帰納法・演繹法・アブダクションの3つの推論過程の違い|論理的思考(ロジカルシンキング)
プレゼンテーション(以下、プレゼン)にしろ、文書作成にしろ、他者に何かを伝える際には「論理的思考」が重要です。なかなか論理的思考ができないと悩んでいる方は、論理的思考を実践するためのフレームワークを利用することをオススメします。
今回は、論理的思考を深めるために知っておきたい「帰納法」「演繹法」「アブダクション」をご紹介します。
一度理解してしまえば、文章を書く際はもちろん、普段の会話やビジネス上の話の展開方法などにも活用できます。
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論理的思考(ロジカルシンキング)とは
論理的思考とは、筋道を立てた考え方、またはわかりやすい説明を行うことを指します。社内なら対上司・部下、社外なら対クライアントなど、ビジネスシーンにおいて何かを説明する機会は日常茶飯事です。
このことからも、ビジネスマンにとって論理的思考を身に付けることは必要不可欠といえます。
論理的思考(ロジカルシンキング)のメリット・デメリット
1. メリット
人間が考える時、必ず用いるのが文字です。そのため、論理的思考を身に付けると、文字を用いる全ての活動においてメリットが生じます。
1-1. 考える能力の向上
今回解説する「帰納法」「演繹法」「アブダクション」は、考えるための基本的な方法論です。人間であれば日常的に意識せずやっていることではありますが、これらの方法論を意識することで、よりスムーズに考えをまとめたり、展開させたり、多様な切り口を思い付いたりできるようになります。
教師や上司など、目上の立場の人に「それぐらい人に聞かないで、自分の頭で考えろ」と叱られた経験を持つ方もいらっしゃるはずです。「自分の頭で考える」というのは、論理的思考を身に付け、考える能力を鍛えることです。
1-2. 書く能力の向上
論理的思考の有無は、書かれた文章に如実に表れます。論理的思考を感じられる文章には、明確な意見と合理的な根拠が過不足なく盛り込まれており、読み手をスムーズに納得させる力を持っています。
ビジネスマンなら、セールスレターや提案書など、読み手に何かしらの意志決定や行動を促す文章を書く機会も多いです。論理的思考を身に付けることで、書く文章の説得力が格段に高まります。
1-3. 話す能力の向上
論理的思考を意識していないと、話にメリハリがなかったり要点がぼやけていたりと、内容の伝わりにくい会話をしてしまいがちです。事実と意見をわけ、後述するMECEやロジックツリーを意識すると、話す内容がグッと簡潔になります。
論理的思考を身に付ければ、社内であれば「報連相」が上手くなり、評価を高めることにつながるでしょう。社外であれば、商談やプレゼンなどの機会に威力を発揮することでしょう。
2. デメリット
論理的思考にはメリットばかりではなく、デメリットもあります。論理的思考を万能視することで、逆に話の説得力や自分の行動力を失うことにもつながりかねません。
2-1. 相手の感情を考慮する必要がある
人間は論理だけで動く生き物ではありません。名著『影響力の武器』(ロバート・B・チャルディーニ著、社会行動研究会訳)は、人間が説得されるプロセスにおいて、いかに感情の力が影響しているかを描き出しました。
論理的思考は、話の説得力を高めます。しかし、実際に人を行動へ促す際には論理だけではなく「女優の○○も使っている!」「今だけ○○%オフ!」といった感情に訴えかける文言が威力を発揮することがしばしばです。
論理的思考が不要というわけではありませんが、そこに感情というスパイスを加えることを意識するべきです。
2-2. 行動力が失われることがある
論理的思考に囚われすぎると、考え過ぎの状態に陥っていつまでも行動できなくなってしまう可能性があります。後述しますが、論理的思考というのは事実と意見を明確にわけることが原則です。この時、「事実」というのは過去のデータや体験を利用することになります。
人間の行動力を奮い起こすのは、緻密な論理的思考よりも非合理的なほどの情熱であることが多いものです。「とにかくやる」という姿勢が仕事の生産性を高めるというのは、多くの自己啓発書やビジネス本が教えるところでもあります。
参考:
ロジカルシンキングの弱点を考えてみた:ロジックを超えたロジックの話 | メタップス社長 佐藤航陽のブログ
帰納法
帰納法の基本的な論理展開
帰納法とは、複数の事象をもとに1つの結論を導き出す手法です。
イギリスの哲学者であるフランシス=ベーコンが唱えた論理展開法で、経験論的思考から学問や科学を正しく認知する方法として唱えました。
以下の例文を見てください。
