サッカーチームにおける「判断基準」の力

選手が優先順位を意識できるチームは強い

スポーツにも同じような事例はあります。一見、ピッチに立つ22人の選手がカオスのように動きまわるサッカーでも、監督が「指針・判断基準=コンセプト」を示し、選手が優先順位を意識しながらプレーできるチームは強いのです。

サッカーは11人でプレーします。ボール保持者には(自分以外に味方が10人いるので)最大で10か所のパスコースがあることになります。それに加えて、ドリブルやシュートという選択もありますから山ほどの選択肢を持っていることになります。

そんななかで、ボール保持者の個人的な好みでプレー選択できるとしたら、次にどんなプレーが起こるのか、チームメイトですら想像がつかず振り回されてしまいます。予測して動く連係プレーなど到底できません。

「自由」と「野放し」は違う

そもそも「自由」と「野放し」は違います。

良い監督は、必ずチームにコンセプトを植え付け、プレーを選択する際の判断基準と優先順位を示します。明確なコンセプトを示し、その範囲内でメンバーの自由な判断が保障されているのです。

それがあるからこそ、「うちのチームでは、こういう状況のときにバックパスはないはずだ。きっとここにパスが出るはずだ」と味方が感じ取ることができ、一手、二手先を予測した動き出しが可能となるのです。観客を魅了する連係プレーやスピード感あふれる試合は、一定の規律の元で展開されているのです。

指揮官のコンセプトを意識した中で11人の意図的な戦術行動があり、両チームの意図と意図とのぶつかり合いがサッカーの醍醐味となっているわけです。

2008年、2012年のヨーロッパ選手権、2010年ワールドカップを制したスペイン代表は、美しいパスサッカーで世界中の人々を魅了し一世を風靡したのは記憶に新しいところです。当時のスペイン代表デル・ボスケ監督も、「秩序なくして才能は意味をなさない」と述べていますし、「自由を生かすための枠組み」が必要である、とも言っています(JFAテクニカルニュースより)。

細かく縛るような基準では指示・命令と同じで選手の実力発揮に制限がかかってしまいますが、チームにとって普遍的な指針・基準を示すことで、初めてメンバーの自由な判断が生きてくるのです。

まとめ

皆さんの会社にも、ミッション、ビジョン、バリューなど、社員の行動・判断のよりどころとなるものがあるはずです(過去の7回目の記事を参照)。

参考:
サンフレッチェ広島を5年で3度のJリーグ王者に導いた森保前監督が自然体で実践していたこととは?|ferret [フェレット]

お飾りになってしまってはいませんか。実はメンバーを自立させるために非常に有効なツールとなります。

冒頭にも書きましたが、

「自分で判断しなさい」
「自立しなさい」

と言いつつも、実際にメンバーが自分の判断で行動したら「何で勝手にやったんだ」「なぜ事前に一言相談しなかったんだ」と言いたくなるかもしれません。

そんな矛盾を解消するためにも、リーダーの皆さんはご自身のフィロソフィーを整理し、可視化・明文化させ、部署内の指針・判断基準を作成してみるのはいかがでしょうか。

そして、その範囲内でメンバーの自由を保障すると活気ある職場になり、クリエイティブな仕事ができるはずです。