“競合を丸裸に”で定評のあるイスラエル発、競合サイト解析ツール『SimilarWeb』のカンファレンス「Digital Vision Japan」がSimilarWeb社と日本総代理店のギャプライズ社の共催で3月18日に開催されました。同カンファレンスでは、SimilarWeb社からも数人が来日し、日本マーケットの動向と同社の今後の展望についての発表が行われました。本記事では、その模様についてご紹介したいと思います。

データから見る、日本ならではの傾向とは

日本では2014年から本格的にエンタープライズ版である「SimilarWeb Pro」の提供を開始したSimilarWeb社。1年間を通じて改めて日本マーケットの動向と他国との違いについて、同社ならではのデータ解析に基づいた傾向をInternationl Sales Director Avi Wiesenberg氏が語りました。

日本のメッセンジャーアプリ利用について分析した結果、面白い発見をしたと語るWiesenberg氏。

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Wiesenberg氏:
日本のいくつかのデータを調べてみた。この日本の有名なアプリを見てほしい。驚くこともないだろうがLINEである。みんなメッセージの交換が大好きだ。そして、この驚くべき統計をみてほしい。80%のインストール率を保持し、1日あたり44分間利用さている。

特に驚くのが平均との比較である。メッセージングアプリのロイヤルユーザー率は 20%だが、ラインは90%とリテンンション率ががとても高い。

そのほか、Wiesenberg氏によれば利用傾向としてアジア圏でもタイやインドネシアを中心にLINEがシェアを占めていると言います。対して、シンガポール、フィリピン、特にインドではWhats Appが台頭し、フィリピンでは圧倒的にFacebookメッセンジャーが使われていることがわかりました。

また、ソーシャルメディアの利用傾向においては大きく他国との違いを見せました。

Wiesenberg氏:
日本では、55%がTwitterを使っている。しかもこれはデスクトップでのトラフィックなので、スマホのトラフィックも踏まえるとFacebookが追いつくのは難しいかもしれない。

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日本人は賢い買い物がしたい

次にWiesenberg氏は、日本のオンラインショッピングの傾向についても言及。

Wiesenberg氏:
私たちはショッピングが好きで、ついオンラインでもモノを買ってしまう。このグラフを見る限り、日本人はアメリカ人よりオンラインショッピングが好きなようである。

日本におけるすべてのトラフィックの8.5%がオンラインでのショッピングによるものである。実際にオンラインショッピングでどこに行き着いているかを見てみよう。

Amazonがナンバーワンで楽天やYahoo!が並ぶことがわかる。ブランドを見るとaddidasなどのメインブランドに注目が置かれている。

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Wiesenberg氏:
ここからは私たちの分析だが、日本のTOP10サイトを見る限り2つ(カカクコム、ECナビ)が値段比較のできるサイトであることがわかる。

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Wiesenberg氏:
これはUSAの購買傾向と大きく異なる。USAではAmazonやBest Buyなどのブランド力のあるサイトを使うが日本人はECナビなど比較のできるベストな価格を提示してくれるサイトをつかう。

このことからも日本は購入前に比較・検討し、自分が納得したうえで購入をしたいという傾向が強く、対してアメリカはよりブランド力のあるところで購入する傾向が強いといった購買行動の違いが見られたことを明かしました。

成長してるのに実は競合に負けている?競合分析が必要なワケ

次にSimilarWeb PROをビジネスで利用するデロイトトーマツコンサルティング合同会社、株式会社ジェネレイト、ソネット株式会社の特別講演が行われました。以下は、SimilarWeb PROを使った実践的な競合分析方法について講演した株式会社ジェネレイトの中川 太氏。

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よく使われるGoogleアナリティクスの場合、自社のデータは分かるが、市場や競合と比較したときに現状の良し悪しを判断するのは難しいため、そういったアクセス解析では出来ない調査にSimilarWeb PROを使っていると言います。

