近年、マスメディアでも取り上げられることの多い「LGBT」という言葉を知っていますか?

LGBTとは、レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランズジェンダーを総称した言葉です。
しかし、実際のところ「LGBTって何かよくわからない。関連サービスが出てるけど、本当にビジネスの役にたつの?」と感じている人もいるかもしれません。

今回はLGBTの概要と、LGBTを含んだマーケティング事例を紹介します。

2015年には渋谷区で同性同士に対して結婚に相当する関係と認める同性パートナーシップ条例が施行され、地方自治体でも様々な条例の整備が進んでいます。
企業にとっても人材活用の一環として取り上げられたり、新たなマーケットとして取り上げられたりといったニュースと見かけることもあるでしょう。

LGBTは日本国内だけでも5.9兆円もの消費を抱えているとの予測もあり、マーケティングにおいても無視できる存在ではありません。
この機会に、LGBTの基本的な考え方から事例までを学んでいきましょう。

参考:
[渋谷区パートナーシップ証明書の交付を行っています|渋谷区]
(https://www.city.shibuya.tokyo.jp/est/oowada/partnership.html)
電通ダイバーシティ・ラボが「LGBT調査2015」を実施

LGBTとは

LGBTとは、女性を好きになる男性や女性を好きになる男性のような多数派とは異なる「セクシュアルマイノリティ」の総称です。

セクシュアルマイノリティとは、自身の体や心の性のあり方や好きになる性別が多数派とは異なる人を指します。

では、具体的には、どのような人がいるのでしょうか。

代表的なものとしてはLGBTの頭文字になっているレズビアン(lesbian:女性同性愛者)・ゲイ(gay:男性同性愛者)・バイセクシュアル(Bisexual:両性愛者)・トランスジェンダー(Transgender:性別越境者)が挙げられます。

参考:
「LGBT」とは?|TOKYO RAINBOW PRIDE

LGBTだけじゃない、セクシュアルマイノリティとは

ビジネスやニュースで「LGBT」という言葉を聞くと、つい先ほど挙げた4つの属性だけで考えてしまいがちです。ですが、それぞれの人によって好きになる性別や体の性に対する認識は異なり、4つの属性だけでは割り切れません。

Aセクシュアルやパンセクシュアル、クィアなど、自身の性のあり方について表現する言葉は30以上あります。また、どのような言葉にも自身をあてはめない人もいるでしょう。

このような多様性に対して、Facebookではプロフィール欄の性別について「女性」「男性」の他に「カスタム」という自由記入を選択できるようになっています。

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このように、LGBTが必ずしも「レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダー」の4つの属性を指し示すものではないことを認識しておきましょう。

また、セクシュアルマイノリティを指し示す言葉としては下記のような言葉も使われてます。

LGBTs…LGBTにsを加え、LGBTに属しない人も加える意味をもたせている。
LGBTQ…LGBTにクィア(Queer:普通でない性を持つ人)を加えたもの。
SOGI…Sexual Orientation(性的指向)とGender Identity(性自認)の頭文字を取り、多様な性全般を説明したもの。

このように「LGBT」だけでなく、人や団体によって利用する単語が異なるので注意してください。

参考:
NPO法人JASH日本性の健康協会
第11回関西クィア映画祭
牧村朝子著『ゲイカップルに萌えたら迷惑ですか? ──聞きたい!けど聞けない!LGBTsのこと』(2016/イースト・プレス)

LGBTはどれくらいいるの?

「LGBTは身近にはいないから、どのくらいいるのかわからない」という方もいるでしょう。では、実際にどの程度の人がLGBTであると自認しているのでしょうか。

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引用:LGBT に関する意識調査|株式会社LGBT総合研究所

博報堂DYグループの株式会社LGBT総合研究所が2016年5月に行った調査によると、ストレート(異性愛者)以外の属性であると答えた人は、日本国内において8.0%にものぼっています。
単純に考えると
13人いたら1人はセクシュアルマイノリティ
ということになり、決して縁遠い存在ではないでしょう。

一方ではNHKの調査では、LGBT当事者のうち6.2%は「セクシュアルマイノリティであることを周囲に全く話していない」という結果が明らかになっています。
周囲の偏見の目や社会的な不都合などもあり、必ずしもLGBTであることをオープンにしている人だけではないことを認識しておきましょう。

参考:
LGBT当事者アンケート|NHK

LGBTの関わるマーケティング事例

電通総研ではLGBTは消費者の8%にのぼることから、日本国内のLGBTだけでも5.9兆円もの消費を抱えていると予測しています。
このような大きな市場は、マーケティングにおいても無視できる存在ではありません。

【企業のダイバーシティ戦略を支援するもの】
多様な人材を活用するダイバーシティ戦略を支援する、新卒向けの採用活動支援、企業でのLGBT研修など。
【LGBTをメインターゲットとして展開するもの】
 LGBTのみをターゲットとしているコミュニティイベント、バーなど。
【従来あったサービス・商品をLGBT向けに拡充するもの】
同性間のカップルでも利用しやすい保険、ウェディング会場など。

