我々が普段インターネットを通じて情報を得るためには、そのほとんどが人間の五感で言う“視覚のみ”に制限される。中でもインターネットにおいては、テキストから情報を得るケースが多く、利用者にきちんと情報を伝えるためには非常に重要な要素だ。

しかし、そうしたテキストからの情報伝達も利用者や環境によっては、正しく伝わるとは限らない。ましてや性別や年齢、国籍はもちろん、スマートフォンのデバイス違いによっても大きく受け取り方が違ってくる。

そうした情報の誤認識を防ぎ、誰が見ても正しい情報が伝わるように設計されたユニバーサルデザインフォント(UDフォントあるいはUD書体とも言う)をご存知だろうか。

ユニバーサルデザインとは

ユニバーサルデザインフォント(以下、UDフォント)を説明する前に、まずはユニバーサルデザインを理解する必要がある。ユニバーサルデザインとは、性別、年齢、国籍、障害の有無など関係なく誰もが利用できることを前提にした機能や仕組みを指す。

よくユニバーサルデザインはバリアフリーと混同されがちだが、そもそもの思想が大きく違う。バリアフリーは、障害者などを対象にした「特定の人のための限定的な機能」であるのに対し、ユニバーサルデザインはそれらも包括する幅広い対象に向けて「だれにでも、使いやすい機能や仕組み」を指し、身近な例で言えば家電や文具などにも採用されている。

そして、モノに限らず、どんな人にも情報を正しく伝える“情報のユニバーサルデザイン”がインターネットを通じてビジネスを行う事業者にとって重要になりつつある。

ユニバーサルデザインフォントとは

“情報のユニバーサルデザイン”として設計されたのがUDフォントだ。

・文字のかたちがわかりやすいこと
・文章が読みやすいこと
・読みまちがえにくいこと

これら3つのコンセプトから生まれたフォントで、どんな人が見ても正しい情報が伝わる、読み取れることを目的としたものだ。

例えば、少ないスペースに記載するような商品の値札や成分表など、小さな文字にせざるを得ない場合、どうしても可読性が下がってしまう。

さらに、一般的なフォントはデザイン性を目的としているため、小さくしてしまうことで以下のように空間が狭いと潰れたように見えたり、線が細いとかすれたように見えたりしてしまう。
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もし、ゆっくり読み取れない状況(急いでいる)や視力の落ちている人だった場合、読み取れない可能性があり、事業者にとっては大きな機会損失に繋がる。

そうした環境の違いやどんな人が見ても、しっかり読み取れるよう“アクセシビリティ”を考慮して設計されたものがUDフォントなのだ。

以下では、Webフォントサービス『TypeSquare』を通じてUDフォントを提供している株式会社モリサワにお伺いし、UDフォントについて聞いてきた。

UDフォントが重要視される理由とは

株式会社モリサワ
メディア・ユニバーサルデザイン・アドバイザー
澤村 明子
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ferret編集部:
なぜ、UDフォントが重要視されているのでしょうか?

澤村 氏:
まず前提として、一般的な人は情報の8割を視覚から得ていると言われていて、その中で最も情報量の多いものが文字と考えられています。そのため、情報提供するうえでフォント自体の重要性は必然的に高くなりますね。

そして、UDフォントが重要視されている理由のひとつとして、「高齢化社会」が関係しています。なぜなら、今やインターネットの利用は若者だけはなくなっていて、情報提供者側は、より細部にもこだわる必要性があるんです。

特に、老眼などによって視力の悪くなっている人にとっては、細いフォントが逆に認識し辛くなってしまう場合もでてきました。そのため、高齢者が増加傾向であるように今後は益々、アクセシビリティが求められ、UDフォントの重要性も高まっていくと考えています。

ferret編集部:
具体的にどういった文字が読み間違えにくいのでしょうか?

澤村 氏:
3と8、ひらがなの濁点・半濁点がついているプやブなどを間違えるケースが多いですね。そうした読み間違えが起こらないよう、実際に一つのUDフォントが生まれるまでに多くの検証を重ねていて、文字にブラーをかけたり、白内障の状態を再現したりして制作しているんですよ。

一方で、フォントはデザイン性も重要ですので、元になる書体のデザイン性を損なわないよう調整を施しています。弊社のUDフォントは視認しやすいと言われる手書きに近い字形を取り入れているのも特徴ですね。

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UDフォントの選び方と活用例

ferret編集部:
これまでの活用例もふまえて、どんな企業が導入するべきですか?

