NFTは2021年ごろから注目され、参入する企業が増えるとともに、NFTを購入したりユーザー同士でNFTを売買したりできる「マーケットプレイス」も急増しています。

この記事では、NFTはどのようなものか、なぜ注目されているのか、具体的な活用事例を交えながら紹介します。
※この記事の情報は2022年9月時点のものです。

目次

  1. NFTとは何か
  2. NFTが活用されている分野
  3. NFTは鑑定書のような役割を果たす
  4. 日本でのNFTの活用事例
  5. 企業のNFT利用目的
  6. NFTのマーケットプレイス
  7. NFTが注目されている背景
  8. NFTの普及への課題

NFTとは何か

NFT(Non-Fungible Token:非代替性トークン)とは、簡単に言うと「持ち主を証明できるようにしたデジタルデータ」です。

これまでは簡単に複製可能だったデジタルコンテンツが、NFTを使うことで「本物かどうか」「誰のものか」を証明できるようになりました。ここで用いられているのが、ブロックチェーンの技術です。

ブロックチェーンの仕組みを利用

ブロックチェーンとは、暗号技術を使って決裁などの取引履歴を1本の鎖のようにつなげて記録する技術です。すべての履歴が残り、誰でもそれをチェックできるため、取引情報を改ざんすることができません。

このブロックチェーン技術の「取引履歴を記録する」仕組みを使って、そのデジタルデータが唯一無二であり、本物であることを証明できるようにしたのがNFTです。

NFTが活用されている分野

NFTが最も盛り上がっているのは、デジタルアートの領域です。NFTが世界的に大きく注目されるようになったのも、アートがきっかけでした。

2021年3月にアメリカのオークションで、デジタルアート作家のBeepla(ビープル)氏のNFTアートが約75億円で落札されたニュースは世界中で話題になり、日本でもNFTに対する関心が一気に高まりました。

日本では、2021年3月にVRアーティスト・せきぐちあいみさんのNFTアート作品が約1,300万円で即日落札されたり、2021年9月に8歳のNFTアーティスト通称「Zombie Zoo Keeper(ゾンビ飼育員)」が夏休みの自由研究で取り組んだNFTアートが約240万円で購入されたりなど、2021年は注目を集めるニュースが続きました。

Zombie Zoo Keeper.jpg

出典:スティーヴ・アオキが240万円で購入! 話題の8歳少年「NFTアート」がすごい

NFTは鑑定書のような役割を果たす

通常のデジタルアートは簡単に複製可能なため、本物を見分ける手段がなく、高い価値をつけることは難しいという背景がありましたが、NFTとアート作品を紐づけることで、誰が作品を描き、誰が過去に所有し、今誰が所有しているかという履歴が追えるようになりました。

作品が本物であるという価値を証明できるようになったため、上記のような高額での取引も生まれるようになったのです。

NFTとして「唯一無二なデータ部分は、NFTが紐づけられた作品の履歴部分であり、いわばアート作品の鑑定書のような役割を果たします。

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出典:NFTと法的課題

日本でのNFTの活用事例

NFTというと「アート」のイメージが先行していますが、最近では新しい分野にも利用が広がっています。

日本での、NFTのビジネスでの活用事例をいくつか紹介します。

ファッションアイテムとNFTを紐づける

ファッションブランド「VARBARIAN(バーバリアン)」は、2021年9月に日本で誕生し、メタバースやNFTに特化したブランドを展開しています。

限定3333枚の「会員パスNFT」を販売しており、会員パスNFTを保有することで、原価で洋服を購入できる、定期的にデジタルファッションアイテム(NFT)が無料で貰える、メタバースのラウンジを使用できる、メタバースでの限定イベントに参加できる、一部運営方針に投票ができる などといった様々な特典が受けられます

また、2022年9月には期間限定でリアル店舗をオープンし、発売される全てのアイテムに「購入証明NFT」と「メタバースで着れるNFT」を付加。アイテム購入者はデジタル(メタバース)とリアルの両方で同じ洋服を楽しむことができるキャンペーンを展開しました。

VARBARIAN.jpg

出典:メタバースとリアルの両方で着れる服「VARBARIAN(バーバリアン)」が渋谷MODIの本館1階にオープン!期間:2022年9月16日(金)~23日(金)

ウイスキー樽の所有権をNFTと紐づける

「UniCask(ユニカスク)」は、蒸留酒の樽をNFT化し、小口からの売買を可能にしたサービスです。

2021年12月に、NFT化したウイスキー樽を販売したところ、約4000万円分のNFTが販売開始後約9分で完売しました。販売されたウイスキー樽は、100口に分割され、100分の1に対応する「Cask NFT」が100個販売されました。Cask NFTの所有者は、将来、瓶詰されたウイスキーとCask NFTを交換することができます。

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出典:UniCask

12月15日発売開始のUniCaskのNFT第一弾、シングルモルトスコッチウイスキー スプリングバンク 1991年(Genesis Cask)のNFT約4,000万円分が一般販売開始から9分で完売!

