日本国内ではアリババ(阿里巴巴)のニュースが登場することが多いですが、世界規模で見ると、2018年2月時点でアリババは時価総額で8位で、テンセント(騰訊)はさらにそれを上回り5位となっています。Apple・Alphabet・Microsoft・Amazonに続いて名を連ねるテンセントは、メッセンジャーアプリWeChatを配信しています。

しかし、なぜテンセントの「WeChat」はこれほどまでに成功を収めたのでしょうか。そこには理由があるはずです。

そこで今回は、インバウンドにも強いメッセンジャーアプリ「WeChat (微信)」が広まっている5つの理由をご紹介します。今や6位のFacebookや7位のBerkshire Hathawayをも抜く中国の企業は、なぜここまで頭角を現したのでしょうか。WeChatの歴史とともに紐解いていきましょう。

WeChat (微信) はどれくらい人気なのか?

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世界時価総額ランキングをもとに作成 (2018年2月現在)

2011年1月にテンセントがWeChatをリリースしたとき、単純なモバイルだけでしか使えないメッセージングアプリがこれほどまでに世界を圧巻するとは誰も思ってもいなかったでしょう。実際、2011年の第二四半期は、280万MAU(月間アクティブユーザー)しかいませんでした。

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世界の統計情報を集めているStatistaによれば、それから6年後の2017年第二四半期のMAUは9億6300万MAUにまで膨れ上がっています。休眠ユーザーも含めれば、10億はくだらない模様です。

果たして、WeChatがここまで躍進したのは、なぜなのでしょうか。ここでは、WeChatが広まった要因として5つの理由を挙げてみましょう。

メッセンジャーアプリ「WeChat (微信)」が広まっている5つの理由

1. インターパーソナルなやりとりに欠かせないツールへ

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最初のWeChatがリリースされたのは2011年初旬で、他のメッセージングアプリと同様に普及の最中にいる時期でした。iPhoneやAndroidが登場した当初、主に使われていたのは標準機能であるSNSですが、単調なメッセージのやりとりに嫌気が指していたユーザーも多かったことでしょう。

KikWhatsAppViberといったメッセージングアプリが登場したのは2010年で、翌年にWeChatLINEFacebook Messengerが国際舞台に登場します。中国国内では、黎明期のシャオミ(小米)がMiliao(米聊)と呼ばれるメッセージングアプリをローンチしましたが、実際に当時中国で流行の兆しを見せはじめたのは、ニュースにリアルタイムでコメントし合えるTwitterにそっくりなWeibo(微博)の方でした。

ところが、Weiboには大きな穴がありました。いつでもどこでも気軽に呟ける反面、個人的なメッセージのやりとりには適していなかったのです。それに気づいた中国国内のユーザーは、WeiboとWeChatの両方を使い分けるようになりました。

2. 「微信」から「WeChat」へ

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2012年、テンセントはWeChatに対して大きな舵取りをしました。もともと「Weixin (ウェイシン = 微信)」と呼ばれていたアプリを「WeChat」と国際的に理解できる名前に変え、リブランディングを行なったのです。

実は、あまり知られていませんが、中国国内では現在でも「Weixin (微信)」、国外では「WeChat」として配信されています。基本的な機能も見た目も同じですが、例えばWeixinでは「Kabao (卡包)」と呼ばれる、クーポンなどをまとめておくカードケース機能がつくなど若干の違いがあります。

実際、2011年の第四四半期には5000万MAUだったのが、国際化に伴うリブランディングによって、2012年第一四半期には1億MAUと、この時期に倍近く増加したことがわかります。

Facebook Messengerが1億MAUを達成したのは2016年7月ですが、まさに世界のFacebookと張り合うだけのユーザー規模にまで到達しています。日本国内ではLINEの使用者のほうが多いので、WeChatは「中国のメッセンジャーアプリ」と誤解されがちですが、WhatsAppとMessengerに次いで非常に多くのユーザーが利用している世界を代表するSNSだと言えます。

3. 決済にも欠かせない!生活インフラとなったWeChat

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WeChatが中国国内で利用者を加速的に増やした要因は、他にもあります。代表的なのは、2013年にWeChatがアプリWeChat Pay(微信支付, 中国名読み方:Weixin Zhifu)と呼ばれる決済機能を組み込んだことです。(WeChat Payは単体のアプリではなく、WeChatの一機能です)

中国国内では、3億人以上のユーザーがWeChatを自身の銀行口座とリンクさせていると言われています。特に、WeChatで人気の機能が、2015年にスタートしたP2P(ピアツーピア)で個人間送金できるマイクロペイメント機能です。

日本ではスマートフォンで支払う際、端末にFelicaが付いていないと決済できない場合が多いです。WeChat Payの支払い方法は非常に簡単です。WeChatを開くと決済用のQRコードが表示されるので、店舗の端末にかざすだけです。

中国国内ではほとんどの店でAlipayかWeChat Payで支払いを済ませることができるので、中国国内で財布を出すことは少なくなりました。特に、Alipayに比べてWeChat Payはすでにチャット機能でもユーザーを多く獲得しており、ユーザーは特段新しいアプリをダウンロードしなくてもよかったのが、広がる上での重要な要素だったと言えるでしょう。

4. もはやWeChatで何でもできる?

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WeChatには、チャット機能だけではない様々な機能があります。

WeChatが最も早く取り入れた機能は、近くのユーザーが投稿したビデオクリップを見られる機能です。ただ、2011年にこの機能が取り入れられた時、2Gから3Gに切り替わる段階で、通信速度の関係もあり、あまり使われることはありませんでした。

2014年にWeChatが取り入れた機能は、大きく功を奏しました。タクシーの予約機能です。WeChat Payを利用することで、現金を使わなくともタクシーに乗れるようになりました。残念ながら、この動きの延長線上で2015年5月にはWeChat上のUber公式アカウントが見られなくなりました。

WeChatでは、他にもボイスメールを送ったり、企業の公式アカウントで自分の欲しい商品の情報を見たり、暇な時間にゲームをしたりすることもできます。WeChatのアプリを開けば、自分の求めている情報がそこにある、そう思わせることができたのが、WeChatの成功の一要因だと言えるでしょう。

5. 中国国内での環境の変化

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Illustration : CNN Tech

もちろん、WeChatが広がったのは、内的な要因だけではありません。転機となったのは、2013年までに段階を追って行われた、中国国内での検閲活動です。

契機となったのは、2009年7月に行われた新疆ウイグル自治区ウルムチで発生した騒乱です。ウイグル語で「7月5日事件」とよばれるこの事件では、騒乱を起こしたウイグル人たちがコミュニケーションの手段としてFacebookを使っていたとして、規制の対象となりました。

2013年7月には、香港やマカオを除いた中国国内のほとんどの地域でFacebookが利用できなくなりました。こうした外的要因も、WeChatの爆発的成長の後押しとなったと言えます。

まとめ

騰訊(Tengxun)を「Tencent」、微信(Weixin)を「WeChat」として国際的ブランドに書き換えることによって、テンセントは大きな躍進を遂げました。

もともとMSNメッセンジャーなどと同様にインスタントメッセンジャーとして「騰訊QQ」を出していた、1998年創業の比較的古手のIT企業ですが、20年の時を経て、世界的大企業として君臨しています。

インバウンド対策で「WeChat」アカウントを開設していないのであれば、ぜひアカウント開設からはじめてみてはいかがでしょうか。