わずか半年で新規企画立案数が373%アップ! "チーム会計制度" 導入が社員の意識改革をもたらして生産性向上へとつながった
社員の「生産性」に関して、皆さん、悩んだことはありますか?
おそらくリーダーやマネージャー以上の役職の方、つまりチームを統率する立場にある方であれば、そういった課題に直面したことがきっとあるはずです。
最近のGoogleの研究結果でも明らかになった「社員の生産性」。
社員1人ひとりの生産性を高められないと人数が増える一方で、会社の利益は下降の一途を辿ってしまいます。ただし、無理に働くことを強要しても生産性は絶対に上がりません。むしろ当事者意識を持つことができず、仕事にやりがいを感じることができない組織になってしまいます。
個人がその仕事に対してのやりがいや当事者意識を持つことができないと、個人・チーム・会社それぞれの目標達成には絶対につながりません。
今回は、これまで弊社(テモナ株式会社)が表に出してこなかった実際に着手した施策、"チーム会計制度" 導入についてご紹介していきます。
過去、弊社が特に生産性に悩んだ時期にとった施策と、その中で新たに発生した課題点などを可能な限り赤裸々に寄稿します。ぜひ皆さんの通常業務にお役立てください。
社員個々の生産性を高められない……その時のCSチームは!
カスタマーサポート(以下、CS)チームのミッションは以下3点で、このミッション内容は時間が経過した今も同じです。
つまり、一過性ではなく、長い目で見た場合でも重要極まりない内容だというのがおわかりいただけるはずです。
CSチームのミッション
・システムの使い方に関する質問・相談への対応
・お客様の業務に対して効率化・売上拡大の提案
・お客様のご要望を元にしたプロダクト改良提案
その当時の弊社のCSチームは9名が正社員として在籍し、お客様の対応にあたっていました。1人ひとりがお客様のことを考え、その課題に対していかに解決策を提示できるかを試行錯誤しながらも勤務していました。
お客様に対しての考え方に関しては申し分なく、怠ける人は誰もいません。ただし「生産性」には課題がありました。
CSチームの抱えていた課題
・お客様からの入電に対して個々のパフォーマンスにバラつきがある
・多忙により、お客様から頂いた問い合わせの応対履歴を登録できない
・現状の業務に追われ、新たな施策立案・実行がなされない
そのほかにも課題は山積みでしたが、お客様満足度を左右する付加価値となるこの3点を重視しました。
チーム会計制度の導入
ちょうどその時、社長から全チームに対して「アメーバ経営をやってみようか」という話が持ちあがりました。今でこそ大々的に実施はしていませんが、これが"自分自身の生産性"を常に頭に入れながら業務に向き合うことができるようになった「チーム会計制度」です。
アメーバ経営とは
アメーバ経営は、組織をアメーバと呼ぶ小集団にわけます。各アメーバのリーダーは、それぞれが中心となって自らのアメーバの計画を立て、メンバー全員が知恵を絞り、努力することで、アメーバの目標を達成していきます。そうすることで、現場の社員1人ひとりが主役となり、自主的に経営に参加する「全員参加経営」を実現していきます。
参考:
稲盛和夫 OFFICIAL SITE
このアメーバ経営を導入し、社員の主体性・生産性をあげるべく、少しだけ独自文化を加えて「チーム会計制度」という名称で導入を決定しました。CSチームや開発チーム、総務経理チームは間接的には利益をもたらしますが、直接の売上は生み出しません。そのため、弊社では架空のチーム予算を設け、その予算内でやりくりをすることとなりました。
チーム会計制度の運用方法
私たちがどのようにチーム会計制度を運用していったのかをご紹介します。
1. 単価の決定
まず、1つひとつの業務に単価を決めていきました。電話対応1件あたり500円、メール1件返信あたり480円……など、業務全てに対して販売管理費から割り出した1人あたりの1時間労働単価から業務単価を決めていきました。
2. 見積り・受発注概念の取り入れ
弊社の創業期は、自社ASPサービスの開発と並行して受託開発も行っていました。受託開発では、依頼される企業と必ず見積書・発注書のやりとりを行います。そこでいただく発注金額が会社を支える金額になるため、その金額が本当に妥当な金額なのか1円単位でもシビアに考えます。
この頃の弊社は自社ASPサービスがパッケージ化され、プラン営業を行っていたため見積書・発注書を社員が交わすことはありませんでした。そのため、会社のコスト意識が薄れていたことも事実あります。
そこで全ての業務で決めた単価をもとに毎月の業務を全て見積書に落とし込み、チーム上長に見積書を提出する、チーム上長はその見積書を見て人員と業務量・品質が見合っているかを確認し発注押印をする……というのを実際に紙ベースで行っていました。
3. 月末の請求作業
見積書・発注書の概念が加われば当然「請求」という概念も加わります。
社員個人個人が自らの当月業務内容を洗い出し、発注された成果物と見合っているかを確認しチーム上長に請求書を提出します。チーム上長は改めて当月の業務1つひとつの量・品質を確認し、請求を受領します。
4. チーム会計の進捗報告
それぞれのチームマネージャーが、各チームの会計結果を報告・相談する場もありました。時にはCSチームと開発チームなどのチーム間での見積書・発注書のやりとりもあったため、お互いの見積金額・発注金額が妥当かどうか、発注案件が社員のモチベーション低下につながらないかもこの場で相談し、メンバーと動いていました。