壁画をNFTアートに

公益財団法人日本財団パラスポーツサポートセンターのスペシャルサポーターを務める、元SMAPの香取慎吾氏は、2019年9月にパラスポーツ支援の全額寄付チャリティ企画を実施し、その結果、集まった約3900万円の寄付金を同財団に贈呈しました。

プロジェクトでは、2015年に描いた壁画をNFT アートとして参加者へと付与。1点3900円の寄付・限定1万点として参加者を募集し、わずか1日で完売しました。

企業のNFT利用目的

メタバース向け展示会イベント「バーチャルマーケット(Vket)」で知られる株式会社HIKKYで、NFTの取り組みについても積極的に発言するアートディレクター・さわえみか氏によると、企業がNFTを利用する際の魅力は「NFTでしかアプローチできない層がいる」ことだと言います。アーリーアダプターと呼ばれる、流行に敏感で、新しい商品やサービスを比較的早い段階で取り入れる層に、「NFT」というキーワードでアプローチできるのです。

ただし、「誰に何を提供するのかの設計によって、NFTの使い方は変わってきます。NFTを転売できるかや、NFTを買ってくれた相手にどういった特典を用意するかは、発行する側がコントロールできます。

資産としてや、投機的目線でNFTアートを販売する使い方もあれば、紹介した事例のように、リアルとデジタルを連動したファンづくりや、NFTを購入した人へのおもてなしといった「コミュニティに寄ったクラウドファンディング」のような使い方もあります。

NFTでしか解決できない何かは確立しておらず、今現時点ではNFTは手段にすぎません。「NFTを使ってどういう層に、どう使ってほしいか」という企業の設計次第で、活用方法の幅は広がっていきます。

NFTのマーケットプレイス

NFTを取引できる「マーケットプレイス」も急増しています。最大級のプラットフォームとして知られているのは、アメリカの「OpenSea(オープンシー)」で、アート、スポーツ、ゲームなど様々なジャンルのNFTを扱っています。

日本企業も、2021年8月にはGMOインターネットグループの「Adam by GMO」、2022年2月には楽天の「Rakuten NFT」、4月にはLINEの「LINE NFT」がスタートし、メルカリが参入を発表するなど、大手企業が次々と参入しています。

NFTが注目されている背景

デジタルビジネスがリアルビジネスに近づく

NFTの登場によって、プラットフォームを越えてデジタルアイテムを持ち運べるようになったことは大きな変化です。これまでは、あるアプリケーション上で購入したデジタルアイテムは、そのアプリケーション上でしか利用できないことが大半でしたが、NFTではアプリを限定せずに、自分が購入したデータを移動できます。リアルの物理アイテムでできていることが、デジタルアイテムでも可能になったのです。

今は、あるメタバースで購入したものはその世界でしか利用できませんが、NFTの登場により、今後は複数のメタバース・サービス間でデジタルアイテムが相互利用できるようになるかもしれません。

クリエイターが適正な評価を受け、収入にできる仕組みが生まれた

クリエイターはNFTアート作品をマーケットプレイスに出品し、買い手がつけば収入が得られます。また、転売されるごとにクリエイター本人にも利益が還元されるように設定することもできます。

NFTによって、クリエイターが適切な評価を受け自分自身で稼げる仕組みが生まれたことも、NFTが注目されるようになった大きな要因のひとつです。

NFTの購入が自己表現につながる

NFTを購入する側は、投機目的の人も多い一方で、純粋にクリエイターを応援する人や、コミュニティへの参加を楽しむ人もいます。

保有している仮想通貨やNFTを管理する「ウォレット」は、NFT作品を管理できる他、アドレスを知っていれば誰でも見ることができます。ウォレットの中身を他人に見せることや、メタバース上でのバーチャルギャラリーで公開することで「自分はどんなNFT作品に価値を感じ、集めているのか。どんなコミュニティに参加しているのか」という自己表現が、NFTを購入することで可能になりました。

NFTの普及への課題

NFTはブロックチェーンの仕組みを使うため、暗号資産で購入しなければならないことが多いです。一般の消費者にとっては、暗号資産を持つことがひとつの壁になるでしょう。ただし、最近では、クレジットカードや銀行振込などにも対応するマーケットプレイスが増えているため、この壁は解消されていく可能性はあります。

NFT自体は誰でも発行できるため、偽物の流通には注意が必要です。2022年2月に、Nike(ナイキ)は無許可でNikeのスニーカーに関するNFTを発行・販売していた小売事業者を商標侵害で提訴しました。

マーケットプレイスでは、発行者の審査や、取引可能なNFTの制限、不正なNFTの監視などに取り組んでいる例もあり、そうしたプラットフォーム側の整備ととともに、消費者としてもNFT利用にあたって注意が必要です。

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