※この記事は株式会社デジタルシフト様からの寄稿記事となります。

デジタルシフトやDXという言葉を聞かない日はないほどに、凄まじい勢いで訪れたデジタル化の波。企業は、デジタルを前提としたビジネスモデルや組織の変革に迫られています。

もちろんマーケティングもその例外ではなく、データを活用したコミュニケーションを得意とするデジタル上の顧客接点において、いかに顧客体験を向上できるかが、事業を成長させる鍵となります。

そこで、いま注目を集めているのが「会員ID(顧客データ)」の活用です。既存顧客では、必要としている情報やサービス・ブランドへの理解度が異なりますが、ユーザーから許諾を得た会員IDを活用することで、より一人ひとりのユーザーに適したコミュニケーションを実現することが可能になります。

今回は、この会員ID連携施策(以下、ID連携)との親和性が高いプラットフォームであるLINEにおいて、ID連携の導入によるメリットや障壁、実例を解説します。

瞬間的なニーズに配信可能。LINEでID連携を導入するべき理由

LINEはMAU約8,800万人(2021年3月末時点)という月間利用者数と、高いリーチ数が特徴です。日常的に利用するアクティブユーザーが多いことから、ユーザーと深いつながりをつくりやすいプラットフォームです。

ユーザーに情報を届けるという面においてはメルマガも同様に行えますが、LINEは通知できることからユーザーに伝わりやすく、通知がきてから開封されるまでのタイムラグが少ないです。

顧客のLINE ID(UID)と自社で保有している会員IDの連携により、より一層顧客一人ひとりの嗜好性や興味関心に沿った施策を行うことができます。

まず、MA配信(マーケティングオートメーション)を組み合わせることができるようになり、一度カートに入れた商品を一定期間買っていない顧客に対してリマインドをする「カート離脱」や商品を値下げした際に顧客へ通知する「値下げ配信」などを行うことができます。

顧客にとって買い忘れ防止ができたり、欲しかった商品の値下げ情報をもらえたりするのはメリットのため、企業からの一方的なメッセージではなく、ノイズにならず、配信後のブロック率も低い傾向です。

しかし、ID連携を行う上での最大の障壁は「ID連携者数の増加」です。
顧客にとってID連携は手間を感じやすいため、リッチメニュー(トーク画面のキーボードエリアに表示されるタイル状のメニューのこと)にID連携ボタンを常設していてもなかなか増加しないのが現状です。

実際の増加数字を見ると、デイリー平均で150人程度、アカウント全体ではターゲットリーチの5%未満が一般的(※)です。

では、どんな対策を講じる必要があるのでしょうか。

※会員証などの施策を実施していない企業様の平均的な数値。

ID連携ユーザー112%増! 事例から学ぶ、ユーザー起点の工夫とは

今回ご紹介するのは、株式会社ベルーナ様が運営する女性向けファッション通販サイト「Belluna(ベルーナ)」のLINE公式アカウントにおけるID連携ユーザーの増加施策の事例です。ベルーナ様は、売上とROASの向上を目的にLINE公式アカウント運用をされています。

今回はMA配信におけるID連携を強化すべく、ID連携のメリット訴求と導線の強化を行いました。LINE公式アカウントに登録している購入意欲の低いユーザーはID連携を行うメリットを感じにくいことと、リッチメニューではID連携のメリットをユーザーに訴求しきれていないこととが想定されます。

そのため、ID連携に向けた導線を強化するだけではなく、購入見込みの高い顧客に対しID連携のメリットを伝えることで、ID連携者数を増加できるのではないかという仮説を立てました。

ベルーナアカウントでは、ID連携者シナリオと顧客の行動に応じたシナリオ(ユーザーの属性やセグメントごとに分けた情報配信グループ)でMA配信をしています。今回は顧客の行動に応じたシナリオに対し、ID連携のメリットを訴求しました。

image3.jpg

image2.jpg

※二つ目のメッセージに配信することで、MA配信の本来の目的である売上獲得の邪魔をしない様に配信設計。

前述の通り、ID連携者を増加させることは難易度が高いものの、上記の施策を実施後、ベルーナ様ではデイリーの平均ID連携者数が112%になりました。

一つのシナリオで実施しただけで効果を得ることができており、他のシナリオでもID連携のメリットを訴求することで、さらにID連携者の増加を見込めると考えています。

image4.jpg