世界シェアNo.1のCRMであるSalesforceは、顧客とマーケティング活動の情報を集約し、マーケティング活動の中心となっているツールです。

このSalesforceのダッシュボードには、企業それぞれのマーケティング戦略やマネジメント思想が反映されているのではないでしょうか。この企画では各社のSalesforceのダッシュボードを紹介していただきながら、その会社独自の戦略や思想を探っていきます。

第2回となる今回は動画作成ツール「RICHKA」を提供する株式会社カクテルメイクの髙安氏にお話を伺いました。

The Modelを基盤とした組織体制

ferret:
本日はよろしくお願いします。

カクテルメイクでは、マーケティング・セールス・カスタマーサクセスの3つのチームでSalesforceを利用されているとお聞きしました。まずこの組織の概要についてお聞かせください。

髙安氏:
まず基本の構造としてはSalesforceの「The Model」を元にしています。

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髙安氏:
マーケティング部門がインバウンドでリードを獲得して、そのリードに対してインサイドセールスがアプローチをします。そのインサイドセールスが獲得したアポをセールスに引き継いで受注を獲得し、その後カスタマーサクセスが受注後の対応をする流れですね。

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引用:
インサイドセールスの活用で、営業部門が一気に効率化する! | セールスフォース・ドットコム

髙安氏:
これらのチームはそれぞれの指標がつながっているので、その連携をスムーズにするために
Salesforceを活用しています。

重要なのはターゲット業種のリード数

ferret:
では早速、マーケティングのダッシュボードについて解説いただけますか?

髙安氏:
基本となるのはこちらのボードです。

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髙安氏:
マーケティングでは、成果指標として*「全リード数」「商談化数」「ターゲットリード数」*の3つの指標を置いています。

ferret:
「全リード数」と「商談数」についてはそのままの意味だと思うのですが、「ターゲットリード数」とはどのような指標でしょうか?

髙安氏:
これは全リードの中で弊社がメインのターゲットとしている業種の企業のリード数ですね。獲得リード数が基本の目標となっているものの、それがターゲット外の業種のリードだとアポも取りづらく、商談もスムーズではありません。

ですので、まず全体として何件の新規獲得リードがあるのか、そしてその中に何件の有効なターゲットリードがあるのかを目標数値として見ていますね。

ferret:
その目標数値に紐づく指標などはありますか?

髙安氏:
この「全リード数」「商談化数」「ターゲット企業数」の3つのリードのそれぞれのリードソース(資料請求・トライアル・ホワイトペーパー等)と、CVが生まれた広告クリエイティブがそれぞれ紐付いた形でデータ化されています。

これらの数値を組み合わせて分析することで*「クリエイティブを変更してCPAを下げてリードは獲得できたものの、ターゲットリードは獲得できていない」*といった問題に気づけますね。

また、商談フェーズの進捗データとも照らし合わせることで、*どの業種だと商談が進みやすいのか、その業種を獲得するにはどのクリエティブが有効なのか、*などを分析できるため、リード獲得の戦略立案に活かせます。

インサイドセールスのKPIはターゲットリードからのアポ数

ferret:
では次にインサイドセールスのダッシュボードについて教えていただけますか?

髙安氏:
インサイドセールスではこちらのダッシュボードを主に利用しています。

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髙安氏:
インサイドセールスの成果指標はターゲットリードからのアポ獲得数としていますので「誰が、何社、誰に接触して、何件アポが取れたか」をダッシュボードで把握できるようにしています。

ferret:
インサイドセールスの成果指標は多くの企業が悩まれている部分だと思うのですが、なぜこのターゲットからのアポ数にしているのでしょう?

髙安氏:
*インサイドセールスとフィールドセールスの間のギャップを埋めたい、*というのが主な理由ですね。

フィールドセールスからしたら、受注に繋がりやすい「良いアポ」がほしいのは当たり前じゃないですか。でもインサイドセールスは基本的にアポ以上の受注数などを目標にしてしまうと、自分でコントロールできない部分が増えてくるので厳しくなってしまいます。

弊社では商談・受注に繋がりやすいターゲット業種を明確に定めているので、このターゲットリードからのアポ数を成果指標に置くことで、そのギャップを埋めようという狙いがありますね。

ferret:
自然に質も担保される指標ということですね。

髙安氏:
そうですね。やはりサブスクリプションビジネスですので、解約が多いと売上が積み上がっていかないんです。ターゲット業種は解約も少ない傾向にあるので、そういった部分も加味して、この成果指標にしています。

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髙安氏:
また、成果指標としては定めていませんが、*自分が獲得したアポがその後どうなったかもダッシュボード上で可視化しています。*成果指標はあくまでアポ獲得ですが、その後受注になったのか、失注になったのかを把握するだけでも、良いアポを獲得する姿勢にはつながっていくかなと考えています。

ferret:
このセミナーへの案内数とはどのようなものですか?

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髙安氏:
これは*インサイドセールスのもう1つの成果指標です。*問い合わせをしてリードになったものの、アポを取って商談をするほどのスピード感ではなかったり、架電だけではナーチャリングしきれないときなどに弊社が主催するセミナーへの案内をしています。

やっぱりアポ獲得数だけが目標になってしまうと、*どうしても今商談すべきではないリードに半ば強引にアポを取ってしまうことがあります。*ですが、結局このような形で取ったアポは受注に繋がりづらいですし、受注したとしても解約してしまうケースが多くあります。そういったことを防ぐために、アポ獲得とナーチャリングの2つの成果目標を立てています。

セールスの動きはすべてSalesforceに残す

ferret:
続いて、フィールドセールスのダッシュボードについて解説していただけますか?