その例として、家電量販店大手のアクセス推移についてSimilarWeb PROを使って各社のデータをもとに成長率の高い企業を比較。

中川氏:
ベンチマーキングで何が分かるかをビックカメラさんとヨドバシカメラさんと上新さんの例を出してみたいと思います。

はじめにそれぞれのポジションは家電量販店の総売上高ランキングでは2位ビックカメラと4位ヨドバシカメラと6位上新電機、EC売上高だと4位ヨドバシカメラ、8位上新電機、13位ビックカメラという位置づけです。

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中川氏:
では、データを見ていきましょう。ビックカメラさんのアクセス数の成長率を数字(モバイル+PC合算)で見てみると、昨対比で115%上昇してます。ひょっとしたら、この数字を見たビックカメラのWebマスターの方からすれば「イケてるよね」って思うかもしれませんね。

それでは、これを市場から見てみましょう。これはヨドバシさんと上新さんの昨対比の数字になります。伸び率を見ると、ヨドバシさんが154%、上新さんは129%。ネット業界でも昨対比で成長率が120~110%だったら良いと言われていますが、ヨドバシさんや上新さんは大きく上回っていますね。

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中川氏:
お分かりになると思いますが、先ほどのビックカメラさんは昨対比で伸びてはいるものの、市場全体から見ると実はポジションを落としていたんです。市場によって違いはあれど、こういう成長率が高い市場の場合、競合の伸び率を見たりしないと判断を誤ってしまう可能性があるということです。

そういった視点でSimilarWebを使ったデータ分析は非常に有用だと考えています。

SimilarWeb 3つのチャレンジ

最後に登壇したのはChief Officer Tal Jacobson氏。同社が2016年に行う3つのチャレンジを明かしました。

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Jacobson氏:
1つは、人々はモバイルにシフトしている。つまり、今までのデスクトップからモバイル対応へのWebサイトが求められるため、そこを強化する。

2つ目、プラットフォームをより正確にソートする。私たちは分析し、より良い意思決定をするためにもっと多くのデータが必要になるからだ。

3つ目は、アプリユーザーをアンインストールされる前に理解することである。アンインストール対策のためになるだけでなく、アンインストールまでのエンゲージを正しく集めるのだ。

モバイルからのトラフィックをより高い精度で分析することに力を入れること、そして2月に正式実装されたアプリ解析機能をはじめ、アプリユーザーのインサイトを分析する予定のようです。次に4つの産業においてモバイルへシフトしている現状をSimilarWebのデータから解説しました。

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Jacobson氏:
デジタル戦略を考える際はデスクトップからの施策だけではなく、マルチな戦略が求められるようになる。データから分かるように、大きなブランドでもモバイルからのシェアが増えてきている。

一体どれくらいの人数がデスクトップからモバイルに動いたか、またどのくらいの時間を滞在するのか、どんな消費をどんなデバイスで行うのか。デスクトップまたはモバイルのWebサイトからきたユーザーがどんなページを好むのか、どんなWebサイトがプラットーフォームにトラフィックを送るのか。

そして、それらを通してモバイルとデスクトップの違いに関して分析しなくてはならない。それによって戦略が決まってくるのである。今は意思決定にデータを用いなければいけない時代なのだ。

また、社内でもさまざまな用途でSimilarWebを用いるだろう。私たちもそのようなカスタム欲求には気づいている。例えば、セールスフォースと繋げたい、といったようなものだ。そのため、私たちはSimilarWebのデータがAPI連携で利用できるよう進めている。

まとめ

本カンファレンスで登壇したSimilarWeb社の全員が日本以外の出身(当日は同時通訳だったことからも恐らく日本語は話せない)でありながら、筆者自身も思い当たるような日本人の行動傾向を解説していたことが印象的でした。

つまり、これは同社がSimilarWebを通じて1年間のデータを分析した結果であり、異国の文化であってもデータから日本人の行動傾向が分かる、ということです。本カンファレンスでも頻繁に飛び交った“データ”という単語が表すように企業のデジタル戦略における意思決定ではデータの裏付けが必要不可欠。また、それらデータは日々変わっており、企業はより迅速なリサーチが求められています。

同社が今回発表した新たなチャレンジからも、それら企業のデジタル戦略をより包括的にサポートしようとしていることが垣間見えました。

写真提供:Gaprise inc.