パフォーマンスを低下させる「ゴーレム効果」とは
6月に入り、特に新入社員の方は社会人生活に少し慣れてきた頃ではないでしょうか。
仕事に慣れてきて任される業務も増えてくると、多かれ少なかれ上司や先輩から「叱られる」「批判される」機会もあるでしょう。
その時は「嫌だ」「辞めたい」と感じてしまうこともありますが、基本的には上司や先輩は育成しようとしてくれるからこその批判です。
とはいえ、叱られたり批判されたりすると落ち込んでしまうものでもあります。
今回は、上司や先輩からの批判を正しく受け止めて、自分の成長につなげるために知っておきたい心理学効果「ゴーレム効果」を紹介します。
ゴーレム効果とは
ゴーレム効果とは「ある人物に対して周囲の期待が低い場合、その人物は周囲の期待通りにパフォーマンスが低下してしまう」という心理学効果です。
1960年代のアメリカの教育心理学者ローゼンタールにより提唱されました。教師と生徒を対象にして実験が行われ、結果は教師の期待度が低い子どもは結果として成績が下がるというものでした。
ゴーレム効果に関連する2つの効果
ゴーレム効果は、他の心理的な学説とも大きな関わりを持っています。ここでは、ゴーレム効果とセットで語られることの多い2つの効果についてご紹介します。
1.ピグマリオン効果
ピグマリオン効果は、ゴーレム効果と対になっている効果です。
ゴーレム効果と同じくローゼンタールによって提唱されたもので、ゴーレム効果とは逆に「周囲に期待されると本人も期待通りの結果を出しやすい傾向にある」というものです。
ピグマリオン効果についての詳しい説明は、以下の記事で紹介していますので参考にしてください。
参考:
適切な期待値を設定して成長を促す「ピグマリオン効果」とは?|ferret [フェレット]
2.ハロー効果
ハロー効果はピグマリオン効果に近い性質を持っており「ある人物を評価する際に、肩書や外見と言ったわかりやすい特徴に引っ張られてその人を過大評価してしまいやすい」という効果です。
周囲の評価を高め、ゴーレム効果に陥りにくくするために理解しておくことをおすすめします。
ハロー効果についての詳しい説明は、以下の記事で紹介していますので参考にしてください。
参考:
ハロー効果とは〜あらゆる行動に影響のある心理効果を理解しよう|ferret [フェレット]
ゴーレム効果に陥らない・陥らせないためには
一度ゴーレム効果に陥ってしまうと、
相手の印象通りにパフォーマンスが低下する
→相手からの評価が下がる
→さらにパフォーマンスが低下する
というに悪循環になりがちです。
「もしかしたらゴーレム効果に陥ってるのかも」と気付いたら、そのタイミングで脱する努力をしましょう。
また、上司など他者を評価する立場にいる方は、同僚や部下などをゴーレム効果に陥らせないための工夫が必要です。
ここでは、ゴーレム効果に陥らない・陥らせないためにどのようなことをすればいいのかを紹介します。
自分がゴーレム効果に陥りそうになったら
1.ハードルの低い挑戦をする
ゴーレム効果に陥ってしまうと、何もかもが空回りしてしまい自分が完全に駄目な人物であるかのように感じてしまいます。
ここで効果的なのが、ハードルの低いチャレンジをすることです。チャレンジ内容は、短い時間で終わる作業やあまり考えずに作業できるものなどなんでも構いません。
大事なのは「できた!」という達成感を得ることです。チャレンジが成功すると、自己肯定感は高まります。この自己肯定感こそがゴーレム効果から脱出するためのカギとなります。
2.セルフトークで自分を励ます
ポジティブな言葉遣いを心がけ、自分に熱っぽく語りかけることでモチベーションを維持します。
「自分はこういうことを頑張っている」「自分は〇〇で結果を出した」「自分はまだまだ成長できる」など、自分を前向きにさせる言葉をかけてみましょう。
3.休息を取る
心の状態をリセットするために、一度休息を取ることもひとつの方法です。
たっぷり睡眠の時間を取ったり、趣味や運動に時間を費やしてみたりするのもよいでしょう。
モチベーションを回復させた上で、改めて目の前の問題に取り組めば現状を打開できることもあります。
他人をゴーレム効果に陥らせないために
1.ネガティブな評価ばかりを伝えない
相手をゴーレム効果に陥らせないために何よりも重要なのは、相手にとってネガティブな評価を連続して使わないことです。
例えば、仕事で「おまえはダメだ」「まったくできていない」などの言葉を繰り返し使用していると、部下や同僚はゴーレム効果の悪循環に陥ってしまいます。
仕事において相手の批判は必要になることもあります。とはいえ、ゴーレム効果で相手の作業効率を下げたり、ミスを誘発したりしていれば本末転倒です。批判の頻度や方法を工夫して、健全な指導をするように心がけましょう。
例えば、「この仕事のここはダメだった。こう改善するべきだ。ただ、この部分はよかった。」というように、よい部分と悪い部分を両方取り上げると効果的です。
2.挽回するためのチャンスを与える
部下が仕事で失敗してしまい、どうしても叱らなければならないこともあります。
そのような場合は「次のチャンス」を与えてあげましょう。
失敗したまま挽回のチャンスがないと、その人の評価は悪いままで終わってしまいます。
悪い評価を覆すチャンスを与えれば、相手のモチベーションを高めることに繋がります。
3.適切なタイミングで褒める
ゴーレム効果を引き起こしやすい人の特徴は「批判ばかりしていて褒めることをおろそかにしている人」です。
たくさん褒めれば良いわけではありませんが、適切なタイミングで相手を褒めることは部下のモチベーションを上げるだけでなく、信頼を高めることにもつながります。
「自分を正当に評価をしてくれる上司だ」と感じることができていれば、部下は成長の指針が得やすいだけではなく、注意や批判も正しく受け止めて今後の改善に役立てようと努力するモチベーションへつなげやすくなります。
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