15万社以上に導入されているCRM「Salesforce」。日本国内でも、マーケティングやセールス、カスタマーサクセスなど、社内で顧客データを管理するサービスとして、多くの企業が導入しています。

そのSalesforceで多くの方が一番目にするのが、ダッシュボード画面ではないでしょうか。

Salesforceのダッシュボードでは、獲得リード数や案件数などの項目を自由に表示でき、組織内の情報がひと目で把握できます。どの数値をどのように表示させれば、より自社の状況が把握しやすいのか、日々手を加えながら改善を重ねているマーケターの方も多くいることでしょう。

この企画ではそんな誰もが利用するSalesforceのダッシュボードを実際に拝見し、各社の工夫やポイントを紹介していきます。

第1回はソーシャルテクノロジーによるマーケティング支援事業を行うアライドアーキテクツ株式会社の執行役員である藤田佳佑氏にお話を伺いました。

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藤田佳佑氏 プロフィール

アライドアーキテクツ株式会社 執行役員 藤田佳佑(フジタケイスケ) 
証券会社でリテール営業を3.5年、人材会社で営業1年の勤務を経て2013年にアライドアーキテクツ入社。大手企業向けのSNSプロモーションの企画提案営業・SMB向けの自社SaaSプロダクト営業を担当。 
2018年にインサイドセールス部門を立ち上げ。2019年、執行役員プロダクトカンパニー担当に就任。現在は、モニプラファンブログの事業責任者、SaaSプロダクト事業のセールスマーケを統括する。

Salesforceでインサイドセールスを評価する仕組みを作る

ferret:
では、早速ですがダッシュボード画面を拝見させていただいてもよろしいでしょうか。

藤田氏:
こちらが普段一番良く見ている画面です。

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ダッシュボード項目

  • アポ獲得数(週次・メンバー別)
  • 案件総量(月次・フェーズ別)
  • 受注案件数(月次・メンバー別)
  • 先週のアポ獲得数(日次・メンバー別)
  • 今週のアポ獲得数(日次・メンバー別)
  • 有効リード所有数(メンバー別・リード種別)

藤田氏:
ここはダッシュボードあるあるで、左から順に「アポ→案件→受注」と並べています。

ferret:
確かにそうやって並べると、ぱっと見て理解しやすいですね。

拝見してまず特徴的だなと感じたのですが、受注案件数をインサイドセールスの担当者ごとに出しているんですね。受注というとフィールドセールス、といったイメージもありますが。

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藤田氏:
そうですね。これはインサイドセールスメンバーの最重要KPIが受注貢献数であることと、インサイドセールスメンバーが受注貢献をしている時には賞賛したいからです。

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受注したときって、クローズしたフィールドセールスに注目が集まってしまうので、ついついフィールドセールスが目立ちがちなんですよね。もちろんフィールドセールスも褒められるべきですが、良いパスを出したインサイドセールスも同じくらい賞賛したいです。

ferret:
それくらいインサイドセールスを重要視しているのですね。

藤田氏:
そうですね。極論を言えば、インサイドセールスがめちゃくちゃ良いアポを取るとフィールドセールスはすごく楽なんですよね。逆に、インサイドセールスが無茶をしてアポを取ると顧客は時間が勿体無いし、我々も営業効率が落ちてしまいます。インサイドセールスは、アポイントを創るという立場なので、営業成果を左右する非常に重要な役割です。

性善説マインドをダッシュボードに反映

ferret:
インサイドセールスを重要視している一方でコール数やアポ率などの数字までは出していないんですね。

藤田氏:
そういった細かい数字は見ておらず、週次でのアポ獲得数をみていますね。

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コール数は日次でスプレッドシートに入力してもらっていて、Salesforceでは見ていないです。
全てのコールをSalesforceの活動に入力すると現場の負荷が高くなってしまうことと、コール数まで管理するようなマイクロマネジメントをできればしたくないと思っていることが理由です。みんな成果を出すために頑張ると信頼しているので、見ている指標も結果となる獲得アポ数だけですね。

成果がまだ安定しない社歴が浅いメンバーや、成果が上がらないメンバーは、コール数・アポ獲得率まで見てフィードバックをした方が良いので、そういう時はスプレッドシートを見に行きます。

編集日ごとの出力で案件の進捗を可視化

藤田氏:
案件の進捗は行動管理とは別なので、可視化しています。

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ferret:
これは案件の編集日ごとに商談のフェーズを出しているのですね。

藤田氏:
*フェーズが動いた案件をフェーズ変更日ごとに出力することで、案件の動きを可視化しています。*これが見れると、知らないうちに案件が失注になっていた、みたいなことが無いので便利ですね。

別のロジックを設定すれば、見積もりが変動したものだけを出力したりもできるので、全体の案件管理に役立っています。

ダッシュボードで数値の肌感を身につける

藤田氏:
あとは、最近になって「リードソース」と「アポのきっかけ」をダッシュボードに表示しました。

salesforce apo.png

ferret:
この項目は以前まではなかったのですか?

