国内のMaaSの事例

日本国内では統合型のプラットフォームのサービスは開始されていませんが、自動車メーカーや鉄道会社などの民間企業と国土交通省など、官民の双方でサービスの実現に向けた取り組みが始められています。

日本政府の取り組み

2018年6月に閣議決定された「未来投資戦略2018」では、重点分野の1つとして「次世代モビリティシステムの構築」が示されています。東京オリンピック・パラリンピックを見据え、2020年の無人自動運転サービスの実現を中心に、様々なモビリティ手段のあり方と共に、統合型サービスの実現化に向けて制度整備などが進められるでしょう。

参考:
未来投資戦略 2018

自動車メーカーの取り組み

トヨタ自動車は2018年1月にモビリティサービス専用電気自動車(EV)「e-Palette concept」を発表しました。移動といった本来の自動車の用途だけでなく、物流や物販など様々なサービスが自動運転によって提供されるようになります。自動運転を見据え、様々なサービスを提供する事業者が利用できるプラットフォームの構築を推進するとしています。

また、ソフトバンクと自動運転車を利用した移動サービス事業「MONET Technologies」を共同設立し、ソフトバンクの「IoTプラットフォーム」と連携したMaaS事業を推進しています。利用者の需要に合わせた配車サービスなどを、全国の自治体や企業向けに展開していく予定です。

参考:
CES 2018 トヨタプレスカンファレンス豊田社長スピーチ
ソフトバンクとトヨタ自動車、新しいモビリティサービスの構築に向けて戦略的提携に合意し、共同出資会社を設立

鉄道会社の取り組み

小田急グループでは、「小田急MaaSアプリ」の開発を進めており、スマートフォンアプリを通じて鉄道やバス、カーシェアリングサービスの利用を可能にするだけでなく、目的地の飲食や宿泊の予約決済までを一括して提供するサービスの構築を目指しています。

また、JR東日本では利用者が様々な交通機関をシームレスに乗り継げるサービスの実現に向けて、120を超える企業や団体が参加する「モビリティ変革コンソーシアム」を立ち上げました。

参考:
「小田急MaaS」に関する企業間連携について
モビリティ変革コンソーシアム

これからのMaaS

スウェーデンのチャルマース工科大学の研究者は、MaaSを統合段階に応じて0〜4までの5段階のレベルに分類しました。
最も統合が進んだレベル4では、「都市計画やインフラ整備、インセンティブなどの施策が一体となって立案されている状態」とされています。現状ではこのレベルに該当するサービスや都市はまだありませんが、今後はこのように各サービスだけでなく社会全体として、「移動」のプラットフォームが構築されることが予想されます。

こうした社会全体を巻き込んだプラットフォーム構築のためには、各事業者が連携し、さらに官民が一体となった取り組みが必要となります。各事業者が連携に必要なデータのオープン化を進め、法令の一元化を進めることが求められていくでしょう。

参考:
http://www.tut.fi/verne/aineisto/ICoMaaS_Proceedings_S6.pdf