コロナ禍、そしてテレワークの進展で、訪問しない営業スタイルである「インサイドセールス」が注目を集めています。昨今、導入を進める企業も増えてきており、いま注目の取り組み・職種だと言えます。しかし「ただ、ツールを導入すれば良い」「専任チームを立ち上げれば良い」という訳ではありません。

社内で部門間の連携ができていなかったり、営業フローや目標値(KPI)を適切に描けていないと失敗に陥るケースも多々あり得ます。そこで今回は、インサイドセールスをこれから導入しようと検討している企業に向けて、失敗を招いてしまう7つの要因を解説していきます。

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インサイドセールス導入で陥りやすい失敗ポイント7点

インサイドセールスは、「流行っているから自社でも取り組もう」など、その本質を深く理解しないまま着手すると失敗してしまいます。

インサイドセールス導入時に陥りやすい「失敗」の7つのポイントについてまずは知っておきましょう。

①「ツールありき」で始めてしまう

インサイドセールスを展開するためのツールには「名刺管理ツール」「CRM・SFAツール」「MAツール」「Web商談システム」などいくつかあります。

これらのツールは、目標を達成するための「手段」であり、「ツールを導入したからインサイドセールスが成功する」というものではありません。

中には、トップダウンで「これからはWeb商談だ!」とWeb商談ツールを導入したものの、見込み顧客の理解が全く得られず、商談が成立しないままツール自体はすぐにお蔵入りになってしまった、という失敗例も。

「ツールありき」でインサイドセールス活動を捉えるのではなく、「自社では現状、営業部門においてどんな課題を抱えているか?」「インサイドセールス活動を導入することで、課題をどう解決するか?」「達成したい目標をどう据えるか?」といった点を明確にしてからツールを導入するようにしましょう。

②社内に充分なリード数を保有できていないのに始めてしまう

見込み顧客の情報のことを「リード」と言います。

そのうち、自社からターゲットに対してアプローチした結果得られた顧客情報は「アウトバウンドリード」と言います。

逆に、顧客の方から自社に対して問い合わせ・資料請求などアプローチがあり、その結果得られた顧客情報は「インバウンドリード」と呼ぶことがあります。

当然ながら、後者の「インバウンドリード」のほうが見込み顧客の関心度合い・熱量が高いと見なすことができます。

この「インバウンドリード」の数を自社内で充分に保有していないまま、インサイドセールス活動を始めてもコンタクトを取る相手先もなく一日が終わってしまう、という失敗にもなりかねません。

アメリカは、インサイドセールス先進国だと言われていますが、「米国インサイドセールスプロフェッショナル協会」が実施した「インサイドセールスプロセスレポート,”The-Inside-Sales-Process-Report”」によると、成長企業では1日につき、インサイドセールス1人当たり平均約14社の新規リードを与えている、というデータも存在しています。

よって、インサイドセールスを立ち上げる以前に、「自社には豊富なインバウンドリードがあるのか?」ということをよく検討しましょう。

足りていない場合には、まずはインバウンドリードを集める活動から優先して着手するべきです。

③テレアポと変わらない活動をしてしまう

「インサイドセールス」と「テレアポ」は本質的に違うものです。

「インサイドセールス」は、顧客の熱量に合わせ、柔軟で臨機応変なコミュニケーションを通じて長期的に見込み顧客との信頼関係を醸成・育成し、受注確度の高い状態に持っていくもの。

一方、「テレアポ」とは、商品ありきでコールスクリプトに沿ってセールストークを展開し、フィールドセールスが訪問するための「アポ」を短期的になるべく多く獲得するためのものです。

インサイドセールスでコールスクリプトにとらわれてセールストークを展開し、「テレアポ化」してしまうのは、陥りやすい失敗です。

相手の温度感などを察すること無く、一方的にスクリプトを読み上げて架電しても顧客の心象は悪くなり、「オンラインでのコミュニケーションを通じて顧客との深い信頼関係を築く」という、インサイドセールスの本質から外れてしまうことになります。

特に昨今のBtoB事業などを例に挙げれば、自社が抱える課題を解決できるソリューション型のアプローチが求められている世の中です。

そんな中、「商品ありき」のコールスクリプトに囚われていては、相手に刺さりません。

さらに、「インサイドセールス」と「テレアポ」を混同したまま体制づくりを進めてしまうと、人員配置・採用のミスも生じます。

HubSpot Japanが行ったリサーチによると、インサイドセールス人材の採用において経営者が重要だと考えている経験は重要度の順に下記の通りです。

  1. インサイドセールス現場経験(36.7%)
  2. 外勤営業経験(31.7%)
  3. マーケティング経験(21.7%)
  4. 新卒(6.7%)
  5. コールセンター経験(3.3%)

この結果を見ると、インサイドセールス人材には「コールセンター経験」よりも「マーケティング経験」が重視されていることが分かります。

参考:法人営業とインサイドセールスに関するデータ集|HubSpot

④トレーニングやコーチング、ノウハウの蓄積・共有を行わない

インサイドセールスでは、フィールドセールスとはまた違って、ツールやシステムをフル活用するスキルも必要となります。そのようなツールやシステムの活用方法のトレーニングも重要です。