例:ソクラテスは死んだ。アリストテレスも死んだ。織田信長も死んだ。だから人間は死ぬ。
この文章を帰納法に沿って分解すると、以下のようになります。
ソクラテスは死んだ→事象1
アリストテレスも死んだ→事象2
織田信長も死んだ→事象3
だから人間は死ぬ→結論
「帰納法」というと難しく考えがちですが、このように様々な事象を先に述べ、最後に結論を述べるのが帰納法です。
ただし帰納法で導かれる結論は、推論の域を超えません。そのため、不確定要素の多いビジネスの現場ではよく使用される論理展開方でもあるのです。
帰納法を使いこなすには
帰納法を使用して論理展開を行う場合は、まず結論に導くための材料、つまり先にご紹介した例でいう「事象」を集める必要があります。この材料は、多ければ多いほど最終的な結論を説得力のあるものにすることができます。説得力のある材料としてまず集めるべきは、メリット・デメリットです。
結論が推論の域を超えない帰納法では、メリットだけを材料として提示すると自分にとって都合の良い話、つまり怪しげに感じる論理展開になりがちです。メリット・デメリットなどの事象を集める際は、思考のフレームワークを使用しましょう。フレームワークについては、ferret内の以下の記事でご紹介していますのでぜひ参考にしてみてください。
演繹法
演繹法の基本的な論理展開
演繹法とは、一般的に正しいとされることとある事象から、妥当と考えられる結論を導き出す手法です。フランスの哲学者であるルネ・デカルトが唱えた論理展開法で、人間の持つ普遍的な理性を原点とし、様々な事象を懐疑的に見ながら論理的に結論を導き出す方法として唱えました。
まずは以下の例文を見てください。
例:人間は皆死ぬ。ソクラテスは人間だ。よってソクラテスは死ぬ。
この文章を演繹法に沿って分解すると、以下のようになります。
人間は皆死ぬ→大前提(普遍的事象)
ソクラテスは人間だ→小前提(理由)
よってソクラテスは死ぬ→結論
先にご紹介した帰納法とは、論理展開の順番が逆になります。普遍的原理に従って論理を展開するため、ある提案に対して反論したい際などにも使用できます。
演繹法を使いこなすには
演繹法を使いこなすには、まずは3つの手順で論理を組み立ててみることから始めましょう。
まず、1つ目の手順では結論を考えます。最終的にどのような結論に持っていきたいのかによって、付随させる理由や普遍的な事象などが変わってくるからです。つまり、結論部分が明確になっていないと推論そのものが成立しないとも言えますので、必ず明確にして次に進んでください。
2つ目では、理由を考えます。なぜその結論を導きたいのか、どこから結論を探し出して来たのか、など結論に至るまでの思考過程や要素を形にしていく作業になります。
ここでは普遍的な事象などを気にすることなく、結論に直結した理由を検討しましょう。特に初めて演繹法で推論を行う方は、真っ白な紙にキーワードを書き連ねて、どの要素を結論に対する最大の理由にしたいのか探す、という方法がオススメです。
3つ目では、普遍的な事象を考えます。一般的に多くの人が当たり前のように知っていることを探す作業です。あまり難しく考え過ぎてしまうと意外に浮かんでこない場合もありますので、少し時間をおいてみたりチームのメンバーなど他者にアドバイスを求めるのもオススメの方法です。
アブダクション
アブダクションの基本的な論理展開
アブダクションとは、仮説形成とも訳されるもので結果から原因を推測し、観測事実に対して説明を見つける手法です。アメリカの哲学者であるチャールズ・パースが、アリストテレスの論理学を基にして提唱した論理展開法で、起きた現象に対して仮説を構築して論理的に説明していく論法として唱えました。
まず以下の例文を見てください。
例:朝起きると庭の芝生が濡れていた。雨が降ると芝生は濡れる。だから昨晩は雨が降ったのだろう。
この文章をアブダクションに沿って分解すると、以下のようになります。
朝起きると庭の芝生が濡れていた→目の前の現象
雨が降ると芝生は濡れる→普遍的事象
だから昨晩は雨が降ったのだろう→仮説
芝生が濡れていた理由は、雨が降ったこと以外にも「朝早くに誰かが水をまいた」「夜露で濡れた」など複数考えられます。そのため「普遍的事象」が正しくても「仮説」に何を当てはめるのかは推論者自身の閃きにかかっていると言えます。
これまでにご紹介した帰納法・演繹法とは異なり想像力が必要となる論法ですが、ある事象をもとに複数のアイデアを出してプレゼンなどの資料にまとめる際には有効な手段です。
アブダクションを使いこなすには
アブダクションを使いこなすためには、何よりも想像力が必要となります。帰納法・演繹法とは異なり非線型の思考法であるため、始めのうちは習得がなかなか難しいこともあります。
