職場やビジネスニュースで「CEO」や「CIO」と呼ばれる役職を聞いたことはありませんか?似たような名称ということもあり、それぞれがどのような意味を持つのかわからないと感じる方も少なくないのではないでしょうか。

このような役職は「CxO」と呼ばれ、欧米の企業では大きな役割を担っています。また、CxOは現在では外資系の企業だけでなく、国内の企業でも一般的になりつつあります。

今回はCEOをはじめとするCxO職について、その存在意義と代表的な12のCxO職、時代の変化とともに生まれた新しいCxO職を紹介します。

なぜ「最高〇〇責任者」が必要なのか

日本の企業では長く「代表取締役社長」という言葉が使われてきました。
CxOの1つであるCEOと代表取締役社長は混同されがちですが、二者の背負う責任の明確さは異なります。

CEOは最高経営責任者を意味し、企業全体の業務を総合的に俯瞰した経営判断が求められます。つまり「経営」に関する判断を行い、その判断の上での責任を負う立場にあります。
一方、会長や社長のような職位の呼称では、その人がどこまでの範囲で業務を行っているのかは不明確です。

「最高〇〇責任者」を置くことで各分野の専門家が能力を最大限発揮できる環境が整うため、健全な会社運営に近づけます。

日本国内の企業でも広がっている背景には、一企業の取り扱う分野が大きくなる中で分野ごとの責任を明らかにする必要性が高まったことが挙げられるでしょう。

マーケティングや財務分野などの専門性を高めることで競争力を高めていく狙いを持っている企業もあります。

CxOの種類

企業によって、設置しているCxOは異なります。
それぞれxに入る業務についての最高責任者として企業の経営に深く関わる存在として機能しています。
数多く存在するCxOの中でも、今回は比較的使われることの多い職種を紹介していきましょう。

1.CEO(最高経営責任者)

CEOは「Chief Executive Officer」の略で*「最高経営責任者」*を意味します。
株主の委託を受け経営上の判断を行う取締役会によって選任された、経営に関する最高権力者です。
多くの業務を俯瞰しながら、企業全体での経営方針を決定する立場を担います。

2.COO(最高執行責任者)

COOとは「Chief Operating Officer」の略であり、*「最高執行責任者」*を意味します。
企業運営の実務的な業務を担う最高責任者であり、経営判断そのものの責任を負うCEOと共に会社経営の中核を担います。

その中核を支える存在として、より専門的な分野ごとの責任者であるCLOやCMOのような役職者が位置づけられています。

3.CSO(最高経営戦略責任者)

CSOは「Chief Sustainability Officer」の略で、企業の戦略立案の中核を担う*「最高経営戦略責任者」*を意味します。
企業での中長期計画や成長戦略の立案・推進に関わる業務において責任を追います。

企業戦略の決定を行うCEOの右腕的立場として働き、企業の将来に関わる重要な立場と言えるでしょう。

参考:
CSO|ITPro

4.CLO(最高法務責任者)

CLOとは「Chief Legal Officer」の略で*「最高法務責任者」*を意味します。
弁護士資格を有し、法務部門の顧問弁護士を兼務している場合もあります。

参考:
CLO(チーフ・リーガル・オフィサー=最高法務責任者)とは |日本経済新聞

5.CIO(最高情報責任者)

CIOは「Chief Information Officer」の略で*「最高情報責任者」*のことです。
ITシステムや情報自体の管理を行うだけでなく、その情報を生かす戦略の立案や推進も行うこともあります。

6.CTO(最高技術責任者)

CTOとは「Chief Technical Officer」の略で*「最高技術責任者」*を指します。
企業の開発部門の最高責任者であり、特にIT分野の企業においては製品の展開にも大きく関わる存在です。

7.CFO(最高財務責任者)

CFOは「Chief Financial Officer」の略で、財務部門を担う*「最高財務責任者」*を意味します。
社内の会計部門として管理を行うだけでなく、投資に関わる資金調達に関わる戦略立案や交渉役も担います。

東芝やファーストリテイリングのような日本国内の企業においてもCFOの設置が広がっており、一般社団法人日本CFO協会という業界団体も存在します。

参考:
一般社団法人日本CFO協会コミュニケーションサイト

8.CMO(最高マーケティング責任者)

CMOは「Chief Marketing Officer」の略で、マーケティングに関わる最高責任者を意味します。
マーケティングに関わる戦略の立案と推進を行うだけでなく、投資対効果の最適化も大きなミッションとして担っています。

消費者への理解を深め、市場を開拓していくマーケティングのあり方は、消費の落ち込む日本国内の企業において重要な課題となっています。

参考:
CMOとは?~今知っておきたい!要注目のマーケティング・キーワード~|SMMLab

9.CAO(最高分析責任者)