CSチームでは毎月各個人の売上金額を並べてトップ3のみを公表する「売上ランキング」もつけていました。
架空のものではあるものの、この「売上ランキング」で毎月トップになるために月間売上目標を決めてどの業務でどのくらいの売上を立てるか、そのためには1日どのくらいの売上を立てる必要があるのか……等、1人ひとりが日々計画と進捗をすり合わせて動いていました。
チーム会計制度を導入して見えてきたこと
チーム会計制度を導入して大きく以下3点の変化が現れました。
目標連続達成の社員が急増
チーム会計制度を導入してから、「え!もうこんなに売上げてるんですか!?」「その企画一緒にやりたいです!」という風に、社員1人ひとりがお互いに競い合い、高め合いながら日々を過ごしていく姿が目に付くようになりました。その結果、目標単月達成はもちろんのこと目標連続達成や5ヵ月間連続で目標を達成した社員もいました。
毎月の請求業務は大変なものでしたが、全員の生産性が数字として見えるため、今までスポットが当たらなかった社員も売上達成することにより周囲から注目され、モチベーションにつながっていきました。
今まで記入ができなかった応対履歴が100%記載できるようになった
お客様からお問い合わせを頂いた場合に、それが前回別のCS担当とやりとりしていた内容であっても、それを見たら誰でも対応ができるという「応対履歴システム」を用意しています。しかし、途中で採用したシステムでもあったためなかなか浸透せず登録されないことも多々ありました。
そのため、電話1件あたりの単価を決める時に「電話+応対履歴」を1セットとして応対履歴の登録が無かった場合には売上に計上されない……というルールを設けました。これをルールにするからには管理者側のチェックも必須となりますが、その結果応対履歴は100%登録されるようになり、チーム会計制度を取り外した今でも応対履歴の登録は当たり前の業務になっています。
社員からの新規企画立案が373%アップ!
それまで、CS社員1人ひとりが考える"お客様満足度を高めるための新規企画案"は半年間で15件程度でした。それがこのチーム会計制度導入によって驚くべきことに、半年間で56件にまで増える結果となりました。
売上を達成するために……という視点も一部はありましたが、1人が企画を立案しそれを実行している姿を見て「自分もこうゆうことをやってみたい!」と考える社員が増えたこと、+αの業務をするためには現状の業務をさらにスピーディーに対応する必要があるという考え方に社員自身がシフトできたことが大きな要因です。
着手すると様々な課題・問題が発生し頓挫した企画も中にはありますが、その中の8割は完了しお客様にご提供することができました。実際にお客様から良い反応を頂いた企画は今でも定例で実施をしています。
まとめ
チーム会計制度により、生産性=売上金額として同一基準で定量評価することによって社員同士がお互いに競いあい、高め合いながらチャレンジをする組織に変化させることができました。
その中には、ライバル視するあまり、なかなか協力プレーができないメンバーや、数字として日々目に見えてしまうためプレッシャーに感じるメンバーもいました。
しかし、そのような課題を解決しながら、自社に最適な運用方法でこのチーム会計制度を定着させることによって、仕事に対するやりがいや社員のモチベーションにつなげられると実体験をとおして感じました。
生産性向上はいろいろな企業が取り組まれていますので、この事例以外でより成果の出る施策もあると思います。どのような施策でも、新しいものを取り入れようとすると少なからずハレーションが発生し抵抗するメンバーも一定数発生します。
だからこそ全てのやり方を真似るのではなく、自社独自の運用やルールを加えてみてメンバーが楽しめる制度をつくっていくことが重要なのではないでしょうか。
- Googleとは、世界最大の検索エンジンであるGoogleを展開する米国の企業です。1998年に創業され急激に成長しました。その検索エンジンであるGoogleは、現在日本でも展開していて、日本のYahoo!Japanにも検索結果のデータを提供するなど、検索市場において圧倒的な地位を築いています。
- CS
- CSとはCustomer Satisfactionの略称で「顧客満足度」を意味します。顧客との関係維持、サービスの発展に関するマーケティング戦略に関わる用語です。
- CS
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- 単価
- 商品1つ、あるサービス1回あたり、それらの最低単位での商品やサービスの値段のことを単価といいます。「このカフェではコーヒー一杯の単価を350円に設定しています」などと使います。現在、一般的には消費税を含めた税込み単価を表示しているお店も少なくありません。
- ASP
- ASPとは、①Active Server Pages、②Affiliate Service Provider、あるいは③Application Service Providerの略称です。 それぞれ意味は異なりますが、このページでは特に、②Affiliate Service Providerに関する説明をさせていただきます。
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