澤村 氏:
どんなお客様や読者に対して、どういったメッセージを送るかによっても変わってきますね。Webに限らない話ですが、大手家電メーカーなど、幅広い利用者が想定される企業はアクセシビリティの高いUDフォントを取り入れるケースが多いと思います。

あとは、必ず書かなければいけない情報がある、記載スペースが小さいという場合に多く使われています。例えば、商品のパッケージ裏にある成分表などです。特に薬剤関係になると成分はもちろん、服用法などを誤ると大きな事故になりかねませんので、小さな文字でも読みやすいUDフォントを取り入れてる企業様もいらっしゃいますね。

ferret編集部:
Webの場合だと、健康食品を扱っているようなECサイト事業者にとっては重要になりそうですね。

澤村 氏:
そうですね。でも、意外とWeb業界の人はUDフォントを知らない方が多いんです。デザイナーさんに聞いてみても紙の方であれば、大半の方が知っていますが、Webになると私がお会いする中では3~4割ほどでしょうか。

先ほども言ったように人は情報の8割近くを視覚から取得しているので、読み辛さというのは“読みたくない”という気持ちにさせる可能性もあるんです。それが文章コンテンツの場合だと、大きな機会損失になりかねません。

よく「フォントなんてどれも一緒でしょ?」という話しを耳にしますが、みなさんが感じている以上に、文字が与える印象の違いは大きいものです。そのフォントによって文章コンテンツが読まれなかったらもったいないですよね。

ちなみに、文章コンテンツの場合ですと、個人的にはUDフォントの中でも細めのフォントがオススメです。横画の線がはっきりと描かれているので、小さなデバイスでも、クリアに表示されますよ。

ferret編集部:
そうなんですね。具体的に、どのUDフォントが採用されていますか?

澤村 氏:
当社のラインナップだと、「UD新ゴ」と「UD新ゴ NT」をご利用いただくケースが多いですね。というのも、元々、広くご利用いただいている「新ゴ」というフォントをデザインルールとして取り入れている企業様が多いのでUD新ゴに切り替えるていただくことが多いです。

ある水族館ではリニューアルを機にUD新ゴの導入をご検討いただいています。UD新ゴは日本語以外に韓国語、中国語も選べて、複数言語でもデザインが統一されている点が大きな理由でしたね。
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企業によっては、デザインルールなどもあると思いますので、UDフォントを取り入れる際は、デザイナーさんと相談して、大勢の人が目にする部分など、効果が期待できるところから導入されてはいかがでしょうか。

オフィシャルなWebフォントを安価で利用できる『TypeSquare』

今回お話を伺った株式会社モリサワではWebフォントサービス『TypeSquare』を提供している。UDフォントをはじめ、700種以上のWebフォントが無料・有料プラン(2,160円~)で安価に利用でき商用利用も可能。

UDフォントは、以下17種類から利用できる。

• UD黎ミン
• UD新ゴ
• UD新ゴNT
• UD新丸ゴ
• UD新ゴ コンデンス90
• UD新ゴ コンデンス80
• UD新ゴ コンデンス70
• UD新ゴ コンデンス60
• UD新ゴ コンデンス50
• ヒラギノUD明朝
• ヒラギノUD角ゴ
• ヒラギノUD角ゴF
• ヒラギノUD丸ゴ
• TBUDゴシック
• TBUD丸ゴシック
• TBUD明朝
• UDタイポス

Web制作会社はもちろん、大小かかわらず様々な業種の企業が導入している。導入は簡単で、TypeSquareにログインしてマイページから導入プランに提供される専用タグをヘッダ部内に記述し、ドメインを登録するだけ。

また、以下のページからURLを入力するだけで、実際にTypeSquare内のフォントを設定した際のデザインをサンプルで見ることが可能。実際にferretのトップページでも試してみた。

>>>TypeSquareのトライアウト

見出し「Webマーケティングに強くなる」のフォントを「メイリオ」から本記事でも紹介した「UD新ゴ」に変更した結果がこちら。

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メイリオに比べ、UD新ゴのほうが文字一つひとつの空間が広い印象だ。特に漢字の“強”に関しては、違いが分かりやすいのではないだろうか。

まとめ

今回、お話を伺った澤村 氏の話しにもあるように、普段使っているスマートフォンなどのディスプレイが高精細化され、より映像が鮮明になった反面、フォントの使い方を疎かにすると高齢者や特定の人にとっては逆に視認性が低下するケースも少なくない。

ましてや、高齢化社会という背景を踏まえると、インターネットを通じてビジネスを行う事業者にとっては、“情報のユニバーサルデザイン”はより重要になってくる。

特に、昨今のコンテンツマーケティングをはじめとした文章コンテンツが注目視されている中でアクセシビリティを意識したUDフォントは、情報提供者が正確に情報を伝える一つの手段として意識すべきだろう。

なお、紹介したTypeSquareは、無料からでもUDフォントが利用できるので、UDフォントの導入を検討している事業者は試しに取り入れてみてはいかがだろうか。

>>>Webフォントサービス『TypeSquare』