しかし、例えばある企画に対して突然思い付いた案を如何に説得力を持たせて説明するか、がベースとなっている推論法です。あまり肩肘を張らずに「そもそもどこからこの案を思い付いたのか」「似た事例はないか」「案を支える普遍的事象がないか」などを探し、先にご紹介した例文のように文章を組み立ててみましょう。
論理的思考を高めるためには
これまで説明してきた帰納法・演繹法・アブダクションは、論理的思考の基礎です。これらの論理展開を1つ論理的思考としてまとめ上げるためには、いくつか意識するべきことや覚えておくべきことがあります。
事実と意見の違いを意識する
論理的思考を身に付けるためには、事実と意見を明確にわけて、意見がどのような事実から支えられているか意識する必要があります。帰納法・演繹法・アブダクションというのは、いずれも事実と意見のつながり方を説明したものです。
単純な例ですが、「○○の開発の進捗率が70%なので、全体の進捗に3日ほど影響が出そうです」といった場合、「全体の進捗に3日ほど影響が出そうです」が意見であり、「○○の開発の進捗率が70%」というのが事実です。
こうして事実と意見を明確にすることで、議論の検証が容易になります。上記の事例ですと、そもそも進捗率70%が正しいのかどうか、あるいは進捗率70%が本当に(1日や2日ではなく)3日の遅れにつながるのか、といったことを検証することで、意見が正しいかどうかを証明することが可能です。もし事実がなければ、まず意見の根拠を掘り起こすことから始めなければならず、議論の生産性が落ちてしまいます。
こうした観点からも、事実と意見の区分が重要と分かります。
参考:
悪文と良文から学ぶロジカル・ライティング - 事実と推測を区別する|ITpro
MECEを意識する
事実や意見を細分化する時は、「MECE(ミーシー)」を意識するべきです。MECEとは、「Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive」の略で、「漏れなくダブりなく」という意味です。事実に重複や抜け漏れが生じないようにすることがMECEの眼目です。
MECEとは論理的思考における基本的な思考ツールであり、抜け漏れや重複を防いで物事の全体像を把握するための概念です。MECEを意識することで、論理的思考能力が格段に向上します。
ロジックツリーを使いこなす
MECEを使って思考を整理するためのツールが「ロジックツリー」です。MECEに基づいて事実や意見を細分化すると、大項目が中項目にわかれ、中項目が小項目にわかれ……といった形で、ツリー上の図を描くことができます。これがロジックツリーです。
ロジックツリーを用いて各項目を細分化することにより、問題の本質や解決策を絞り込みます。また、他人に意見を伝える際にもロジックツリーを意識することで、意見が導き出される過程を明らかにし、結論に明快さと説得力を与えることができます。
フレームワークを活用する
MECEに基づいた問題の切り分け方には、いくつかのパターンがあります。最も一般的なのが「5W1H」と言われるものです。出来事を説明する際に「いつ(When)」「どこで(Where)」「誰が(Who)」「なぜ(Why)」「何を(What)」「どのように(How)」を情報として加えるとわかりやすい、という経験則です。
問題の切り分け方のパターンのいくつかは、方法論として確立されています。これらの方法論を「フレームワーク」と呼びます。以下のページで、ビジネスシーンに役立つ思考のフレームワークをいくつかご紹介しています。
こちらのタイトルにいみじくも表現されているとおり、フレームワークは論理的思考の生産性を上げる手段です。数学の公式のようなものですので、ぜひ覚えておきましょう。
論理的思考力を訓練するおすすめ本
フレームワークという概念が示しているとおり、論理的思考を身に着けるためには既存のパターンを理解しておくことです。そうした意味でも、論理的思考について説明された本を読むことは必要でしょう。
MECEやロジックツリーについても、紹介されている書籍の中でケーススタディとともに詳しく説明されています。もちろん、こうした名著を読んで満足するだけではなく、自分の仕事の中で実践してください。
まとめ
帰納法は様々な視点から行った調査や観察の結果から導き出される納得感を重視する際に適しています。演繹法は、前提となる原則の正確な知識がある場合や戦力的な思考、組織構成の立案時などそれまでの実績をもとに次の戦略を練り利益につなげたい際に利用するといいでしょう。
アブダクションはプレゼンテーションの場などで思い付いた案に説得力を持たせて説明した場合に適しています。目的に応じて帰納法・演繹法・アブダクションの3つの論理展開を使いわけられるようにしましょう。
