優れた広告コピーは商材の魅力を存分に伝えると同時に、多くの人々の共感を生みます。一方で、近年は様々な広告コピーが批判を浴び、炎上するといったケースも少なくありません。

では、2020年の今、共感を生むための「広告コピー」に必要なことは何なのでしょうか。
2020年2月6日、幕張メッセで開催された「2020 Japan マーケティング Week 春」より、今回は広告強化コース「『I love you』から考える、伝えるではなく伝わる言葉のつくり方」のセッションの様子をお伝えします。

登壇者

阿部 広太郎氏
株式会社電通 コンテンツビジネス・デザイン・センター  ビジネス・デザイン部 コピーライター/プロデューサー

人事局に配属後、入社2年目からコピーライターに。言葉の力を味方につけて「世の中に一体感をつくる」コンテンツを企画する。映画、テレビ、音楽、イベントなど、エンタメ領域からソーシャル領域まで境界を越えて取り組んでいる。映画「アイスと雨音」、映画「君が君で君だ」、舞台「みみばしる」プロデューサー。ソーシャルエンターテインメントの「ダイアログ」シリーズのクリエーティブディレクション。ドキュメンタリー番組「ベッキーと未知との対話」企画・プロデュース。BUKATSUDO講座 「企画でメシを食っていく」主宰。著書に『待っていても、はじまらない。-潔く前に進め』(弘文堂)、3月4日に『コピーライターじゃなくても知っておきたい 心をつかむ超言葉術」(ダイヤモンド社)を上梓。

引用元:阿部広太郎 ウェブ電通報

コピーとは何か?

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阿部さんはまずはじめに「コピーとは何か?」という自分なりの定義を持っておくことが大切だと言います。そしてコピーを考える上で意識するべきことが2つあるそうです。

「日本で流行しているものは何か?」

阿部氏: 私は言葉だと思うんです。日本語には「新語」や「死語」という言葉があるように、言葉には流行り廃りがあります。言葉の意味合いは時代によって常々変化している。つい数年前までフレッシュだった言葉でも、今では使われないなんてこともあります。言葉は時代と呼吸する。時代によって言葉の意味合いが変化していくことに注意しなくてはいけません。

言葉は心のインフラ

阿部氏:生活を支える水道、ガス、電気のようなインフラのように、人は「言葉」を使うことで心と心が繋がります。言葉を心のインフラだと捉えてみる。人間関係を構築する上で言葉がいかに大切か、再認識する必要があります。

言葉に→(矢印)を込めて届ける

では、阿部さんにとって「コピー」とは一体何なのでしょうか。

阿部氏: 私が考えるコピーの定義は「言葉に対して思いや企てといった→(矢印)を込めて受け手に届けること」です。

阿部さんがコピーの定義をこのように考えるようになったのは、トリスウイスキーのコピー「人間らしくやりたいナ」などで有名な開高健氏の話に感銘を受けたからだと言います。

開高氏は、世界で最も偉大な発明をした人は「ライオンという言葉を発明した人」だと語っているそうです。

阿部氏: 開高さんは「ライオンという言葉がまだ無い時代の人たちにとって、ライオンは爪が鋭く、恐ろしい牙を持つ漠然とした恐怖の塊。しかしこの恐怖の塊が『ライオン』という言葉で概念化された時、それは人間の意識の中で変わってしまう。依然として爪は鋭く、恐ろしい牙を持っているけれど、ただの四つ足の獣に変わる。これによって、その恐怖の塊から克服できたのだ。」と語っています。この話を聞いて私はこんな風に捉えました。ライオンという概念があることで、四つ足の獣だから闘ったり、もしくは逃げたりすればいいと行動に結びつくことで克服できたのだと。

この話を図式化すると、以下のようになります。

言葉→概念→行動

恐怖の塊→ライオン→闘える

阿部氏:みんなが扱っている言葉を選びながら概念を定義することで、人々は行動に移せる。コピーライターは世の中に新しい動きをつくる仕事なのではないかと私は理解することができました。

言葉に対して「こういう風にしよう」や「こんな風になればいいな」という思いの矢印を加えて、受け手に渡すことがコピーだとするならば、なにも広告だけでなく、日常生活の中での会話やLINEでの何気ないやりとりにもコピーはあると思うんです。日常生活の中で「お、いいな」と心が動くことありますよね、こう考えるとコピーは案外身近なものなんです。