「箱の外」で考える

「デザイン思考」はよく、「箱の外」で考えるのに似ている、と例えられることがあります。それは一体どういうことなのでしょうか。

「デザイン思考」が「箱の外」で考える方法だと言われるのは、デザイナーが従来の問題解決方法では解決できない問題を新しいイノベーティブな方法で解決しようとすることに由来しています。箱の外で考えるということは、これまで通用していた常識や多数派を占める考え方を、客観的な視点で分析し、「それが実現可能かどうかに関わらず」別のやり方を証明しようとすることです。

「デザイン思考」の代表的な事例として挙げられるのが、AppleのiPodです。開発体制として、社内のデベロッパーと社外のデザイナー、心理学者や人間工学の専門家など、35名が集結し、わずか11ヵ月の短期間で開発が行われました。

いままでの常識では、音楽は小型のCDプレイヤーやウォークマンを持ち運んで楽しむ、というのが常識でした。Appleではまず競合他社の製品分析とユーザーがどのように音楽を聴いているのかを徹底的に観察・分析することから始まりました。

そこから、ユーザーの多くがCDからコンピュータへ音楽を保存し、それをプレイヤーに移すということを手間に感じていることがわかり、「いつでもどこでもその場で選んだ音楽を聴きたい」というユーザーの潜在的なニーズを発見しました。そこから、「すべての音楽をポケットに入れて持ち運ぶ」といったコンセプトが生まれ、回転する円盤で画面操作ができるスクロールホイールやiPodとコンピュータを自動同期させるオートシンクなどの斬新なアイデアも生まれました。

組織的な開発を行う際は、世間の常識や社内や業界にある見えないしがらみから身を外すことが重要です。これまでのように誰かが作るべきものを提示し、それを作る、という時代から、ユーザーの潜在的な問題を発見し、それを試行錯誤しながら解決していく方法に変わりつつあります。

デザイン思考の5段階の相互作用

「デザイン思考」の5段階は、段階的・直線的ではなく、相互に関係するということは、先ほども述べました。これは純粋に、プロダクトデザインは一人ではなくチームで行うということも関係してきます。多くの場合、チームを作り、結果をレビューし、仮説を検証し、さらにまたレビューを行うというサイクルを回します。その結果、チーム内でも、試作品を作ったことで新たなアイデアが生まれたり、検証からまた新たな発想が浮かんできたりします。

デザイン思考はあらゆるビジネスに活かせる考え方

もともと「デザイン思考」は、デザインに関する問題解決方法として捉えられてきました。
しかし、今では様々な職業の人がデザイン思考の可能性を認識し、自らのビジネスや人生をより豊かにしようと、たくさんの人が取り入れています。デザイン思考とは呼ばれていますが、デザイン関係者も、そうでない人にも、可能性を広げてくれる考え方です。

"検証しては作り直す"というプロセスには、ある種の泥臭さも必要です。しかし、ただ作っては壊すだけの方法では限界があります。そんな時に、5つの段階を活用した考え方は非常に参考になります。

ぜひご自身の仕事にも、デザイン思考を取り入れてみてください。