コスパが悪かった市場を突破する

飯髙:
優秀な理系学生学生がいるという事実は、以前から言われていました。しかし、なぜそこにどこの企業も手入れなかったのでしょうか。

加茂氏:
1つはマーケットサイズの問題ではないでしょうか。

旧帝大以上といったような理系人材の採用市場はそんなに大きいものではありませんし、人数も限られています。わざわざ大手人材系の企業が、既存の人材サイトとバッティングするようなサービスをその狭い市場に向かってやるのは経済合理性に欠けます。

僕らのような事業案は、マーケットが小さいだけではなく、理系学生に啓蒙もしないといけません。そう考えると、非常にコストパフォーマンスが悪い事業になってしまうのです。
人材系の大手企業で新規事業コンテストとかで近い事業案が出たことがあるらしいのですが、これまで全て却下されていると聞いています。

こうした問題を、僕らは2つの観点で突破しにいっています。

1つはオフラインで学生を集めることでCPAを低く集められてることです。もう1つは僕らはPOLを人材の会社として捉えずに、研究関連の市場をとっていく事業を展開し、産学連携など幅広い市場を取りに行っているということです。

なので、僕らからするとニッチな優秀理系人材市場は氷山の一角でしかなくて、その下に広がる市場を狙っているから人材に力を入れられるのです。

研究者のパフォーマンス向上で社会を発展させる

加茂氏:
もちろん当初から、こうした意識で動いていたわけではありません。当初は単純に理系の先輩が就職活動で困っていたから、それを助けたいという意識から始めました。しかし、就職活動意外にも周辺に研究関連の領域は課題が多くあり、市場的にもこれ絶対伸びるけど誰もやってないから面白いと考えるようになりました。

特に最近は、海外では僕たちの事業のような「ラボテック」は群雄割拠になっています。
例えばドイツのResearchGate(リサーチゲート)という研究者向けのSNSは世界中で1,200万人ぐらいに使われています。また、Science Exchangeという研究の外注先を探して依頼できるマーケットプレイスなどがあります。Science ExchangeではNASAが一部研究を委託しているほどです。

飯髙:
なかなか日常で触れない世界ですね。

加茂 氏

加茂氏:
インターネットとか太陽光発電とかも、全部研究者による研究開発で生まれてきています。それでも研究分野はまだ課題が多くあるので、そこを解決すれば研究者のパフォーマンスが何倍にもなって、社会の発展スピードが絶対上がります。なので、まだまだニッチなんですが、すごい意義がある市場だなと思ってます。

飯髙:
現在の事業はそれでも研究者と企業を結び付けることがメイン事業ですよね。ただ研究者はみんなお金がありません。研究費が取れずに研究が難しくなるとも聞きます。研究者が自分自身で研究費を獲得できるような仕組み化にも取り組んでいるのでしょうか。

加茂氏:
新規事業として「LabBase R&D」という共同研究のマッチングサービスを開始しています。

今までのLabBaseの事業は「企業が採用観点で修士・博士の学生を検索してスカウトする」というものでした。弊社は採用費からお金をもらうというモデルなのですが、それとちょっとスライドさせて企業から研究開発費の一部をいただいて、ポスドク以上の研究者のデータを検索して共同研究の依頼ができるっていうデータベースを作っているんです。

これは研究者側からすると、共同研究として研究費を獲得できるという意味でもメリットはすごい高いので、そこを機会を広げていってるっていうサービスですね。

ただ、ただでさえ忙しい研究者がサービスをうまく活用してくれるかはわかりません。そこが学生メンバーの出どころです。学生がエバンジェリストになって研究者をサポートしていきます。なので、LabBase R&Dを教員に広めていくっていくっていうのにも学生の組織が役立つのです。今後はLabBase R&D以外の教員向けサービスをどんどん広げていってもらいたいと考えています。

飯髙:
お金の取り方が多様化するって意味ではすごくいいですよね。

加茂 氏

加茂氏:
そうですね。多様化させるのが大事だと思っています。やはり研究自体がとても評価しづらいものです。そのために、色々な軸で評価されてお金もらえる仕組みがあるべきじゃないかな、と思っていますね。科研費で評価されやすい研究もあれば、共同研究で評価されやすい研究もあると思うので。