藤田氏:
弊社はインサイドセールスをまず立ち上げることに注力していたため、2018年まではマーケティングに非注力だったんです。

その後インサイドセールスが機能しはじめて、リードが不足してきたんです。工場で例えると、生産力は上げられたものの、原料が足りないという状況ですね。

そこで、マーケティングに注力していくことになり、マーケティング施策で獲得したリードからの受注を全体の8割にするという目標を設定しました。この項目はそのための効果測定をするために使っています。

ferret:
実際にこの項目を設定してどのような変化がありましたか?

藤田氏:
リードソースとアポのきっかけを毎日目にするダッシュボードに表示することで、肌感としてどこからのリードが多いのか、どういった施策をきっかけにしてアポがよく生まれているのかが分かるようになってきました。

この肌感って意外に重要で、月次のマーケティングチームとの打ち合わせでも、以前よりもより数字の深堀りができるようになりましたし、「ある特定のリードからの商談数が少ない」となった場合にも「一時期は良かった記憶があるから、この施策を打てそうだ」といったように、数字に対しての理解がしやすくなったとともに次の施策立案・実行もスムーズになりました。

Salesforceでモチベーションアップ

ferret:
このダッシュボードで一番のこだわりはどこでしょう?

藤田氏:
インサイドセールスのメンバーが抱えているリリース対象リードを可視化した部分ですね。

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具体的には、リードの中でも2ヶ月間活動が入力されていないものをリリース対象リードとみなして、他のメンバーが横取りできるようにしています。

ferret:
このリリース対象リードからの受注も多く生まれていますか?

藤田氏:
そうですね。受注の2〜3割がこのリリース対象となったリードから生まれています。

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ferret:
横取りOKにして、メンバーの反感などはありませんでしたか?

藤田氏:
メンバーの反応は逆にとても良かったですよ。これって*管理ではなく、受注という成果を出すための仕組みなんです。*みんなそこが分かっていますし、「ちゃんと見込みリストを追わないと横取りされる、逆に案件を奪うチャンスもある」という、焦りとメリットを一緒に提示するとアテンションは上がりますよね。

ferret:
確かにメリットがちゃんと分かっていれば問題ないですね。

きっかけは「Salesforceが使えればキャラが立つ」

ferret:
ここからはダッシュボードから少し離れて、Salesforceへの想いを語っていただきたいのですが、そもそもSalesforceを本格的に利用し始めたのはいつからだったのでしょう?

藤田氏:
僕は今の会社に入って初めてSalesforceを使いました。なんとなくSalesforceのことは知っていたものの、最初は中々使いこなせず苦労しましたね。

ferret:
そこで嫌にはなりませんでしたか?

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藤田氏:
やっぱり色々とSalesforceについて調べてみると、全社で使っていましたし、このツールはこの会社でずっと使われ続けるツールだなと感じたんです。当時は社内に特別詳しい人がいたわけではないので、これを使いこなせれば中途入社の僕でもキャラ立ちするのではと思い、本格的に触り始めました。もともとこういったツールは好きだったというのもありますね。

ferret:
最初はどのようにして使っていたのですか?

藤田氏:
最初は社内の人に「レポートってどうやって作るの?」と聞くことから始めましたね。そうやってレポートとダッシュボードの仕組みを理解して、自力でダッシュボードを組めるようになるまで7,8ヶ月くらいかかりました。

徐々に自分でもどんどんと使えるようになってきたので、今では他の人が見つけていない条件を組んで「これ宝の山じゃん!!」って楽しんだりしていますよ。

ferret:
確かにSalesforceって機能が多いのでそういった発見もありますよね。

藤田氏:
そうなんです、だからその分難しいという側面もありますね。でも、*使わなきゃいけないツールをめんどくさがるのは簡単にできますが、どうせなら詳しくなればいいなと思うんです。*それだけで自分のスキルにもキャラにもなりますから。

ferret:
確かにそうですね。どんなツールにも言えることだなと感じました。

改めて本日はダッシュボードを大公開していただき、ありがとうございました!

藤田氏:
こちらこそありがとうございました!

ダッシュボードは仕組みづくりの役割を担う

今回拝見させていただいたダッシュボードは、単なる顧客や案件の管理だけでなく、チームメンバーの評価や、モチベーション向上に繋がるようなマネジメント視点での仕組みづくりの一端も担っていたように感じました。このように組織づくり全体を意識したツール設計が、より高い成果につながるヒントとなるのではないでしょうか。

第2回はこちら

Salesforceのダッシュボード見せてもらってきた【カクテルメイク編】

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世界シェアNo.1のCRMであるSalesforceは、顧客とマーケティング活動の情報を集約し、マーケティング活動の中心となっているツールです。 このSalesforceのダッシュボードには、企業それぞれのマーケティング戦略やマネジメント思想が反映されているのではないでしょうか。この企画では各社のSalesforceのダッシュボードを紹介していただきながら、その会社独自の戦略や思想を探っていきます。 第2回となる今回は動画作成ツール「RICHKA」を提供する株式会社カクテルメイクの高安氏にお話を伺いました。