商品やサービスを考える上で*「競合がいなければいいのに」*と思うことは多いでしょう。
ビジネスを展開している領域によっては数多くの競合他社がひしめき、難しい経営戦略を強いられている企業もいるかもしれません。

このようなニーズが多い分参入企業も多く、飽和状態になっている市場を「レッドオーシャン」と言います。
一方、競合相手がいない新しい市場を「ブルーオーシャン」と言い、レッドオーシャンの対比として用いられることも多いでしょう。

今回は「レッドオーシャン」「ブルーオーシャン」という2つの用語の解説と、レッドオーシャンとなった市場からブルーオーシャンを作り出した事例を紹介します。
マーケティング担当者にとって、価格競争を避けられるブルーオーシャンは魅力的な存在かもしれません。
レッドーオーシャンからブルーオーシャンを作り出した実際の事例を通して、ブルーオーシャン戦略について理解を深めましょう。

レッドオーシャン/ブルーオーシャンとは

「レッドオーシャン」「ブルーオーシャン」は共に、特定の状態にある市場の事を指す用語です。

フランスのビジネススクール、欧州経営大学院(INSEAD)の教授であるW・チャン・キムとレネ・モボルニュの著書『ブルー・オーシャン戦略』にて用いられたことから、定着にいたりました。

レッドオーシャン

「レッドオーシャン(赤い海)」競合がひしめき合い、激しい競争状態にある市場を指します。

このような市場では、既存の市場内でいかにシェアを獲得し、売り上げの増大を狙います。
しかし、市場自体が拡大するわけではないので、差別化を図るための争いが生じるでしょう。
その結果、価格や機能などの競争が起こり、企業は疲弊していきます。

ブルーオーシャン戦略の提唱者の1人であるキム氏は「国内市場が成熟してレッド・オーシャンにいるケースが多い日本企業にこそ、発想の転換が必要だ」と指摘しています。
超高齢社会に突入し、国内需要が減少している日本国内において、学習塾やエステ、美容院、整骨院など多くの市場がレッドオーシャンとなっていると言えるでしょう。

参考 :
任天堂「Wii」を生んだ「ブルー・オーシャン戦略」とは?

ブルーオーシャン

*「ブルーオーシャン(青い海)」*は、他に競合相手のいない未開拓の市場を指します。

顧客からみれば新しいサービスであり、価格や機能において基準となる他社は存在しません。そのためコスト抑え、利益を最大化しながら、顧客にとって高い価値を作り出すことができます。

ブルーオーシャンを作り出すことで、レッドオーシャン化した市場から抜け出す戦略を「ブルーオーシャン戦略」と言います。
このような戦略は、いわば*「同じ土俵に立たない」*ことで競争から逃れる手法とも言えるでしょう。

ブルーオーシャンは参入当初は市場を独占できるため圧倒的な売上をあげられますが、参入障壁が低いほど多くの企業が参入してきて結果としてレッドオーシャン化してしまいます。

例えば、1979年に開業した「カプセル・イン大阪」はカプセルホテルという、従来のホテルとは異なる全く新しい市場を作り出しました。
ですが、その後は多くの企業がカプセルホテルの創業へと乗り出し、全国へと広がっています。

このように新たな市場を作り出しても他社が市場に参入してきて、価格や機能面での競争状態になってしまうかもしれません。
また、全く新しい市場であっても、ニーズ自体が存在しない場合も往々としてあります。ブルーオーシャンが必ずしも、成功に結びつかない可能性があることを考慮しておいた方がいいでしょう。

参考:
大阪万博にルーツ 黒川紀章の発想から生まれた〝未来のホテル〟 元祖「カプセルイン大阪」

レッドオーシャン化した市場からブルーオーシャンが生まれた3つの事例

では、実際にレッドオーシャン化した市場から抜け出し、新しい市場を作り出した事例にはどのようなものがあるのでしょうか。。
代表的なものから3つ見ていきましょう。

1.任天堂Wii

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https://www.nintendo.co.jp/wii/

*「任天堂Wii」*は、リモコンという操作端末を利用して体感的な操作ができるゲーム機です。

Wiiの特徴は、今までゲームを遊ぶことのなかった小さな子供や高齢者も顧客化した点でしょう。

当時のゲーム業界は主な顧客層を10代後半に定め、解像度や画像処理の性能などの機能面での競争が激化していました。
そのような複雑なゲームをあえて簡単で操作を覚えやすいものにすることで、コストは抑えながらも顧客にとって価値のある商品となっています。

しかし、その後、スマートフォンでより手軽に操作できるアプリゲームが登場し、苦戦を強いられることとなっています。
たとえ新たな市場を作り出しても、他のサービスによってその市場が奪われてしまうことがあるというブルーオーシャン戦略の難しさがわかる事例といえるでしょう。

2.シルク・ドゥ・ソレイユ

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http://totem-fukuoka.jp/

*「シルク・ドゥ・ソレイユ」*は、ジャグリングや空中ブランコなど人間による表現に特化したエンターテイメント集団です。

伝統的なサーカスでは花形のパフォーマーに人気が集まり出演料が高騰するだけでなく、維持コストの高い動物を用いることで、コストが増大していました。一方では、子供向けの娯楽は増え、観客数は減少し続けていたのです。

しかし、シルク・ドゥ・ソレイユは人間の持てる能力を駆使したパフォーマンスにより、大人や法人などの新しい顧客を創造することで全く新しい市場を作り出しました。

参考:
シルク・ドゥ・ソレイユとは
3分でわかる『ブルー・オーシャン戦略』「『差別化』と『低コスト』で新しい市場を切り拓く」

3.Swatch®

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https://www.swatch.com/ja_jp/

*「Swatch®」*はファッショナブルなデザインのラインナップが特徴的なスイスの時計メーカーです。

従来スイス製の時計は高い技術によって支えられた機械式ムーブメントを採用していましたが、クオーツムーブメントを備えたアジア製の時計が市場に流入してきたことで大きくシェアを奪われてしまいました。

そのような中、Swatch®はジュエリーのような高価な時計ではなく「第二の時計」というコンセプトで、ラインナップを展開します。
プラスチックや合成繊維などの素材を利用することで求めやすい価格を実現しながら、今まで時計を持っていなかった層も顧客としました。

参考:
[挑戦するリーダーのためのビジネスモデル、9つの要素 (1/3)]
(http://mag.executive.itmedia.co.jp/executive/articles/1104/28/news011.html)
History|Swatch

まとめ

参入時点で市場を独占できるブルーオーシャンはマーケティング担当者にとって魅力的に映るでしょう。しかし、*「そもそもニーズが存在しないかもしれない」*というレッドオーシャンにはないリスクもあります。
また、参入した時点ではブルーオーシャンであっても、次第に参入企業が増えてくることでレッドオーシャン化することもあるでしょう。

マーケティング戦略を練る上では、自社のいる市場はどのような状況にあるかを意識することが大切です。ブルーオーシャン・レッドオーシャンという2つの市場のどちらに属しているのか、あるいはブルーオーシャンからレッドオーシャンへの過渡期にあるのかを考えてみましょう。