働き方改革への注目を背景に、「RPA(Robotic Process Automation /ロボティック・プロセス・オートメーション)」が脚光を浴びています。従来は工場などの生産の現場で進んでいた「自動化」を、ホワイトカラーのデスクワークに応用したシステムです。RPAを導入すれば、作業の自動化によって生産性は飛躍的に向上し、人的ミスも減らしつつ品質を向上させることも期待できるのです。

しかし、作業の自動化ならば、Excel等で使われる「マクロ」でも行えます。実際に、Excel等のマクロ機能を使えばかなりの業務を自動化することができますし、実際に一定の業務を自動化している例も数多くあります。

RPAとマクロの違いは、どのようなところにあるのでしょうか。この記事では、RPAとマクロの違いについて詳しく解説します。

▼そもそもRPAとは?▼
RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)とは? 基礎知識やメリット・デメリットを解説

目次

  1. RPAとマクロの違い
    1. 設定方法
    2. 設定可能な業務範囲
    3. 処理スピード
    4. 価格
  2. マクロよりもRPAを導入すべき場面は?
    1. 複数のシステムにまたがる作業を自動化する場合
    2. 情報システム部門の負担を減らしたい場合
  3. おすすめのRPA
    1. BizRobo!mini
    2. CELF RPA オプション
    3. Autoジョブ名人
  4. まとめ

RPAとマクロの違い

RPAは、PC内で動作する、ソフトウェア型ロボットです。PCで行っている様々な定型作業を代行し、自動化します。これに対しマクロは、Excelに代表されるOffice製品に含まれる機能で、VBA(Visual Basic for Applications)というプログラミング言語を使えば、高度な自動化処理も可能となります。

処理の「自動化」という側面では共通点を持つ両者ですが、大きな違いも存在しています。マクロに比べ、RPAが世間に注目されるのには、訳があるのです。ここからは、その違いを4つの視点から見ていきます。

設定方法

RPAとマクロの違いとしてまず注目したいのは、その設定方法です。

まず、マクロを使ったことがない方は、イメージとしてExcelの計算式を思い浮かべてみてください。Excelの計算式でも、入力した値から自動的に計算結果を表示する、条件分岐を使って高度な自動化をする、といったことができます。しかしそうした自動化を行うにも、式の書き方について知識があることが前提です。

マクロの設定はより高度なものになるため、「VBA(Visual Basic for Applications)」というプログラミングの知識が必要となります。このため、業務をマクロを使って自動化するためには、マクロに詳しい社員に依頼するか、情報システム部門に依頼する必要があるのです。こうした対応は、最初に設定をプログラミングする際はもちろん、業務の変更に伴いプログラミングの改修を行う場合も、同様の対応が求められます。

一方で、RPAにプログラミングの知識は必要ありません。RPAで業務の自動化を実現する場合、パソコンの中の仮想ロボットに設定を行います。多くのRPAツールでは、ロボットの設定を簡素化するために、インターフェースを工夫してあります。自動化したい作業手順のテンプレートがあらかじめ用意されていたり、作業のフローをマウス操作で簡単に定義できるRPAツールもあります。また、多少の改修であれば、プログラミングに詳しくない社員でも設定変更できてしまうほど、操作性に優れています。

このように、RPAとマクロの違いとして、設定方法の容易さが挙げられます。

設定可能な業務範囲

RPAとマクロの違いとして、自動化を設定できる業務の範囲にも注目したいところです。

マクロの場合、自動化ができる範囲はMicrosoft社のOffice製品に限られます。例えばExcel・Word・PowerPointなどのOffice製品を使って行われている多くのデスクワークは自動化が可能ですが、Office製品を使っていないデスクワークの自動化は、マクロでは行えません。このため、近年増加傾向にあるWebアプリケーションや、クライアントソフトウェアで動作するアプリケーションは、マクロで自動化することができないのです。また、VBAの使い方によっては、複数のPCにまたがる作業の自動化も可能ですが、一般的にマクロの自動化対象は、1台のPCの中で完結すると考えてよいでしょう。