「実務が優先だ」と考えて、メンバーへの教育を怠ると、一人ひとりが思うようにパフォーマンスを発揮できず、失敗の一因となります。

また、ツールやシステムの活用方法に関するトレーニングだけではなく、高いパフォーマンスを発揮しているメンバーのトークを録音・録画して他メンバーに共有する、ということも大切です。

Web会議システムには、このような録音・録画機能が付いて、チーム内のスキルアップに寄与するものもたくさんあります。

スキルやノウハウの属人化を避け、チーム全体でインサイドセールスの成果を上げられるよう、トレーニングやコーチング、スキルの蓄積・共有も行っていくようにしましょう。

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⑤見込み客の情報管理・共有がうまくできていなく、仕組みが破綻してしまう

インサイドセールス担当者は、見込み顧客に対し、オンラインツールなどを用いて事前のヒアリングを重ねていくのが役割です。

コミュニケーションを繰り返して受注の確度が高まったらフィールドセールスにトスする、といったフローが想定されます。しかし、陥りがちな失敗は「見込み顧客の情報管理・共有が部門間でうまくできていない」ということ。

ここで必要になるのがSFA・CRMツールです。インサイドセールスがヒアリングした内容を、SFA・CRMツールに細かくテキスト化・データ化して入力しておきます。

そうすれば、フィールドセールスにトスした後で、見込み顧客に対するコミュニケーションのプロセスが明文化され、情報の行き違いがなくなります。

これができていないと、フィールドセールスが実質「手ぶら」で顧客の元へ訪問することになったり、既に電話で話した内容をまた一から現場で話し始めて、顧客の心象を悪くする、営業がうまくいかない、といった事態にもなりかねません。

⑥インサイドセールスとフィールドセールスとで明確な部門間KPIを設定していない

インサイドセールス活動によって高めた顧客の熱量・受注確度を、フィールドセールスにトスしてクロージングに繋げていくことになります。

しかし、この過程で「顧客の熱量・受注確度」というものを明文化・数値化し、部門間で明確に連携ができていないと、営業責任の押し付け合いにもなりかねません。

そこで重要になるのが「KPI」の策定です。

例えば「インサイドセールスは月に何件のSQL創出」「フィールドセールスは上がってきたSQLに対して何%の受注創出」などと、営業活動の全体像を明確に数値化した目標です。

ここで言う「SQL」とは「Sales Qualified Lead=セールス担当が営業活動をする価値があると判定したリード」のこと。インサイドセールス活動によって見込み客の育成が進み、フィールドセールスにトスする価値があると判定した人のことです。

「SQL」の価値を数値化するためには、「BANT条件」と呼ばれるものを明文化することも重要です。

BANT条件」とは、

B:Budget = 予算
A:Authority = 決裁権
N:Needs = 必要性
T:Timeframe = 導入時期

のこと。

例えば上記4項目をインサイドセールスがヒアリングできたらCRM・SFAに明文化して顧客情報として入力を漏れなく行い、フィールドセールスにトスします。

営業活動においてブラックボックス化・属人化しがちな「受注確度」を可能な限り明文化・数値化していくことで、インサイドセールとフィールドセールスが互いに連携して、効率的に営業活動を展開していくことが可能になるのです。

⑦中立的な意思決定者(マネージャー)を配置していない

インサイドセールス、そしてフィールドセールスの部門間を横断してマネジメントする中立的な意思決定者の存在も必要です。

前述したとおり、部門間で営業に対する責任を分担することになりますから、どちらか部署の仕事の質が低下したりすると、双方に責任の押し付けあい、責め合いにもなりかねません。

具体的に言えば、以下のような状況が想定されます。

SQLの引継ぎルールを明確にしていない

インサイドセールスがコミュニケーションをとって、確度高く育成された顧客(SQL)をいつ、どのタイミングでフィールドセールスに引き渡すのか?という点が明確になっていないと、せっかく熱量を高めた見込み顧客を取りこぼしてしまうことにも繋がりかねません。

そこで、両部門を横断してマネジメントする意思決定者が明確なルール作りをすることが必要でしょう。

インサイドセールスと、フィールドセールスがコンフリクトしてしまう

インサイドセールス部門と、フィールドセールス部門とで対抗意識が強くなったり、上下関係が生まれてしまうと、コンフリクト(軋轢)が生まれて営業部門全体が破綻してしまうことにもなりかねません。

受注を目指すあまりに、本来はもっと高額でクロージングできるものをインサイドセールスが取ってしまったり、逆に、顧客が必要としていないものまでも含めて高額でクロージングしてしまったり、という失敗例も存在します。

この観点からも、インサイドセールス、フィールドセールス双方から判断・評価を委ねることができる、中立的な意思決定者が必要だと言えます。

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参考:
インサイドセールスに必要な4種のツールとは?立ち上げ成功のカギを握る導入ステップ徹底解説|HubSpot

インサイドセールスを失敗させる8つの原因|セールスハックス

インバウンドとアウトバウンド。BtoBマーケティング実践における2つの関係性と成果を出すための考え方|ワンマーケティング