲まれるなってことですよ。」(正能氏)

まとめ

働き方改革の「副業・兼業の推進」により、副業・兼業を認める企業は今後も増えていくでしょう。また、フレックスや在宅ワーク、時短勤務など、様々な働き方を選択できる企業も増えています。

働く時間や場所を選べたり、自由に副業ができたりするのは、被雇用者にとって大きなメリットです。しかし、自由に働く=やりたいことだけやると捉えていては、ただのわがままになってしまいます。

自由な働き方を選択するならば、上司や同僚と密にコミュニケーションをとり、副業・兼業で得られた知識や人脈を企業でも活かしていく姿勢が重要です。