組織が一枚岩となって目標に向かっていくためには、会社・チーム、ひいては個人の目標がそれぞれつながっており、かつ個人が当事者意識を持って動けることが重要です。会社の目標とチームや個人の目標が別軸であると、その会社の目標はいつまでたっても達成されません。

また、会社の目標から連なるチームや各個人の目標を達成するためには、役割分担と協力が必要不可欠です。役割分担がなされていない、協力しあえていない状態だと人数は揃っているのに結果に乏しい状態が続いてしまいます。

私たちのチームも以前は個々人の能力アップにフォーカスしてしまったがために、チームビルディングおよび適正な役割分担ができていない状態にありました。

そこで今回は、"チームビルディング"と"適正な役割分担"に関して、私たちCS(カスタマーサクセス)チームが取り組んできた施策をお伝えします。

当記事の施策は、CS以外の業務でも十分応用できますので、ぜひ試してみてください。
  

チームビルディング、役割分担が一切できていなかった頃の状況

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今から2年前のことです。当時の弊社CSチームは6~7名という体制で稼動していましたが、ちょうどその頃、会社全体での体制変更もあり、チーム規模が10名まで大きくなりました。

ただ、規模が大きくなったことで従来以上に業務量をこなせるようになった一方、課題もポロポロと出てきました。

チームの人数が少なかった頃は、1人ひとりとのコミュニケーションの量や頻度は非常に高かったのですが、人数が増えるにつれて徐々に低下していき、「あの人の考え方がわからない」「何でそういった行動をするの?」というような疑問を口にするメンバーが増えていきました。

●メンバー増員によって発生した事象

1. お互いがお互いのことを知らない
2. メンバー同士の協力姿勢が生まれない
3. 怠けている人は1人もいないのに、なかなか結果が振るわない

  
特にCSチームは業務が始まるとお客様からのお問い合わせに対応したり、直接打ち合わせに出るなど業務の多くは個人での対応となります。このような性質の業務で個人が自分の目標だけを追っている状態だと、協力・補完しあうチームとは程遠くなってしまいます。

当時の私たちは「チームなのにチームじゃない」という言葉がそのまま当てはまっていました。このままではいけない……と試行錯誤していた時、弊社の経営陣から心理テスト「ストレングス・ファインダーを取り入れてみよう」と各チームのマネージャーに声がかかりました。

ストレングス・ファインダーとは

"人は自分の弱みを克服することよりも自分の強みを知り活かすことで最大の能力を発揮する"という考えに基づき、アメリカのギャラップ社で開発されたツールです。

全177問の問に答えていくことで、その回答の癖から個人の特性を見出し、上位5つの強みを導きます。現れる強みは、個人にとって顕在的な強みでもあれば潜在的にまだ活かしきれていない強みでもあります。

  
参考:
出典元:木村元子コーチ.com「ストレングス・ファインダー」

心理学を取り入れることで人材配置に悩まない!ストレングスファインダーでメンバーの特性を理解しよう|ferret
  

個人の強みトップ5がわかる “ストレングス・ファインダー”

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“ストレングス・ファインダー”の導入

まずは社員全員がストレングス・ファインダーの適正検査を受けました。私自身、分析結果を受けて「やっぱりこれは強みなんだ」と再認識した強みもあれば、「こんな強みも持ってるんだ」とまだ潜在的で活かしきれていない強みにも気付き、より自分の強みを意識するようになりました。

チームメンバーの結果も見てみると、「確かにAさんは、ここに対する意識が強いな」「Bさんにはこの業務を任せるのが適切なのでは?」と気付くことが多くありました。

「チームビルディング」「役割分担」のそれぞれに課題があったCSチームとしては、ここでストレングス・ファインダーを活かさない手は無いと、泊りがけでチーム合宿を実施し、そこで5時間にも及ぶ個人理解のワークを実施しました。
  

5時間にも及ぶ話し合い、その結果見えたもの

ストレングス・ファインダーをテーマに、1人ひとり以下項目にフォーカスして個人の考え方や思いを話し合いました。

●フォーカスした項目

1. 自分の強みストップ5は?
2. 自分がやっていて楽しい/得意だと感じる業務
3. 自分がやっていて不得意だと感じる業務

  
発表してもらったのはこの3項目だけですが、業務の話からゆくゆくはその強みが形成された背景(学生時代や幼少期の話)について語るメンバーもいて、「自分の強み>得意/不得意な業務>なぜそれが得意/不得意なのか>背景や考え方……」というように、1人ひとりに対して全員が深い部分まで理解していくことができました。

