コンテンツを見た人が幸せになるかどうかで判断する

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古田氏:
僕は、*「とりあえず批判しとけ」*みたいなメディアはあまり好きじゃないです。

ヨッピー氏:
それって日刊ゲンダイのこと?

古田氏:
(笑)
批判すると、一定数の読者のパイは絶対とれるんですよ。
どんな事柄に対しても批判したい人は絶対いますから。

意見を先鋭化させたり、ある程度燃やしたりしておけば一定のビューはくるので、小規模メディアなら数字は取れて、食っていけちゃうんですよね。
*でもそれって日本社会にとってプラスになるの?ならないよね?*って思うんですよね。
誰も幸せにならない。

これはWebメディアに限らない話です。
僕は新聞記者を13年ぐらいやってきましたが、新聞コンテンツもどこかに批判を一言入れないと気が済まない、みたいな記事が少なくない。
「そういうのいらなくない?良い話は良い話のままで良いじゃん」って思います。

ヨッピー氏:
メディアの人は、めちゃくちゃ大きい事を言うと「日本の平和」みたいな、普遍的な社会的意義みたいなものを目指してほしいですよね。

自分が仕事することで一人でも幸せになるといいなと思っていて。
その結果としてお金がついてくるのが一番理想ですよね。
その方が最終的には儲かると思います。

古田氏:
僕らも、そういうやり方でメディアを成り立たせたい。
で、僕らがうまくいって、「ああいうやり方が儲かるんだな」って皆が感じてくれたらいいなと思います。

マスメディアとWebメディアの壁

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ヨッピー氏:
新聞からWebメディアに参入してみてどうでした?色々違う部分があるので、何か苦労とか聞けたら。

古田氏:
まずは、取材1つするのにすごく苦労するんですよね。
朝日新聞の場合は、日本人で知らない人はほとんどいないのでどんな場所でも大体入っていけるんですけど、政府や地方自治体、企業でも広報までは通してもらえる。

でも「インターネットメディアのBuzzFeed Japanです」って言うと「はい?」って返されちゃうんですよね。
東京都議会だと「インターネットメディアは報道機関とみなしておりません」て入れてもらえませんでした。
そういうことが日常的にあって。

先日オバマ大統領が来日した時に、僕はホワイトハウスの記者団に入れてもらったんです。
オバマ大統領にはついていけるけど、東京都議会には入れないんですよ(笑)

あとは、日本新聞協会で講師したことが何度かあるんですが、新聞協会で開かれる記者会見には、*「中には入ることができるけれど、会員じゃないから質問はNGです」*って言われちゃうんです。
講師したこともあるのに、質問できないのはどういうことなんだろう。

こういう状況を見ると、Webメディアって日本ではまだ受け入れられてないんだなと感じますよね。

公開前の記事は取材相手に確認してもらうのは常識?NG?

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古田氏:
BuzzFeed Japanの編集部の3分の2はWebメディア出身者なんですが、僕が彼らと一緒に仕事をして一番最初にびっくりしたのが、*「取材相手に公開前の記事を見せてはいけない」と言うと「なんで?」*と言われたことなんですよね。

ヨッピー氏:
それは僕もなんで?って思いましたね。僕も毎回見せるようにしているので。

古田氏:
我々は客観的に記事を書きますよね。時には、相手にとって嫌なことも書くわけです。
それを公開前に見せてしまうと、相手が「ここを変えて」と言ってくる可能性がある。

単なるミスの指摘ならいいんですが、文章表現を直そうとしてくる場合があるんです。
なので、新聞社時代は、公開前に取材相手に記事を見せるのはご法度だったんです。

でも、それを普通にやっているWeb記者が多かった。

うちの編集部のとあるライターは、なぜWebメディアは公開前の確認を入れているのかというと、1回でもミスがあればクライアントが広告を出してくれなくなるからだと言っていました。

Webメディアは体力がないから、1発のミスが命取りになる。だから見せるんだという話になったんですよ。

その時、僕は「じゃあ今までWebメディアで読んできた記事のほとんどはチェックが入っていたのか」と恐ろしくなりましたよね。
これも、最終的に誰も幸せにならないことだと思うんですよ。

もし自分が読んでいる記事が全部チェックされて無害化されているものだったら、嫌じゃないですか?
僕はすごく嫌です。
やっぱり僕はライターの人たちが自由に書いたものを読みたいんです。

公開前のチェックが当たり前になっている中で、僕らは原則的には事前確認は断るというポリシーを貫いている。そこは苦労していますね。

ヨッピー氏:
僕は、インタビューでもなんでも必ず記事をチェックしてもらうようにしていますね。

ただ、原稿を事前に見せても戦う手段はあるんですよね。
例えば、広告依頼された商品のダメなところを書いて、クライアントから「そこは書かないで」と言われた時は喧嘩しますね。これは事実だろうと。

それでも「書かないで」と言われたら、*「じゃあ広告費はいりません。こう書こうと思ったのに書かないでと言われたんで、お金を返して普通に記事を書くことにしましたっていう記事を書きますね」*と返せば、まあ折れてくれますね。
でもそれぐらいやらなきゃダメだと思うんですよ。

そもそも、記事を書くのにあたって、悪い部分を隠したりウソを書いたりすると、テレビや雑誌と違ってWebだと絶対誰かが気付いてツッコんできますからね。

ちゃんと公平に、オープンにした方がむしろ好感度が上がるんですよ。
10全部褒めたら「あ、これは広告なんだ」って取られてとたんにウソ臭くなりますけど、2のネガティブな部分をちゃんと書けば残り8の良い面が引き立つっていうのは絶対あると思います。「ネガティブ絶対NG!」っていうのは古い広告の慣習に捉われすぎです。

古田氏:
僕、人づてでヨッピーさんのそのやり方を聞いて、それはすごいなと思いました。

思うのは、「ここ変えろよ」って言ってくる人は、ライターを見下してると思うんですよね。
だからそれに対しては皆で戦おうよって思いますね。