CAOとは「Chief Analytics Officer」の略で*「最高分析責任者」*を指します。
経営目線での、社内外のデータの収集、分析、活用を担います。

近年ではビックデータと呼ばれる膨大な量の情報をいかに生かしていくかか戦略のキーとなる企業も多く、データの分析を行うCAOは重要な存在となっています。

参考:
究極のビッグデータ職か、「最高分析責任者」|日経BP社

10.CPO(最高個人情報責任者)

CPOとは「Chief Privacy Officer」の略で、*「最高個人情報責任者」*を意味します。
プライバシーポリシーの構築や、個人情報管理システムの管理などに関する最高責任を負います。

日本国内の大量の個人情報を取り扱う企業においては、CPOを設置している企業もあります。

参考:
CPO|日本の人事部

11.CRO(最高リスク管理責任者)

CROとは「Chief Risk Officer」の略で、企業が直面するあらゆるリスクに対応する部門の最高責任者を意味します。
大規模災害だけでなく、政情不安による通貨の暴落など、企業活動には様々なリスクが存在します。

部門や事業ごとのリスク管理とは異なり、企業活動全体を経営目線で俯瞰してリスクへの対応を行っていく役目を担っています。

参考:
CRO|日本の人事部

12.CHO(最高人事責任者)

CHOは「Chief Human resource Officer」または「Chief Human capital Officer」「Chief Human Officer」の略で、*「最高人事責任者」*を意味します。

企業の経営資源の1つである、人的資源に対して採用活動や教育といった管理を担う存在です。その役割は管理に止まらず、長期的な視点で企業が成長していくために必要な人事戦略の立案や推進も行います。

参考:
CHO|日本の人事部

近年生まれた新しいCxO

ビジネスの環境変化とともに、様々な新しい業務や必要性の高まってきた業務があります。

ここでは、変化によって生まれた比較的新しいCxO職とその事例について紹介します。

13.CHO(最高従業員幸福責任者)

CHOとは、「Chief Happiness Officer」の略で、企業において、従業員の“幸福”をマネジメントする「最高従業員幸福責任者」を意味します。近年「幸福学」という学問の研究が進み、幸福度の高い人は仕事の生産性が高く、離職率が低い傾向にあるということが解明されてきました。そのため、従業員の状態を把握し、幸福度高く働くための環境を作ることがCHOには求められます。

Google社のチャディー・メン・タン氏は、元々グーグルの検索エンジン担当として活躍してたエンジニアで、企業内でのCHOの重要さを広めた第一人者です。
彼はポジティブ心理学という、ネガティブな考えを避け、自身のありのままの良さを追求する心理学をベースに、「マインドフルネス・トレーニング」を完成させました。今でもそのトレーニングを、多くのグーグル社員が受けています。

参照:
高い社員幸福度で業績アップ-今話題のチーフ・ハピネス・オフィサーとは|btrax

14.CDO(最高デザイン責任者)

CDOとは、「Chief Design Officer」の略で、「最高デザイン責任者」を表します。
特許庁でも、行政サービスの品質向上のために、デザイン責任者(CDO)を設置する動きがあり、注目の集まるポジションです。プロダクトに関わる、あらゆるユーザーの体験を設計(デザイン)し、改善することを担います。必要によっては、採用手法の検討や会議の進め方などの幅広い業務に関わることもあります。

ビズリーチ社の田中祐一氏は、2017年8月に社内で初めてのCDOに就任しました。デザインを経営に戦略的に活かすために、プロダクト、ブランド、コミュニケーションなど幅広いクリエイティブ領域の業務に関する責任を持っています。70名を超えるデザイナーを抱える経営直下の「デザイン本部」を統括をしています。

参照:
経営の中心にデザインを ビズリーチがデザイン最高責任者を設置|事業構想

15.CLO(最高人材・組織開発責任者)

CLOとは、「Chief Learning Officer」の略で、「最高人材・組織開発責任者」を表します。ビジネス環境の変化が激しくなる中で、企業や組織は変化に対応するため学習し続けることが求められています。CLOは、個人が自発的に学び、お互いに良い相互関係を与えていく組織作りに取り組みます。

田口光氏は、某大手技術サービス企業を退職し、スタートアップやベンチャーのコンサルタントとして独立を経験した後、2016年ChatWork社へCLOとして参画しました。組織の学習を創り出すために、社内メンバーの交流機会を生み出すユニークな企業制度の導入に取り組んでいます。

参照:
新たな時代のワーキングスタイルを創るChatWork社が待望した男が語る未来とCLOの意味とは|エグゼクティブキャリア総研

CxO一覧

スクリーンショット_2019-02-19_11.55.50.png

まとめ

欧米では専門性の高い運営を行う企業が多く、業務への執行責任と経営責任を分けることを狙いとしてCxOが設置されてきました。日本の企業にもその流れは広がっています。今後も様々なビジネスの変化に合わせて、新しいCxOが登場していくと思われます。

ビジネスの変化と共に増えるCxOを理解することで、ビジネスのトレンドをしっかり押さえていきましょう。