社会に広がる格差は、Webの世界にも影響を及ぼしています。
例えば首都圏に住む二十代の若者と四国に住む七十代の高齢者では、Webの利用率は異なるでしょう。このような格差は通信設備が確保されていないというインフラ上の問題や世代間によって情報を取得する機会がないことが背景にあります。

今回は、デジタルデバイドの意味を地域間のデジタルデバイドを例に紹介します。
都市部以外の地域でWeb事業を展開している企業にとって、地域間にどういった違いがあるのかを認識しておくことは重要です。
この機会に客観的なデータを知り、自社を取り巻く環境について改めて見直してみましょう。

デジタルデバイドとは

デジタルデバイド(digital divide)とはインターネットやパソコン等の情報通信技術を利用できる者と利用できない者との間に生じる格差」を指す言葉で、「情報格差」とも訳されます。

例えば、若くて健康的な人と、視力も落ちてものが見えづらくなった高齢者では、ホームページ1つとっても見え方が異なります。高齢者の中には文字が小さくて見えづらかったり、ホームページの閲覧に必要な知識を習得していなかったりといった理由で、ホームページを利用できない人もいるでしょう。

こういった社会的・身体的な条件の元で発生するアクセシビリティの差が、デジタルデバイドへとつながっています。

この格差は世代間だけのものではありません。
所得の違いや障がいの有無などでも、情報へのアクセスのしやすさは異なり、格差が生じています。
また、都市部と地方での地域間格差も挙げられるでしょう。

行政では平成19年からネットや携帯電話の利用ができないという地域の問題に対して「デジタル・ディバイド解消戦略会議」を開き、ブロードバンドゼロ地域の解消に取り組んできました。その結果、平成22年度末の時点でネットの利用できない地域はほぼなくなってます。

参考:
[第2部 特集 共生型ネット社会の実現に向けて|平成23年度情報通信白書]
(http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h23/html/nc222100.html)

地域間デジタルデバイドを表すデータ

平成22年度末には、日本国内のほとんどの地域でネットが利用できるようになりました。
では、こういったインフラ面の整備により、地域間のデジタルデバイドは解消されたのでしょうか。

総務省の発表している『平成27年度通信利用動向調査』をもとに見てみましょう。

1.情報通信機器の保有状況|個人

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引用:平成27年世帯編(世帯全体)問1(1) 情報通信機器の保有状況(M)(対象:全世帯)

情報通信機器の保有状況を見ると、携帯電話・スマートフォン・PHSの合計所有率は高いものの、パソコンやスマートフォンなどの一部機器について地域間で差があることがわかります。
特にパソコンの保有率は最も高い東京都の86.4%に対して、最も低い鹿児島県では57.6%と大きな開きがあります。

2.ウィルスや不正アクセス対策|個人

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引用:問4 ウィルスや不正アクセス対策(M)(対象:過去1年間に少なくとも1人はインターネットを利用したことのある世帯)

ウイルス対策やパスワード管理などネットへのセキュリティに関しても、地域によって差が生まれています。

過去1年間でネットを利用したことある人のうちセキュリティ対策を行ったと回答した率は東京都では77.4%のところ、愛媛県では60.4%にとどまりました。
このようにネットを利用している人の中でも、地域によって意識の差が異なります。

参考:
[平成27年通信利用動向調査 世帯全体編 ]
(http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?bid=000001074098&cycode=0)

3.ホームページの開設状況|企業

個人の利用状況だけでなく、企業のWeb活用においても地域間で差が現れています。

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引用:問2(1)ホームページの開設状況(対象:全社)

上記は、ホームページを開設している企業の割合を示したものです。
甲信越や南関東の割合は95%周辺と高い一方、北関東では76.3%にとどまっています。

4.インターネットを利用した調達及び販売の導入状況|企業

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引用:問3(1)インターネットを利用した調達及び販売の導入状況(対象:全社)

開設状況だけでなく、インターネットを商品の購入や販売に結びついているかという回答にも地域ごとで差が現れています。

「企業または一般消費者に販売するチャネルとしてインターネットを利用している」という企業は、南関東の24.8%に対して北陸は11.2%と半分にとどまっています。

この背景には地域ごとの業種の違いや、Web関連企業が首都圏を選択して立地していることもあるでしょう。

5.インターネット広告の実施状況|企業

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引用:問3(2)インターネット広告の実施状況(対象:全社)

インターネットを販売チャネルとして利用しているかどうか」という問いに合わせて「インターネット広告を実施しているか」という項目も見てみましょう。

インターネット広告をもっとも実施しているのは南関東の30%で、もっとも利用率の低い北陸の17.7%とは10%以上の開きがありました。

6.従業員のICT教育のために行っていること|企業

では、将来的な企業のWeb活用に関して、地域間の差は縮まるのでしょうか。
長期的な施策の1つである従業員教育という視点で見てみましょう。

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引用:問7 従業員のICT教育のために行っていること(対象:全社)

情報通信技術に関して、従業員に対して教育を行っていないという企業が南関東がもっとも低く55.9%となり、もっとも高い東海の73.8%とは20%近い開きがありました。

社員の自主的な資格取得への支援についても、金銭的・時間的ともに南関東がもっとも高く、一方で東北や北関東は低い数値にとどまっています。

このようにデジタルデバイドは企業の教育面でも現れています。
従業員がICTの知識を学ばなければ、企業全体でWebの活用スキルを底上げすることは難しいでしょう。企業がWebの活用を推進していかなければ、地域間のデジタルデバイドは広がるばかりかもしれません。

参考:
[平成27年通信利用動向調査 企業編]
(http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?bid=000001074138&cycode=0)

まとめ

デジタルデバイドとは「インターネットやパソコン等の情報通信技術を利用できる者と利用できない者との間に生じる格差」を意味し、年齢や学歴、障がいの有無など身体的・社会的な条件の違いや地域間で発生しています。

こういったデジタルデバイドを解消するために、行政では平成19年から「デジタル・ディバイド解消戦略会議」を開き、平成22年度末にブロードバンド・ゼロ地域をなくしました。

しかし、今回取り上げたように南関東や近畿のような都市部と、北陸や四国などの地方では市民の意識だけでなく企業のWebサービスへの取り組みにおいても差が生じています。
この背景には、インフラ上の問題だけではない、地域住民の年代や学歴など身体的・社会的なデジタルデバイドがあるのかもしれません。
もし、都心部で展開していたWebサービスを地方で展開しようとするなら、こういったデジタルデバイドの問題とも向き合わなくてはいけないでしょう。