髙安氏:
フィールドセールスではこのダッシュボードを見ていることが多いですね。

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髙安氏:
フィールドセールスでは、成果指標となる契約社数・売上に紐づく指標である提案社数(=活動社数)を大きく表示しています。

ferret:
提案社数を過去30日の累積にしているのはどのような理由があるのでしょう?

髙安氏:
やはり弊社の商材はBtoB向けのサービスなので、*どうしても提案から受注までのリードタイムが発生してしまうんです。*つまり、前月からの活動が当月の受注数・売上につながってくるため、過去30日間で見ていますね。

ferret:
ダッシュボード下部の「◯日活動がない企業〜」というのは何でしょうか?

髙安氏:
弊社では1つの案件には原則1人のフィールド担当者からしかアプローチができないようにしています。しかし、手持ちの案件が多すぎるとアプローチが追いつかなくなり、ずっと活動が止まっている案件が発生してしまいますよね。

これを防ぐために、基本的には一定期間活動が無い案件はフィールドセールスからインサイドセールスへ案件が強制的に返還されるようにしており、このダッシュボードはその対象となる企業の一覧です。

しかし中には「1ヶ月先のアプローチは決まっている」といった案件もあるため、そういった案件はステータスを「関心維持」に設定し、一人あたり100件まで案件を持っておくことができます。この「関心維持」の案件も一定期間活動がないと、同じようにインサイドセールスへ強制返還されます。

ferret:
埋もれてしまってアプローチが止まっている案件をなくすための取り組みということですね。

なんだかルールが複雑な印象もあるのですが、運用はスムーズに回っているのでしょうか?

髙安氏:
そうですね。商談のパイプラインを整備した上で、Salesforce上にそれぞれのフェーズの定義とルールを記載しているので、Salesforceを見れば全てがわかるという環境にしています。

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ferret:
あくまで必要な情報はSalesforceに集約するのがポイントなのですね。

導入事例につなげるカスタマーサクセス

ferret:
では最後にカスタマーサクセスのダッシュボードを紹介いただけますか?

髙安氏:
カスタマーサクセスでは、まずこちらのダッシュボードを見ています。

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髙安氏:
カスタマーサクセスの役割は名前の通り、受注後のお客さまをサクセスさせることですので、ここにはその状態が俯瞰して判断できるための数値を並べています。

ferret:
ではこのダッシュボードを見れば全体としてどれくらいのお客さんが満足して利用できているかが分かるということですね。

髙安氏:
そうですね。

また、お客様ごとに、サービス導入が決まる段階で商談の担当者が「このお客さんはどうなったらサクセスするのか」といった情報を記入し、カスタマーサクセス担当者が日々の利用状況等を記載したデータもあるので、個別の状況を把握したいときにはそちらのデータも参照しています。

ferret:
その情報を元に、お客さまがサクセスするために必要な行動をしているということですね。

髙安氏:
そうですね。お客様がサクセスすることで、それを導入事例として紹介できるようになります。やはりBtoBのサービスでは事例が非常にマーケティングや商談の場で重要になりますので、ここには非常に力をいれています。

それぞれが必要な数字を出せるように

ferret:
マーケティング、インサイドセールス、フィールドセールス、カスタマーサクセスのダッシュボードを拝見して、数に圧倒されたとともに、全社の基盤としてSalesforceが構築されているなと感じました。

髙安氏:
そうですね。でも、実は今紹介したダッシュボードは全社的にはそこまで利用されていないんです。

ferret:
どういうことですか?

髙安氏:
弊社では、*個人ごとにダッシュボードを作成している社員が多いんです。*例えばフィールドセールスであれば、自分が提案した企業の数や受注した企業の数、自分の商談のリードタイムなど、その人によって必要な情報を抜き出したダッシュボードを作っています。

ferret:
なるほど。最適化されたダッシュボードということですね。

髙安氏:
そうですね。やっぱり*Salesforceってカスタムできる範囲が広いのが良い点だと思うんです。*なので会社ごと、部署ごとにダッシュボードを整備している企業は多いですよね。

ただその利点を活かすのであれば、*個人ごとにダッシュボードを作れるのが一番理想の形だと考えているので、*そのために必要な情報を、知りたいときに知りたい形で抽出できるデータベース的なサービスとして使っていければいいなというのが僕の思いですね。

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ferret:
そうなるとそれぞれの活動がさらに1段レベルが上がりそうですね。

本日はありがとうございました!

プロフィール

髙安正一郎氏
20代前半は営業代行会社にて大手通信キャリアの法人営業や広告代理店事業に従事した後にフリーランスの営業になる。 その後Google日本法人にて新規広告営業部へ配属され、オンライン広告の法人営業に従事。 2019年にカクテルメイクへ入社し現在はセールスイネーブルメントを担当。 マーケ、セールス、カスタマーサクセスの顧客状況、状態を可視化し戦略立案が出来るように、20代の営業経験を活かしSalesforce構築〜営業分析までシームレスに従事しています。

第1回はこちら

Salesforceのダッシュボード見せてもらってきた【アライドアーキテクツ編】

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CRMの世界シェアNo.1である「Salesforce」。日本国内でも、マーケティングやセールス、カスタマーサクセスなど、社内で顧客データを管理するサービスとして、多くの企業が導入しています。そのSalesforceで多くの方が一番目にするのが、ダッシュボード画面ではないでしょうか。Salesforceのダッシュボードでは、獲得リード数や案件数などの項目を自由に表示でき、組織内の情報がひと目で把握できます。どの数値をどのように表示させれば、より自社の状況が把握しやすいのか、日々手を加えながら改善を重ねているマーケターの方も多くいることでしょう。この企画ではそんな誰もが利用するSalesforc