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ロジックツリーの用語説明
ロジックツリーとは、物事を論理的に細分化し、思考を整理する為の、ツリー状の図のことを言います。
【記入例付き】マーケティングフレームワーク テンプレート集
PEST分析、5フォース分析、3C分析、STP分析、4P分析、4C分析など
- フレームワーク
- フレームワークとは、アプリケーションソフトを開発する際によく必要をされる汎用的な機能をまとめて提供し、アプリケーションの土台として機能するソフトウェアのことです。 元々は枠組み、下部構想、構造、組織という意味の英単語です。アプリケーションのひな形であり、これを開発に利用することで、大幅な効率の向上が見込めます。
- マーケティング
- マーケティングとは、ビジネスの仕組みや手法を駆使し商品展開や販売戦略などを展開することによって、売上が成立する市場を作ることです。駆使する媒体や技術、仕組みや規則性などと組み合わせて「XXマーケティング」などと使います。たとえば、電話を使った「テレマーケティング」やインターネットを使った「ネットマーケティング」などがあります。また、専門的でマニアックな市場でビジネス展開をしていくことを「ニッチマーケティング」と呼びます。
- フレームワーク
- フレームワークとは、アプリケーションソフトを開発する際によく必要をされる汎用的な機能をまとめて提供し、アプリケーションの土台として機能するソフトウェアのことです。 元々は枠組み、下部構想、構造、組織という意味の英単語です。アプリケーションのひな形であり、これを開発に利用することで、大幅な効率の向上が見込めます。
- ロジックツリー
- ロジックツリーとは、物事を論理的に細分化し、思考を整理する為の、ツリー状の図のことを言います。
- フレームワーク
- フレームワークとは、アプリケーションソフトを開発する際によく必要をされる汎用的な機能をまとめて提供し、アプリケーションの土台として機能するソフトウェアのことです。 元々は枠組み、下部構想、構造、組織という意味の英単語です。アプリケーションのひな形であり、これを開発に利用することで、大幅な効率の向上が見込めます。
- ロジックツリー
- ロジックツリーとは、物事を論理的に細分化し、思考を整理する為の、ツリー状の図のことを言います。
- ロジックツリー
- ロジックツリーとは、物事を論理的に細分化し、思考を整理する為の、ツリー状の図のことを言います。
- フレームワーク
- フレームワークとは、アプリケーションソフトを開発する際によく必要をされる汎用的な機能をまとめて提供し、アプリケーションの土台として機能するソフトウェアのことです。 元々は枠組み、下部構想、構造、組織という意味の英単語です。アプリケーションのひな形であり、これを開発に利用することで、大幅な効率の向上が見込めます。
- ページ
- 印刷物のカタログやパンフレットは、通常複数のページから成り立っています。インターネットのホームページもまったく同じで、テーマや内容ごとにそれぞれの画面が作られています。この画面のことを、インターネットでも「ページ」と呼んでいます。ホームページは、多くの場合、複数ページから成り立っています。
- タイトル
- ホームページのソースに設定するタイトル(title)とは、ユーザーと検索エンジンにホームページの内容を伝えるためのものです。これを検索エンジンが認識し検索結果ページで表示されたり、ユーザーがお気に入りに保存したときに名称として使われたりするため、非常に重要なものだと考えられています。「タイトルタグ」ともいわれます。
- フレームワーク
- フレームワークとは、アプリケーションソフトを開発する際によく必要をされる汎用的な機能をまとめて提供し、アプリケーションの土台として機能するソフトウェアのことです。 元々は枠組み、下部構想、構造、組織という意味の英単語です。アプリケーションのひな形であり、これを開発に利用することで、大幅な効率の向上が見込めます。
- フレームワーク
- フレームワークとは、アプリケーションソフトを開発する際によく必要をされる汎用的な機能をまとめて提供し、アプリケーションの土台として機能するソフトウェアのことです。 元々は枠組み、下部構想、構造、組織という意味の英単語です。アプリケーションのひな形であり、これを開発に利用することで、大幅な効率の向上が見込めます。
- ロジックツリー
- ロジックツリーとは、物事を論理的に細分化し、思考を整理する為の、ツリー状の図のことを言います。
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