気付くと1人あたり30分、計5時間も相互理解に時間を使っていました。個人理解にここまで時間がかかる=如何にお互いのことを理解しないまま業務をしていたか、を改めて認識しました。

ここまで時間をかけて相互理解に努めた結果、いつもなら「何でそんな考え方をするの?」と思うメンバーに対しても「そういう背景があったからAさんはそういった見方ができるんだね」と、その人の個性として受け入れる見方に変わっていきました。合宿が終わった頃には、ストレングス・ファインダーの強みをキーワードにして話すメンバーも増えたため、改めて役割分担の見直しを行いました。
  

メンバーの個性を把握!適正な立場・役割を設定する

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合宿での話し合いを終え、チームには変化が見られました。いざ業務に入ると、各々の強みが見える化したことによって自信が付き、堂々と発言・行動する姿勢も見られるようになりました。

自然と「Bさんより自分の方がその作業得意だから、自分がここまでやるよ」「Cさん、ここ助けてください!」といった協力・補完しあう行動も日常の中で見られるようになってきました。

また、この結果をもとに役割を見直した結果、今までの結果を120%上回るメンバーも出てきたくらい成果の伸長が見られ、次のステップに昇格したメンバーも出てきました。
 
また、社員全員のストレングス・ファインダーの結果を表にして公開したことで、なかなか話す機会が無かった他チームの社員とのコミュニケーションも増加しました。

そして面白いことに、この結果を表にすると各チームごとの傾向が見えてきます。この傾向を見て「今自分たちのチームにはこの強みを持った人が必要だ」とCSの採用基準の中に組み込むことも少なくありません。
  
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各チーム毎のストレングス一覧
  

インタビュー - Interview - 

CSメンバーを直撃!ストレングス・ファインダーをやってみてどうだったのか !?

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● Tさん

今までは、「自分の強みがこれだ!」と意識することをしていなかったので、それに気付いて意識する良い機会になりました。自分の強みが何かわからなかったが、言語化(キーワード化)された5つの強みを認識するだけでも仕事とのリンクがしやすくなったのがとても良かった。メンバーとのコミュニケーションのとり方や仕事の進め方、求める質など人に応じて変えることを学ぶことができた。また、同じような特性の先輩をモデルケースにしやすくなることも、キャリアを考える上で良い点だと思った。

  
● Sさん

自分の得意な点、不得意な点を改めて認識しました。5時間かけた合宿の中でみんなと話し合って気付いたことは、私よりもメンバーの方が私の事を理解してくれていたということでした。「だからSさんって、こうなんですね!」「確かに、ここはSさんあまり上手くないですよね」とメンバーと腹を割って話すことで自分にとっても個人の理解・再認識をする良い機会になりました。自己認識が深くできていない人程良いと思います。

  
● Kさん

なかなか仕事の成果に結び付かなかった自分にとっては「こうやれば上手くいくよ」という教科書になった。また、今までは自分に何の取り柄があるのかわからなかったが、潜在的な能力を認識でき、自信になった。また、チームの仕事において誰がどういう仕事を行うとパフォーマンスが高くなるかを考える時にすごく参考になりました。

  

まとめ

"チームビルディング"に"役割分担"。

これらはそれぞれ別の課題に見えますが、この体験を通じて感じたのは、共通して「個人の相互理解」が必要不可欠であるということでした。まずはマネジメントする側がメンバーの特性を理解し、その上でメンバー同士にも相互理解を促すことが重要となります。そこが一番最初のステップであり、ここを飛ばして"チームビルディング"や"役割分担"を行っても、その影響はスポットでしかなく永続しません。

相互理解を終えた次のステップとして、チームビルディング、役割分担を行うことにより、1人ひとりがチームの目標と自分の役割を結び付けて考えます。そのため、お互いの得意・不得意を補完しながら業務を遂行することができ、全員が一枚岩となった強力なチームを作ることができると、この体験を通じて学ぶことができました。