企業でも上記のように、LGBTをマーケティング戦略に組み込んでサービスを展開している事例があります。その中でも代表的なものを3つ紹介しましょう。

1.マイナビウエディング

LGBTウエディングはマイナビウエディングへ相談(同性同士の結婚式など)___マイナビウエディング.png
http://wedding.mynavi.jp/contents/salon/lgbt/

結婚式場の紹介サイトを運営しているマイナビウエディングでは、LGBT向けに同性でも結婚式を挙げられる式場の紹介や挙式までのサポート業務を行っています。

通常行っている無料相談と比べ、プライバシーに配慮した個室での面談やLGBTに関する研修を受けたスタッフが担当するのが特徴です。

2.ライフネット生命

死亡保険金受取人の指定範囲の拡大~「同性のパートナー」も指定可能に~___生命保険・医療保険のライフネット生命.png
https://www.lifenet-seimei.co.jp/rainbow/

生命保険サービスを展開するライフネット生命では、自社の生命保険に関して死亡保険受取人を「同性のパートナー」まで拡充しています。

従来、保険金の受け取り人は「戸籍上の配偶者または2親等内の血族」としており、異性の事実婚のパートナーの場合は、死亡保険金の受取人に指定することで受け取りが可能でした。
しかし、現在では同居期間など一定の条件を満たしていれば同性のパートナーであっても保険金の受け取りが可能となっています。

遺産の取り扱いに関しては戸籍上の関係が優先されるため、同性のパートナーに対して財産を残しづらいという現状を汲み取ったサービスと言えるでしょう。

3.LASiKU

LASiKU(らしく).png
http://lasiku.net/

LASiKUは年齢や性別にかかわらず、利用ができる脱毛サロンです。
従来脱毛サロンは衣服を脱ぐこともあり、女性限定や男性限定など特定の性別に絞る店舗が多くあります。

そのため自分の望まない対応をされるサロンに行かなければいけなかったり、美容に関しての要望を打ち明けられなかったりといったことがありました。
一方、LASiKUではどのような性であっても利用出来る姿勢を示すことで、LGBTだけでなく異性のカップル同士でも通いやすい店舗作りをしています。

LGBTを含むマーケティングのメリットとは

では、紹介してきたようなLGBTを含んだマーケティングにはどういったメリットがあるのでしょうか。これには大きく分けて2つあります。

1.消費者の1人としてLGBTの需要を逃さない

LGBTと言っても消費者の1人であり、普段の生活やライフイベントに合わせた需要があります。そのような中で「パートナーと式を挙げたい」「パートナーと一緒の家に住みたい」といったニーズもあるでしょう。

そのようなニーズに個別に対応することで、自社の商品を手に取る機会を取り逃がさずにすみます。あるいは、個別のニーズに対応することで新しいサービスが生まれることもあるでしょう。

この動きは、個人の嗜好や属性に合わせた商品・サービスの提供を行うパーソナライゼーションにもつながります。
マーケティングにおいては、1人の消費者としてLGBTのニーズを捉えていると言えるでしょう。

2.社会的な貢献度の高い企業として評価される

LGBTに対応することで、人権に配慮する社会的な貢献度の高い企業という評価を得ることもあるでしょう。

日本国内においてもCSRとして社会的貢献が企業に求められているだけでなく、社会的な価値は企業の資金を支える株主にとっても評価の1つとなっています。

国連の「責任投資原則」では、企業や市場の長期的な健全性や安定性に関わる「環境(environmental)」「社会(social)」「ガバナンス(governance)」の3要因(ESG要因)が投資家にとって極めて重要だと認めています。
そのような中で、会社経営にとってもLGBT含め宗教や人種、国籍など属性にかかわらない平等な経営やサービスを行うことが求められているでしょう。

また、電通による「LGBT調査2015」によると、ストレート層(異性愛者)の中でも「セクシュアルマイノリティを支援する企業の商品を積極的に利用したい」と答えた人は53%にものぼり、社会的な価値に対する評価はLGBT当事者に限らないことがわかります。

参考:
CSRに熱心な会社の成長性はなぜ高いのか
[電通ダイバーシティ・ラボが「LGBT調査2015」を実施]
(http://www.dentsu.co.jp/news/release/2015/0423-004032.html)
四元正弘+千羽ひとみ著『ダイバーシティとマーケティング』(2017/宣伝会議)

まとめ

LGBTとは、レズビアン・ゲイなどセクシュアルマイノリティを表現する際に利用されている総称です。
ですが、LGBTに含まれる4つの属性だけを意識するのではなく、属性で割り切れない多様性があることを認識しておきましょう。

企業としては、LGBTをメインターゲットとして捉えるだけでなく、消費者の1人としてニーズに合わせていく手法が取られています。LGBTを含む顧客それぞれのニーズに対して合わせるのは、マーケティングにおいても重要なポイントとなるでしょう。

また、2020年に東京オリンピックを控えていることで、男女平等な施設のあり方など国際的な人権の基準に合わせた社会制度が推進されつつあります。社会的な価値を提供していくことで、LGBT当事者のニーズだけでなく消費者全体の企業イメージの向上も狙えるでしょう。

なにより社会に対して利益をもたらしていくことで収益を得るのはビジネスの基本でもあります。LGBTという言葉だけを見るのだけでなく、消費者のニーズや社会的な価値に向き合ってサービスを考えていきましょう。