カスタマーサポート(以下、CS)は、一般的に離職率が高い仕事(業務)の1つだと言われています。

その離職理由としては主に、「業務量の多さ」「精神的ストレス」などが挙げられます。
どのような会社でも社員の離職は発生するものですが、経験を積んだ優秀な社員を手放したい会社はどこにも存在しません。

テモナ株式会社(以下、テモナ)は会社が大きくなり、2、3年前と比較すると契約数が2倍にまで増えています。その過程で単純にCSメンバーの数を2倍にするのではなく、社員1人ひとりの生産性を向上させることで、よりお客様への対応の質を上げながらも離職率を20%マイナスに成功、直近1年間は0%の状態です。

そこで今回は、テモナの事業推進部エグゼクティブマネージャーの栄(さかえ)がその取り組みの一部をご紹介します。ぜひ一読ください。

参考:
成長企業は知っている!CS(カスタマーサポート)はプロダクトを支える生命線|ferret
  

数年前のCSチームの状況

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テモナ株式会社 事業推進部 エグゼクティブマネージャー 栄晴奈

テモナの採用は理念共感を重視しています。そのため、CSチームの社員は高いモチベーションをもっていましたが、業務に関しては未経験でした。

私たちはBtoBの基幹システムを提供しているため、CSには深い製品知識が求められます。また、お客様との接点を大事にしたいというサポートポリシーから、インハウスで対応すると決めていました。未経験ながらに努力して業務を回していましたが、サービスが急成長していたこともあり、お客様の増加に社員の採用が追い付かなくなっていきました。

業務量が増え続ける状況下で次第に社員が疲労し、雰囲気も暗くなっていき、離職者は年間で最大20%まで増加しました。
  

そこで私たちのチームが取り組んだこと

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現在、テモナでカスタマーサポートの一員として勤務するメンバー

業務過多な状況がしばらく続き、カスタマーサポートメンバーの中にも疲労の色が出始め、それと同時期に増大してしまった離職率……。

そこで下記では、増大してしまった離職率に対し、実際にカスタマーサポートチームのマネジメントをしている私がとった5つの施策をご紹介します。
  

1. 1on1ミーティング

まずは現状の課題を把握するためにCSメンバー8人と1時間ずつミーティングを行いました。以下のようなアジェンダを用意して、徹底的に話し合った結果、「コミュニケーション強化」「教育体制の整備」など大小含めて22個の課題が明らかになりました。

【アジェンダ】
あなたがチームの責任者だった場合を想定して以下の項目について考えてみてください。

・チームの良い点
・チームの課題点
・上記で挙げた課題点はどうやったら改善することができるか

後にこの課題に対して1つひとつスケジュールを引きチーム全体で改善行動を起こしていった結果、1年後の1on1では別の課題はあるものの、「チーム力が高い」「コミュニケーションが活発」と80%の社員が回答するまでに改善しました。
  

2. 朝礼・夕礼は唯一のコミュニケーションタイム

1on1で出てきた"コミュニケーション"の課題に対して、朝礼・夕礼のやり方を一新しました。ここでの改善ポイントは2点。「メンバー主体にすること」「ゆとりのある時間にすること」。今までは朝・夜の10分間でその日の報告・共有のみを行っていましたが、淡々と進んでいく朝礼・夕礼は興味を持ちづらく、いつの間にか上司からの報告・共有時間になっていました。

そこで、時間をそれぞれ30分に伸ばし、報告と共有に10分、残りの20分はチームのコミュニケーションタイムにしました。すると、今まであまり人前で話さなかった社員が話すようになったり、今発生している課題をどうやったら解決できるかを全員で考えたりと、メンバー同士の交流が活発になりました。

交流が増えたことでチームの結束が強くなり、気遣いや助け合いが増え、課題に対して「どうするか」を考えるのが当たり前になるまでに成長しました。
  

3. CSメンバー全員で"ぶっちゃけ合う"

顕在・潜在課題を洗い出す1on1を実施して感じたのは、「比較的入社の浅い社員が上司・先輩に対して指摘できない環境」でした。

私たちの会社(テモナ)には「8つの行動指針」というものがあります。その中にある"率先してぶっちゃけ合う"の指針のもと、チームでの「ぶっちゃけ会」を実施したのです。ぶっちゃけ会は役職や職歴など関係無く自身が感じているチーム・個人の課題に対してどうしたら改善できるかを話し合う場です。議題提出者が納得しない限り次のアジェンダには進みません。

第1回目のチームぶっちゃけ会は本当にカオスでした。泣く人もいれば、顔を真っ赤にして話す人もいるほど、本当に色々な思いが交差していました。全ての議題に対し話し終えた後、そこで皆が共通して思ったのは「そのくらい全員本気なんだ」ということです。私たちはこの「ぶっちゃけ会」を3ヵ月に1度の定例で開催するようにしています。会を重ねるごとにメンバー同士の信頼度・団結力はあがり、最後には必ず「次の3ヵ月はどのように過ごすか」と前向きな話し合いをする姿が見られます。
  

4. ゲーミフィケーションを取り入れて成長過程を楽しむ

1on1やチーム内ぶっちゃけ大会をとおしてメンバーから上がってきた課題の1つとして、「知識を習得するまでの道のりが長い」という課題がありました。そこで私たちは、知識を習得するまでのカリキュラムに関してゲーミフィケーションを導入しました。

私たちが提供しているサービスは通販事業者を対象とした販売管理・CRMシステムであり、必要な機能が多岐に渡って搭載されています。
CSはその全ての知識を習得し、お客様にベストな運用方法をご提案する必要がありますが、その全ての知識を習得するには半年ほどの期間を要します。この半年間の長い道のりが新入社員の最初の壁となっていました。

そこで取り入れたのがランク制度です。メンバーを習熟度に応じてランクわけし、ランクに応じてお客様との接点を増加させていきました。
わかりやすい指標ができたことで成長が実感しやすくなり、意欲的に取り組むようになったことに加え、ゲーム感覚で同期と競うような場面も見るようになりました。
  

5. 適正な配置と気持ちのケア

お客様と真正面から向き合って誠心誠意対応しているCSは離職理由からもわかるように、気持ちを遣って1つ一つの対応にあたっているため、今まで挙げた取り組みと並行してCSメンバーの気持ちのケアは欠かせません。表情、声色、業務品質、1つとっても変化が見られる場合は話を聞いてあげてください。それが成長過程であれば途中で介入せず見守るべきですが、彼女・彼らの「やりがい」に繋がっていない場合は1日でも放置してはなりません。

1人ひとりの強みを理解し、状況に応じて適正な配置の検討や気持ちのケア(傾聴)など柔軟に対応することが必要です。