ワーケーション普及をめぐる今後の課題

①日本におけるリモートワーク普及率の低さ

新型コロナウイルス感染拡大により、2020年4月7日に政府が緊急事態宣言を出しました。パーソル総合研究所の調査によると、その後テレワークに移行した企業は従来の2倍強に増えたとのことですが、それでも全体の30%を切っています。

つまり、7割の人はリモートワークがどうしてもできない状況に置かれていた、と言えます。

医療従事者、介護従事者、小売業の販売員など、エッセンシャルワーカーとして従事しており、そもそも、現場から離れては仕事が全く成立しない、という人も居ます。

「ワーケーション」提唱と同時に、日本においてどうすればリモートワークがもっと普及するか、という課題も見つめ直す必要があるでしょう。

②コロナ禍における企業業績の悪化、雇用環境の悪化

昨今、「コロナ倒産」「雇い止め」といった言葉をよく聞くように、コロナ禍で全国各地の企業が業績悪化、労働者は雇用環境の悪化に直面しています。

そんな中、「ワーケーション」という取り組みは、どこか遠い世界の、一部の人だけが享受できる仕組みのように感じられ、決して自分ごと化できない労働者・企業も多いのではないでしょうか?前述したように「ワーケーション」は、労働者・企業サイドが期待を抱いていた働き方というよりは、どちらかといえば行政サイドが熱心に推進しようとしている側面があるとも言えます。

よって行政や地方自治体は、今まさにこの、コロナ禍の中での労働者・企業目線に立って、「ワーケーション」の位置づけを改めて考える必要があるでしょう。

③地方のWi-Fi整備率の低さ

「ワーケーション」推進への取り組みにおいては、地方の国立公園などもターゲット地域になっていますが、地方の山間部などではWi-Fi整備率がまだまだ低い、ということも現実です。

行政・地方自治体サイドが「ワーケーション」を推進するならば、都市部と同等のWi-Fi環境を整備してから受け入れをしなければ、ユーザーの満足は得られず、「ワーケーション」の取り組みは定着しないでしょう。

参考:
休暇中に働く? ワーケーションのメリット・デメリット|株式会社日立ソリューションズクリエイト

休暇中に仕事? 「ワーケーション」が支持されぬ6つの理由|YAHOO!ニュース

ワーケーションの未来とは?

日本における「ワーケーション」普及に向けては、行政や地方自治体、ビジネスパーソン、企業のそれぞれが足並みを揃えていくことが肝要です。 

また、「働き方改革」「新しい、柔軟なワークスタイル」「首都圏の人口密集対策」「過疎地の活性化」といった表層的な目論見に留まっているだけでは、決して一般のビジネスパーソンや企業サイドの理解は進まないでしょう。

また、「リゾート地でパソコン越しに上司の顔を見たくない!」といった、ビジネスパーソン側の意識の問題もあります。

これらの課題を乗り越えるためには、例えば「ワーケーションを通じて新たな人脈を他地域に広げ、築いていく」「新たな社会貢献の場を持ち、楽しみを見出す」といったように、ビジネスパーソン一人ひとりが今後のライフスタイルへの「投資」にできるような希望を持てることがキーポイントとなりそうです。

今後日本の社会において「ワーケーション」が定着していくためには、行政・地方自治体本位や、企業本位の目線よりも、何よりビジネスパーソン本位での訴求が必要だと言えるのではないでしょうか。