RPAの場合は、自動化できる業務範囲が格段に広がります。Microsoft社のOffice製品はもちろんのこと、Webブラウザで動作するERPやグループウェア、CRMやSFA、さらにはクライアントソフトウェアとして動作する会計ソフトなど、日々PC上で操作しているシステムであれば、ほぼなんでも対象にできると考えてよいでしょう。さらに、1台のPCによる作業に限定することなく、複数のPCにまたがる作業も、自動化の対象とすることができるのです。

RPAツールの導入は、対象とする業務をモニタリングし、その手順をRPAツール上で再現できるように設定することで、自動化を実現します。Microsoft社のOffice製品に限定したマクロと比較すると、RPAツールが自動化の対象とする業務の範囲は、格段に広いといえるのです。

処理スピード

RPAとマクロは、自動化の処理スピードにも違いがあります。

マクロの場合、プログラムを組んで自動化を実行するのはPCです。このため、特別な処理をすることが想定されていない、一般的なPC上でマクロを動作させる必要があるため、処理スピードが速いとはいえません。もともと、マクロやVBA自体も処理スピードが早いとはいえず、そのスピードを上げるためには、プログラミングの知識も必要となります。

RPAの場合、RPAツールを動作させるのは、一般的にサーバーです。複数のユーザーからの同時アクセスや、大量の処理を前提に設計されているサーバーは、ハードウェア的にもソフトウェア的にも、通常のPCとは比較にならないほど高性能です。加えて、RPAツール自体に、処理スピードを向上させるよう、プログラム上の工夫がなされている場合もあります。

自動化する業務量やPCのスペックにも依存しますが、RPAとマクロを処理スピードの観点から比較すると、RPAツールに軍配が上がります

価格

マクロの方が優位である点としては、導入費用があげられます

マクロの場合、Microsoft社のOffice製品にあらかじめ組み込まれているため、マクロを導入するための費用は、人件費以外にはかかりません。Excelの計算式レベルの自動化であれば、誰でもすぐにマクロを使えます。

しかしRPAツールの場合、初期コストが必要になるほか、保守費用も必要になります。クラウド型の導入形式をとる場合は、ランニング費用も必要となるでしょう。ソフトウェア以外にも、サーバーを稼働させるための費用も必要となります。このため、RPAツールを導入するかどうかは、導入費用より導入することで得られる効果の方が高いかどうか、いわゆる費用対効果により判断する必要があるのです。

このように、RPAとマクロを比較した場合、多くの面でRPAが優れていますが、価格面ではマクロに優位性があるといえます。しかし、一般的な導入効果はRPAの方が格段に大きいため、RPAは多くの場合で、マクロよりも費用対効果が高いといえるでしょう。

マクロよりもRPAを導入すべき場面は?

自動化という共通項はありつつも、それぞれ違う特徴を持つマクロとRPA。多くの側面でRPAが優れていることがわかりました。

それでは、具体的にはどのような場面で、マクロではなくRPAを導入するべきなのでしょうか。

複数のシステムにまたがる作業を自動化する場合

販売数値データや営業活動データを複数のシステムから入手し、Excelに張り付けてレポートを作成する…といったように、複数のシステムにまたがる作業は、マクロだけでは完結できません。RPAツールの導入により、こうした複数のシステムにまたがる単純作業を自動化することができ、人件費の負担を減らすことにもつながります。人的ミスを減らし、業務の品質向上も期待できるでしょう。

さらに将来的には、AIを使うことで、RPAの対象範囲を定型業務から非定型業務へと広げていくことが期待されています。RPAはまだ世の中に登場して間もない、発展途上のツールです。その分、更なる今後のブラッシュアップも期待されているといえるでしょう。

情報システム部門の負担を減らしたい場合

RPAツールの特徴の一つに、その設定の容易さが挙げられます。このため、導入したRPAツールの設定を、業務方法の変更に合わせて現場の担当者自らが変更できるのです。このことは、情報システム部門の負担減少に繋がります。

