SNSの代名詞ともいえる「シェア」や「リツイート」。タイムラインで見掛けた、ちょっといい話や素敵な写真を、友だちやフォロワーにお裾わけするのは、ネットユーザーにとって日常的なアクションとなりました。お店の開店告知や、ペットの里親募集の投稿に添えられた「拡散希望!」の文字を見ない日は無いのでは?と感じる程です。

ところが注意したいことが1点、それは拡散される情報がポジティブな情報ばかりではないという事実です。危険を知らせてくれている情報、誰かが悪い事をしているというニュース……こうしたネガティブな情報も決して少なくありません。

しかし、これらの情報が、何かの間違いだったらどうでしょう。
もしかすると、誰かが悪意を持って広めようとしているウソかもしれません。

今回は、ネットの「シェア文化」にまつわる問題について考えてみたいと思います。

新たな情報・ニュースを目にした際、実際にそれをシェアする時に、今一度、その真偽について考えてみてはいかがでしょうか。
  

信じがたい投稿 ~シェアで広がる善意の「誤情報」例~

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1. フラッシュの光で水族館のマグロが犠牲に?議論を呼ぶ怪現象

2017年のGW(ゴールデンウィーク)、Twitterに寄せられたある投稿が話題を呼びました。

「美ら海水族館でフラッシュに反応したマグロが水槽に思いっきり衝突してきて死んじゃった。皆フラッシュやめようね」

上記メッセージに「沖縄美ら海水族館」(沖縄県本部町)の大水槽で、水槽を覆うアクリルガラスにマグロが衝突して流血する動画が添えられていたのです。
※当該ツイートは表示できないため、スクリーンショットを掲載します
  
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このツイートが瞬く間に拡散され、累計20,000件以上のリツイートがありました。

確かに、動物園や水族館では、飼育されている生き物たちに刺激を与えないようにフラッシュの使用を禁じている事があります。しかし、これを読んだほかのユーザーから反論が上がりました。

「水槽の中からは、魚たちからは、こちら側は見れない構造になっています。水族館の構造上、問題は無いです」

当該のツイート:
https://twitter.com/AheadOfTheLight/status/858916811621900288?ref_src=twsrc%5Etfw&ref_url=http%3A%2F%2Fsaigaijyouhou.com%2Fblog-entry-16596.html

  
この水槽の構造上、フラッシュの影響でマグロが異常行動を起こしたとは考えられない、という主張です。また、元々この水槽ではフラッシュ撮影が許可されているという指摘もされれました。

この騒動を受け、ネットニュースサイトが現場とされる水族館へ取材を敢行、フラッシュの影響はないとの証言を得ました。

参考:
「フラッシュ撮影のせいでマグロが死んだ」誤情報拡散 美ら海水族館は「フラッシュ影響しない」|ねとらぼ

  
さらに、元記事に添付されていた動画が2013年にYoutubeへ投稿されていた動画の転載だったこともわかり、これ以上の騒ぎには発展しませんでした。

投稿した人は、善意で投稿したのか、それとも別の意図があったのかはわかりませんが、うっかり信じてしまった人たちの心には、何かモヤモヤしたものが残ったのではないでしょうか。
  

2. 熊本地震直後に投稿された「動物園からライオンが放たれた」という誤情報

2016年4月の熊本地震は皆さんの記憶にも新しいはずです。その直後、Twitterにこのような投稿がありました。

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余震も止まない不安の広がる中、この投稿は20,000件を超えるリツイートで拡散されました。しかし、この写真は、地震発生の少し前に、南アフリカ・ヨハネスブルグで行われた映画の撮影風景であることが指摘されます。

その後、この記事を投稿した男性は偽計業務妨害の疑いで逮捕されました。取り調べの結果、反省の意志を示しているとの事で不起訴処分となりましたが、情報が拡散している最中には熊本動物園には100件もの問い合わせ電話があり、地震の対応に追われる園の職員に多大な迷惑をかける事になったといわれています。
  
参考:
Lion seen prowling around the streets of South Africa's biggest city (MailOnline)

[「ライオン脱走」デマ投稿の男、起訴猶予に 熊本|産経新聞(西日本版)]
(※このWebページは2023年7月現在公開されていないためURL削除しました)