しかし、情報システム部門がRPAの導入に関与しないと、管理者や、設定のわかる社員のいない「野良ロボット」になってしまう可能性があることに注意が必要です。必要な設定変更がなされないまま業務の中に組み込まれたり、誰も管理せず修正のないまま放置されたりすると、間違ったアウトプットをし続けるという問題を引き起こすのです。実際に、近年企業の間では、野良ロボットの存在が問題視されるようになってきました。

情報システム部門の負担を減らす意味でRPAを導入する場合でも、管理や設定については一定のルールにのっとって運用していく必要があるでしょう。

おすすめのRPA

大企業を中心に導入が進んでいるRPA。導入事例にも、有名な大企業が名を連ねています。しかし、企業規模にかかわらず、RPAツールの中にはマクロ同様の手軽さで導入できるものも出てきました。ここでは、そういった手軽に導入できるRPAを3つ紹介します。

BizRobo!mini

BizRobo!mini
BizRobo!mini

日本国内のRPA市場において大きな存在感を示す、RPA テクノロジーズが提供する「BizRobo!」。「BizRobo!mini」は、中小企業などをターゲットとしており、安価かつお試し導入も可能なRPAツールです。高価なサーバーが必要なくPCで設定ができるうえ、スケールアップも簡単にできるRPAツールとなっています。

国内の豊富な導入実績もあり、サポートも充実。ナレッジサイトやラーニングサイトが用意されているので、初めてのRPAツール導入の際にもかなり役立つのではないでしょうか。初めてRPAを導入する企業や中小企業の場合、ぜひ検討したいツールであるといえます。

CELF RPA オプション

CELF RPA オプション
CELF RPA オプション

SCSK社が提供する大衆普及型RPA「CELF RPA オプション」。まるでExcelを操作するような感覚でWebアプリケーションが作れるサービス「CELF」に対し、Webアプリ作成機能とRPAエンジンを融合した世界初の業務効率化ツールが「CELF RPA オプション」です。

その特徴の一つに、親しみやすいインターフェースによる操作性があります。業務の操作手順を、マウス操作によるドラッグ&ドロップで簡単に設定することができるのです。開発支援や教育サービスが充実しているので、初めてでも安心して導入できます。

「CELF RPA オプション」は30日間の無料オプションが用意されていることに加え、その金額は年間35,000円です(別途CELEFの購入が必要)。まずは無料トライアルで検証してみましょう。

Autoジョブ名人

Autoジョブ名人
Autoジョブ名人

受注から出荷までの業務効率化を追求する、ユーザックシステムが提供しているRPAツールが「Autoジョブ名人」です。さまざまなパソコン操作を自動化する「Autoジョブ名人」のほか、Webアプリケーションによるブラウザ操作を自動化する「Autoブラウザ名人」、メールに伴う一連の操作を自動化する「Autoメール名人」と、様々なRPAが揃っています。自動化したい業務内容に合わせ、必要最小限のソフトウェアを導入できることは大きな特徴であるといえます。開発体制やサポート体制も充実しているため、面倒な開発や日々の運用も強力にサポートしてくれます。ライセンス費用も安く抑えられるため、導入を検討しやすいRPAツールです。

まとめ

自動化という共通点を持ちながら、様々な点で違いのあるRPAとマクロ。自動化できる範囲や設定方法が限定的なマクロが、特定業務の自動化に留まる一方で、RPAは自動化の対象範囲を広げることで、市場を席巻してきました。また、RPAはまだまだ発展途上のサービスです。AIを活用した非定型業務への応用や、続く新規RPAツールの参入により、今後も市場は活性化していくでしょう。

マクロ以上に簡単に導入でき、マクロ以上に多くの業務を自動化できるRPA。大きな導入効果で働き方改革にもつながりやすいRPAは、ぜひ導入を検討したいツールであるといえます。